2011年11月13日(日)
主張
TPP首相会見
大義のなさ浮き彫りになった
「日本の農業がつぶされる」「国民の安全が守られるのか」―急速に広がる反対を押し切って野田佳彦首相が、環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加に向けて「関係国との協議に入る」と記者会見で発表しました。アメリカのオバマ大統領が出席するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への出発前夜に会見する、アメリカ向けだけが鮮明な発表です。
国会の内にも外にもTPP参加反対の声が満ちあふれています。予定を1日遅らせたうえ、「交渉参加」とも明言できなかった記者会見は、TPP参加の大義のなさを浮き彫りにしています。
圧倒的な国民世論が反対
野田首相が記者会見で「交渉参加」とは口にせず、「交渉参加に向けて関係国との協議に入る」といったのは、交渉に参加できるかどうかはすでに交渉を始めているアメリカなど9カ国の同意がいるというだけのことで、「交渉参加」の実態をなんら変えるものではありません。にもかかわらず野田首相がこうしたごまかしをしなければならなかったのは、与党内を含め、国民の強い反対が無視できなかったことを示すものです。
マスメディアのどの世論調査でも、8割、9割がTPP参加問題で政府の説明不足を批判しています。超党派の国会議員の集会や、農業団体、医療関係者、消費者団体、中小業者などが参加した国民集会が示しているように、TPP参加に反対する国民の声は、文字通り圧倒的な世論です。地方では、全国の約8割の地方議会がTPP参加に反対か、慎重に対処を求める決議を上げています。圧倒的多数の国民の不安や批判に応えず、TPP参加を強行することは絶対に許されません。
TPP交渉参加に向けた「事前協議」では、アメリカ議会の承認が必要になるアメリカとの協議が決定的になります。アメリカ議会では有力議員が、日本が「市場開放」に向けた強い意思を示すか厳格に検証するよう米政府に求めています。「事前協議」が事実上、「参加交渉」や「参加」に行く前からアメリカの要求を丸のみさせられる場になる危険は濃厚です。
野田首相は記者会見で、日本の医療や文化、農業は守り、「安定した社会の再構築を実現する」とか、「アジア太平洋地域の成長力を取り入れていく」などと主張しました。しかし、TPP参加を合理化するこうした議論は、すでに破綻が明瞭です。原則として関税をゼロにし非関税障壁も撤廃するTPPが、日本の農業を成り立たなくし、「混合診療」の全面開放など国民の安全さえ脅かすのは明らかです。アメリカなどからの輸入が増えこそすれ、日本の輸出や雇用が増える保証はありません。TPP参加は文字通り「亡国」の道です。
参加を撤回、断念せよ
野田首相は記者から、「事前協議」のうえTPPが国益に反することが明らかになれば離脱するのかと聞かれてもまともに答えませんでした。「事前協議」との口実で交渉を始めそのまま参加に突き進むなどというのは許されません。
国民のたたかいを強め、交渉参加を撤回、TPP参加を断念させることが重要です。東日本大震災からの復興と東京電力福島第1原発事故の対策に全力をあげなければならないいま、TPP参加をゴリ押しする余地はありません。