2011年11月15日(火)
APEC首脳会議で明らかに
国民の利益に反する要求
米国に実行迫られた野田首相
【ホノルル=山田俊英】国内の広範な反対を押し切って環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加を決めた野田佳彦首相は12、13両日、米国ハワイで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で米国に歓迎されたものの、さっそく国民にとって厳しい要求がつきつけられました。野田首相は「国益を踏まえて交渉する」といいますが、「例外なき関税自由化」をはじめTPP参加問題は、最初から国民の利益に反することが浮き彫りになりました。
除外品目なし
米国をはじめTPP交渉に参加している9カ国はAPECの場で協定の大枠に合意しました。米通商代表部によると、約1万1000品目にのぼる「すべての物品」について関税撤廃のスケジュールを定めます。除外品目についてはいっさい言及がありません。
オバマ米大統領は野田首相との会談で、「TPP交渉に参加する全ての国は協定の高い水準達成に向け準備する必要がある」と例外なき関税撤廃などの実行を野田首相に迫りました。
「好機」と米側
オバマ大統領は、野田首相の表明を受け、カーク通商代表に、日本の加入申請を検討する国内手続きを開始するよう指示するとしました。この手続きは、非関税障壁や農業、サービス、工業製品の分野での具体的な関心についての議会および米国の利害関係者との協議などです。
すでにカーク通商代表は11日の会見で、牛肉輸入制限、自動車市場、郵政改革の三つ懸案について「この機会を利用して協議する」として、日本側に市場開放を迫る姿勢を示しています。
米議会側からも日本市場の開放を求める強い意見が出されています。キャンプ米下院歳入委員長は、「日本の決定は、日米間の貿易の懸案問題を解決するしっかりとした取り組みの表れであることを望む」と声明を発表。牛肉やサクランボなどの農業分野や製造業およびサービス業での貿易障壁を取り除く取り組みを行うことを宣言しています。ブレイディ米下院歳入委員会貿易小委員会委員長も「この表明は、米国からの輸出・投資障壁問題に取り組む好機となる」としています。
野田政権が、国民の幅広い反対を無視して、あくまでTPP交渉に突き進むならば、米国は「例外なき関税撤廃」をはじめとする市場開放をさらに迫ることになります。