2011年11月22日(火)
世界の労組 TPPに懸念
良質な雇用を犠牲にするな
環太平洋連携協定(TPP)の締結・交渉参加国の労働組合は、TPPが雇用と国民生活に重大な影響をあたえるとして、つよい懸念を表明しています。
共同で政府要請
各国の労働組合は昨年来、各国政府に要請書を提出しています。
オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、アメリカのナショナルセンター(労働組合の全国組織)は連名で2010年3月15日、「TPP交渉に関する労働組合宣言」を発表しています。
このなかで「貿易協定により労働者の良質な雇用が犠牲となり、投資家が新たな大きな機会を得るようなことを許すわけにはいかない」と強調し、「TPPは、良質の雇用の創出を促進し、勤労者の権利と利益をまもり、長期にわたり均衡のとれた経済発展をもたらし、健康的な環境をもたらすものでなければ支持できない」と宣言しています。
さらにこの4カ国の労働組合にチリとペルーの労働組合が加わった6カ国のナショナルセンターは同年5月10日、オーストラリア、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、アメリカの各国政府にたいして要請書を提出しています。
要請書は、「労働組合を含めた市民社会が交渉過程に参加できるように定期的な窓口を設定しなければならない」とのべ、情報公開と意見聴取などの措置をつよく要求しています。そして、「最低限、これらの措置を実施しなければ、最終的な協定は市民社会の広範な支持を期待することはできない」と結んでいます。
この6カ国の労働組合は2011年2月4日にも、「投資に関して」と題する要請書を提出しています。
「現在交渉中のTPPの交渉参加国の数百万の労働者を代表する労働組合として、現在おこなわれている貿易交渉について懸念を表明する」として、交渉のなかで提案されている紛争解決手続きで「企業が政府と対等にあつかわれており」「大きな懸念の的」と指摘。「労働法や規則の改善は投資条項による訴訟の原因と認められるべきではないし、紛争の場合には労働条項が優先されるべきである」と主張しています。
国際組織も懸念
TPPに対しては、締約・交渉参加国の労働組合だけではなく、国際産業別労働組合も同様の懸念を表明しています。
国際金属労連(IMF)は、ことし8月30日に「TPP交渉に関する声明」を発表しました。
「貿易は、雇用の増大を支援し社会的保護を向上させることによって、また労働者の基本的権利と環境基準、人権、民主主義を促進することによって生活水準を向上させることを目的として、公平の原則にもとづいておこなわれなければならない」として、「いかなる貿易協定においても、協定に参加するすべての国における持続可能な発展と質の高い雇用の創出を、重要かつ明確な目標とすえるべきである」とのべています。
そのうえで、過去の貿易協定がもたらした影響を総括すること、雇用および雇用条件への影響を綿密におこなうこと、協定案の全文を議会に提出するなどの民主的手続きをとることなどを求めています。とりわけ、労働者の権利については、「TPPの労働に関する章」には、労働者の基本的権利のすべてとILO条約が定める国際基準を明確に盛り込むこと、事実上の強制力をもたせることを求めています。
職場から反対を
世界の労働組合がTPP交渉に重大な懸念を表明しているなか、全労連は、反対の立場で全力をあげています。連合加盟組合のなかでもフード連合は反対、自治労は慎重な対応を求めています。
これに対して連合は、野田首相のTPP交渉参加の協議入り表明を「是としたい」(14日、南雲弘行事務局長談話)と支持し、自動車や電機などの民間大企業の労働組合も「一刻も早く参加表明を行うよう」政府に求めていました。
こうした状況があるだけに、職場からTPP反対の大きな世論をつくることが求められます。
(国民運動委員会 筒井晴彦)