2011年11月28日(月)
主張
TPP交渉参加
ごまかして進めるのは最悪だ
野田佳彦首相がアメリカのオバマ大統領に約束した環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加をめぐって、国会での質疑や民主党の両院議員懇談会での説明などが行われてきましたが、疑問はいっこうに解消しません。野田首相が交渉への「参加」ではなく「交渉参加」にむけて「関係国との協議に入る」とごまかし、アメリカ側が首相は「すべての物品、サービスが交渉対象」と約束したと発表したことに対しても、そうはいっていないと“否定”しているからです。アメリカとの事前協議は年内にも始まります。国民をごまかしてことを進めるのは最悪です。
事前協議自体が危険
野田首相がTPPについて、現在アメリカなど9カ国で行われている「交渉」への参加ではなく、まず「関係国との協議に入る」といっているのは、交渉参加には現在参加している国の承認がいるというだけのことで、交渉参加という実態をなんら変えるものではありません。民主党の両院議員懇談会では「関係国との協議」のあと実際に交渉に参加するには改めて両院議員総会に諮るなどの意見も出たと伝えられますが、いずれにせよ参加が前提です。野田首相自身は「国益を踏まえて」というだけで、交渉参加を前提にしていることを否定しません。
各国との事前協議では、とくに議会の承認が必要なアメリカとの協議が重要です。アメリカはすでに、牛肉の輸入拡大や自動車輸入の規制緩和などの要求を突きつけています。TPP交渉参加にむけてアメリカの同意を取り付けたいという姿勢では、事前協議そのものがアメリカの要求を丸のみさせられる場になります。「交渉参加」ではなく事前の協議だからたいしたことがないようにいうのは、この点でもごまかしです。
TPPは原則としてあらゆる関税をゼロにし、非関税障壁も撤廃するものです。日米首脳会談で首相が「すべての物品、サービス」を交渉対象にすると約束したというアメリカ側の発表を、野田首相は“否定”していますが、TPP参加にむけて交渉する以上、あらゆる物品・サービスが対象になるのは免れません。首相は首脳会談では昨年11月閣議決定した包括的経済連携の基本方針を説明しただけだといいますが、その基本方針自体、一部の「センシティブ(重要)品目」に「配慮」するだけで、「すべての品目を自由化交渉対象」にすると明記しています。首相の“否定”は成り立ちません。
実際、首相はアメリカの発表は間違っているといいながら、いまだに訂正も求めていません。相手側のアメリカは訂正を拒否しています。農家が輸入自由化に猛反対している米やサトウキビなどがTPP交渉の対象にならないという保証はまったくありません。
交渉参加方針の撤回を
野田首相がアメリカのオバマ大統領との会談でTPP交渉参加を表明したこと自体、国民の批判や不安に向き合わず、国会での説明も行わないで強行した暴走です。このうえさらに国民をごまかしてことを進めようというのは、民主主義のうえでも重大です。
首相が交渉参加を表明して以降の世論調査でも8割、9割が説明を「不十分だ」と答えています。国民をごまかすのではなく、参加方針そのものを撤回すべきです。