2011年12月5日(月)
第4回中央委員会総会
志位委員長の幹部会報告
志位和夫委員長が3日、第4回中央委員会総会でおこなった幹部会報告は次の通りです。
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中央役員のみなさん、インターネット中継をご覧の全国のみなさん、おはようございます。私は、幹部会を代表して、第4回中央委員会総会への報告をおこないます。
この4中総の任務は、「政権交代」から2年余、東日本大震災と原発事故から9カ月を経た日本の政治の現状と、たたかいの課題を明らかにするとともに、来るべき総選挙でわが党が本格的な反転攻勢に転じるための方針を提起し、総選挙勝利を正面にすえて「党勢拡大大運動」の飛躍をかちとる全党の意思統一をはかることにあります。
1、「政権交代」から2年余、日本の政治はどこまできたか
報告の第一の主題として、いまの政治情勢と日本共産党の役割を全体としてどうとらえるかについて述べます。
鳩山・菅政権から野田政権へ――「二大政党づくり」が破たんに直面している
2009年夏の総選挙での「政権交代」から2年余がたちました。この2年余で日本の政治はどこまできたか。これを「二大政党づくり」の動きとのたたかいの流れのなかで、大きくとらえてみたいと思います。
鳩山・菅政権の失敗は何を示したか
財界が主導して2003年の総選挙から本格的に開始された「二大政党づくり」の動きは、「自民か、民主か」の枠組みに国民を無理やり押し込めて日本共産党を排除する“最強の反共作戦”としてすすめられてきました。この動きは、わが党にとって大きな逆風となりました。その風圧はそれ以前のどの時期の逆風をも上回るものとなり、一連の国政選挙で後退・停滞を余儀なくされるなど、試練と苦労が続きました。
この動きの最大のピークは、「政権交代」が実現した瞬間でした。この瞬間を大きな転機として、それはたちまち深刻な行き詰まりへと落ち込んでいきます。
国民が政権交代に託したものは何だったか。「政治を変えてほしい」という願いであります。その結果、発足当初の民主党政権の個々の政策には、国民の願いを反映した前向きの要素も混在していました。
ところが、裏切りと転落が始まります。最初の裏切りは、沖縄・普天間基地問題でした。この問題で、迷走の果てに「県外、国外移設」という公約を裏切った鳩山政権は退陣に追い込まれました。代わって登場した菅政権も、公約を裏切って消費税10%への増税を持ち出し、さらに突然、TPP(環太平洋連携協定)交渉参加検討を打ち出し、国民的怒りにつつまれました。
3月11日に発生した大震災と原発事故は、それまでの日本の政治のあり方の根本を問うものとなりました。しかし、菅政権は、震災対応でも、原発対応でも、どんな政権であっても、被災者の苦しみにこたえて当然やるべきことをおろそかにしただけでなく、住民合意を無視した上からの財界本位の計画の押し付けなど、復興に逆行する数々の問題点が噴き出し、退陣に追い込まれました。
鳩山・菅政権の失敗は何を示したか。それは、私たちが「二つの異常」と呼んでいる「異常な対米従属」「大企業・財界の横暴な支配」という古い政治の枠組みに縛られているかぎり、「政治を変えたい」という国民の願いに決してこたえられないということであります。同時に、鳩山政権は、普天間問題で一時であれ「県外、国外移設」といい、菅政権も、原発問題で一時的に「個人の見解」といいながら「原発のない社会」をめざすと発言するなど、「二つの異常」を特徴とする古い政治の根幹に触れる問題で、支配勢力から見ると動揺と迷走ともいうべき対応をおこないました。その結果、二つの政権は、国民からだけでなく、支配勢力からも見放されて、失脚に追い込まれたのであります。
野田政権――アメリカ・財界の「使い走り」、「民自公」の3党体制
この二つの政権の失敗を受けて発足した「3代目」の野田政権が選んだ道はどういうものか。それは、支配勢力の忠実な僕(しもべ)に徹することで、国民から見放された民主党政権の延命をはかるという道であります。この政権の特徴は、つぎの点にあります。
第一は、アメリカ・財界の顔色をうかがい、その一言一句を忠実に実行する、アメリカ・財界「使い走り」政権ともいうべき、異常な政治的卑屈さであります。
野田首相は、9月の日米首脳会談で、オバマ米大統領に「結果を出せ」と言われると、国民の批判に耳をかさず、まともな説明も一切ぬきに、沖縄県民の頭越しに「辺野古移設」への手続きを開始し、APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議でTPP交渉への参加方針を表明するなど、やみくもな暴走を開始しました。
財界との関係でも、野田首相は、組閣前に、日本経団連会長にあいさつに出向くという歴代自民党首相でもとったことのない異例の行動をとり、米倉経団連会長は「(菅前首相とは)首から上の質が違う」と大歓迎しました。野田内閣が発足させた「国家戦略会議」は、かつて小泉内閣が「構造改革」路線の「総司令部」とした「経済財政諮問会議」の引き写しであり、「財界直結政治」の体制がつくられました。こうしたもとで、野田内閣が、2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げる大増税法案を、来年の通常国会に提出・成立させるとしていることは、きわめて重大であります。
沖縄の新基地建設も、消費税の大増税も、この動きを始めたのは自公政権であります。野田政権は、看板は民主党であっても、政治の中身は、自公政権とまったく変わらない、悪政の文字通りの継承者となったのであります。
しかし、自公政権がすすめた極端な対米従属、「構造改革」の名による国民犠牲の政治こそ、2009年の総選挙で国民が「ノー」の審判を下した路線ではありませんか。その路線の忠実な継承者となるところまで民主党の政治的堕落は行き着いた。この道に未来がないことは明瞭であります。
第二は、野田政権が、この危険な暴走を、自民・公明両党の協力のもとにすすめることを基本方針としていることであります。そのもとで、民主・自民・公明の3党体制――事実上の「オール与党」体制がつくられつつあります。それは太平洋戦争直前に、日本共産党以外のすべての政党が解散して、戦争推進の大政翼賛会に合流していった歴史を想起させるものです。
この動きがはっきりした形になってあらわれたのは、菅政権末期に民自公がかわした「3党合意」――子ども手当廃止、高校授業料無償化見直しなど、民主党が総選挙の「看板政策」とした前向きの政策をすべて放棄する合意でした。野田代表が、新代表に就任後、真っ先におこなったことは、自民・公明両党首と会談して、この「3党合意」への忠誠を誓うことでした。
つづいて、「民自公」の3党体制によって強行されたのが、復興に名をかりた庶民増税でした。それは、庶民には、所得税・住民税増税などによって25年間で8兆円を超える増税を求めながら、同時に実施する法人税減税による税収減がそれを大きく上回ることから、復興のための財源は1円も出てこないというものです。庶民増税は復興のためでなく、大企業減税の財源づくりを目的にするものにほかなりません。
さらに、「民自公」3党は、政府が提出していた労働者派遣法改定案を、大改悪し、完全に骨抜きにすることでも合意しました。
そして、「民自公」の3党体制が共通の大目標としているのは、「消費税増税と社会保障制度の一体改悪」にほかなりません。野田政権は、自公政権時代につくられた税制改定法の「付則」を「根拠」に、次期通常国会での消費税増税法案の提出・成立にひた走っています。民主党と、自民・公明両党は、解散・総選挙と増税法案の扱いの関係で、党略的思惑からの矛盾も抱えていますが、消費税大増税という大目標ではまったく一致しています。
日本の政治の真の「対決軸」が見えやすくなる新しい情勢が進展している
野田政権とそのもとでの「民自公」の3党体制――事実上の「オール与党」体制への動きは、国民の暮らし、平和、民主主義にとって、きわめて有害で危険な道であります。自民党政権時代にやりたくてもやれなかった悪政が、「数の力」で強行される危険性への強い警戒が必要です。
日本共産党は、野田政権と、「民自公」3党体制に正面から対決し、日本の政治の閉塞(へいそく)状況を打ち破る展望をあらゆる分野で堂々とさし示してたたかいぬく決意を表明するものです。
同時に、この動きのもう一つの側面として強調しておきたいことがあります。それは「民自公」の3党体制への動きは、「二大政党づくり」という反動的戦略の破たんを意味するということであります。
これまで、「自民か、民主か」という「二大政党づくり」の動きは、同じ古い政治の土俵の上であっても、両党が「違い」を競い合い、「対立」を演じあうことで、すすめられてきました。ところが両者が、「民自公」の3党体制――事実上の「オール与党」体制という形で、政治的に同一化してしまったらどうなるでしょう。それは、「二大政党による政権選択」という仕組みそのものの自己否定になるではありませんか。
「二大政党づくり」の道具立ての一つだった「マニフェスト」も、今やぼろぼろであります。「マニフェスト」は、政権を争う「二大政党」がそれぞれ、政権を獲得した時に実行する政策を選挙前に国民に約束する「政権公約」とされ、すぐに政権につく条件のない政党の選挙公約を無意味なものであるかのように扱う策略として用いられてきました。一時は、ずいぶんはやしたてられたものですが、いまや「マニフェスト」は、「公約違反」の代名詞になっているではありませんか。
「二大政党づくり」が破たんに直面するもとで、これまでこの仕掛けによって覆い隠されてきた日本の政治の真の「対決軸」が見えやすくなる新しい情勢が進展しています。わが党の奮闘いかんでは、「『民自公』対日本共産党」こそが、日本の政治の真の「対決軸」だという国民的認識が大きく広がりうる、新しい情勢が生まれています。この変化をしっかり見る必要があります。
新しい政治への国民の探求、日本共産党との新たな共同の広がり
ここで強調したいのは、民主党政権が、国民への公約、期待を裏切ったからといって、自民党政治に代わる新しい政治への国民の探求がとまったわけでは決してないということです。反対に、国民への裏切りがおこなわれるたびに、国民の探求は前進し、日本共産党との新たな共同が広がるという変化が起こっています。
これまで保守の基盤とされてきた団体・個人との共同が劇的に発展しつつある
農協、漁協、森林組合、医師会、商工会など、従来、保守の基盤とされてきた団体、個人との交流と共同が劇的に広がりつつあります。
「政権交代」を契機に、かつては自民党支持に縛られていた諸団体が、その枠組みから解放され、「全方位」で日本共産党も含む諸政党との交流を開始するという新しい状況がつくられました。この動きは、2010年秋以降のTPP参加反対のたたかいをつうじて、対話・交流から共同闘争へと大きく前進しています。
大震災・原発事故という未曽有の体験を契機とした新たな共同の広がり
さらに、3月11日の大震災・原発事故という未曽有の体験は、国民の政治と社会への見方、生き方の変化をもたらし、新しい政治への探求を前進させる大きな契機となりました。このなかで、日本共産党との新たな共同が大きく広がっています。
大震災を経験して、国民のなかに社会的連帯の大切さへの意識と自覚が強まっています。そのもとで、一人ひとりの被災者の苦しみに心を寄せ、震災募金やボランティア活動など、「国民の苦難の軽減」という立党の精神にたって奮闘する日本共産党への信頼と共感が広がっています。「二重ローン」の解消、医療機関の再建、「水産特区」問題などで、保守の人々を含む広範な人々との共同のたたかいが発展しています。
原発事故は、国民をだまし続けてきた「政治のウソ」、その仕掛けを明るみに出しました。政治の真実は何か、その担い手は誰かを、多くの人々が見抜きはじめています。「徹底した除染」「全面賠償」「再稼働反対」などの緊急要求実現と一体に、「原発ゼロの日本」をめざすたたかいが、全国各地で大きくわき起こりつつあります。このなかで、一貫して原発の危険に警鐘を鳴らし、反対を貫いてきた日本共産党への共感と信頼が広がっています。
この間おこなわれた被災3県での県議会議員選挙で、わが党は、岩手県議選で1議席から2議席、宮城県議選で2議席から4議席、福島県議選で3議席から5議席、3県合計で6議席から11議席への躍進を果たしました。これは、選挙という有権者の審判によって、大震災と原発事故にたいするわが党の基本姿勢が、国民の利益にかなうものだという社会的評価をされたものにほかなりません。それはまた被災地での日本共産党と広範な人々との共同の広がりを示すものであります。私は、ご支持いただいたみなさん、被災地で大奮闘されたみなさん、全国からの支援に心からの感謝を申し上げるものです。
「県内移設反対」が揺るぎない県民の総意となった沖縄の歴史的変化
沖縄の情勢の変化も文字通り歴史的です。この2年余のたたかいをつうじて、沖縄では、「県内移設反対」「普天間基地閉鎖・撤去」は、党派の垣根をこえた、揺るぎない県民の総意になりました。
11月14日、沖縄県議会は、全会一致で新基地建設のための環境アセス評価書の提出に反対する意見書を採択しましたが、この意見書をもって国会に、わが党に要請にみえた県議会超党派の要請団の方々が、口々に「2年前とは沖縄はまったく変わりました。政府はそれを理解すべきです」、こう語っていたことは、たいへん印象的でありました。
沖縄では、1996年の「SACO合意」=米軍基地の「県内たらい回し」の日米合意によって、一時期には県民のなかに深刻な分断が持ち込まれていました。その分断を乗り越え、「県内移設反対」が「オール沖縄」の声となったことの歴史的意義はきわめて大きいということを、このたたかいを現地で不屈にささえてきた方々への敬意を込めて強調したいと思います。
歴史的岐路にたつ日本の政治――変革者の党の真価が問われる
新しい政治への「歴史的前夜」――国民が真実を見きわめる条件が急速に広がる
「二大政党づくり」の動きの破たんという事態の根底に何があるでしょうか。そこには、「二つの異常」を特徴とする古い政治の枠組みと国民との矛盾が限界点をこえ、この体制の耐用年数がつきているという大問題が横たわっています。「二つの異常」というきわめて狭い枠組みに縛られているかぎり、いまの政治の深刻な閉塞状況を打開する方途はなく、どんな問題でも、とりうる政治的選択肢は、自民党政権であれ、民主党政権であれ、同一のものとならざるをえないのであります。
日本が選択を迫られている問題と、「二つの異常」との関係が、いよいよ見えやすくなる情勢が進展しています。普天間問題、TPP問題は、異常な対米従属の政治に文字通り直結しています。農協のみなさんの集会などで、私たちが、「TPP参加で、アメリカに国を売り渡していいのか」と訴えても、何の違和感もなく共感がえられます。また、大震災、原発事故、復興財源、消費税、社会保障などの問題を、国民の利益にそって打開しようとすれば、大企業・財界の横暴な支配に直接突き当たってきます。党綱領の示す日本改革の方針こそが唯一の閉塞状況打開の道であることが、広い国民の認識になりうる情勢が広がっているのであります。
3中総報告では、「そのことを国民が見きわめ、この日本の政治の閉塞を打開する展望をつかむならば、日本の政治は大きく変わります。客観的には変わる歴史的前夜にあります」と述べましたが、国民が政治の真実を見きわめる条件は、この5カ月間でも急速に進展しています。同志のみなさん。ここに深い確信をもって、元気いっぱい奮闘しようではありませんか。
閉塞状況の反動的・ファッショ的打開の危険を直視し、正面からたたかう
同時に、強い警戒が必要な問題もあります。「二大政党」と「政権交代」への大きな失望から、政治的閉塞感や政治不信が広がり、そこにつけこんだ情勢の反動的打開、ファッショ的打開の危険性が存在することを直視し、正面からたたかうことが必要であります。
破たんに直面した「二大政党づくり」の企てを立て直そうとする動きを、決して軽視することはできません。とりわけ、衆議院の比例定数削減の動きは、選挙制度のいっそうの改悪によって、日本の政党を無理やり「二大政党」の枠内に閉じ込め、日本共産党を封殺しようという動きであり、これを絶対に許さないたたかいが重要です。憲法審査会の始動と明文改憲への動きに反対し、憲法擁護の国民的運動をさらに発展させるために力をつくします。
橋下・「大阪維新の会」の策動は、地方からファッショ的な独裁政治の拠点をつくり、国政に広げようというきわめて危険な動きです。さきにおこなわれた大阪市長選挙、府知事選挙において、日本共産党は、「独裁政治を許さない」という一点で、党派の垣根をこえた共同をつくり、勝利をかちとるために全力をあげましたが、これは民主主義を守る大義にたった正しい選択であったと確信するものです。選挙戦をつうじて、広範な保守の人々をふくめて「反独裁」の共同が大きく広がり、大阪市長選挙では、41%、52万人もの有権者が「独裁ノー」を掲げた平松候補に票を投じたことは、今後のたたかいを発展させる重要な土台となるものです。私たちは、政治的立場の違いをこえ、勇気をもって民主主義のために声をあげたすべての方々に、心からの敬意を申し上げるものです。
「大阪都構想」「教育基本条例案」「職員基本条例案」の「独裁3点セット」をはじめとするファッショ的独裁政治の具体化を許さないたたかいは、これからがいよいよ重要になってきます。日本共産党は、このたたかいを、大阪のみならず、日本の民主主義を守る重要なたたかいと位置づけ、「反独裁」の一点での共同をさらに広げるために全力をあげる決意を表明するものです。
そのなかで、大阪の暮らしと経済に閉塞状況をもたらしているのは、橋下氏がいうような「行政のシステム」の問題などではありません。米国と財界中心の政治の異常な歪(ゆが)み、その深刻な行き詰まりにこそ、その原因があること、その根本的な転換こそ真の閉塞打開の道であることを、広く明らかにしていくための努力をはらいます。
党創立以来、一筋に平和、民主主義、生活擁護のために奮闘してきた政党として、支配勢力による情勢の反動的打開のあらゆる企てと正面からたたかい、とりわけファッショ的な独裁政治に反対する広範な人々との共同を広げ、暗黒政治への逆行を許さないために力をつくそうではありませんか。
政治と社会の危機と新しい時代への希望が交錯する激動の情勢にふさわしい奮闘を
日本の政治は、文字通り大きな歴史的岐路にあります。いま私たちが、幅広い国民のなかに大きく打って出て、切実な要求を掲げてともにたたかい、党綱領が示す日本改革の展望を広く語るならば、日本共産党の前進・躍進をかちとりうる新しい情勢が生まれています。
私たちの奮闘が、いまの情勢の大激動にふさわしいものとならなければ、反動的逆流によって日本の前途が閉ざされる危険もあります。
同志のみなさん。政治と社会の危機と新しい時代への希望が交錯する激動の情勢のもとで、変革者の党としての日本共産党の真価を発揮して奮闘しようではありませんか。
2、各分野での国民運動の大きな高揚――日本共産党が先駆的役割を
報告の第二の主題として、各分野の国民運動について述べます。
古い政治が深刻な行き詰まりに直面するもとで、いま、さまざまな分野の国民運動が、きわめて豊かで多面的な広がりをもって発展しています。その大きな高揚をかちとるために、日本共産党は、自覚的民主勢力と共同して、大いに先駆的役割を発揮していきたいと思います。
大震災・原発災害からの復興、「原発ゼロの日本」をめざすたたかい
まず大震災・原発災害からの復興、「原発ゼロの日本」をめざすたたかいについて報告します。
復興財源、復興のあり方、公的支援――復興をめぐる政治的対決点が鮮明に
大震災・原発事故から9カ月が経過しました。この間、わが党は、3次にわたる「提言」を政府に提起し、国会議員団、被災地の地方議員団と党組織、全国の党組織の奮闘によって、政治を動かす一連の成果をあげてきました。
「二重ローン」問題では、すべての事業者を支援対象とする方向への前進がつくられています。医療機関の再建問題では、公立・民間を問わず、すべての被災医療機関を対象にした支援を約束させ、岩手県の三つの県立病院は再建にむけて動き出しました。放射能汚染の除染問題では、不当な「線引き」を許さず、年間追加被曝(ひばく)線量1ミリシーベルト以上はすべて国が責任をもつとの言明をさせ、除染費用は「国が責任をもって対応する」と約束させました。
同時に、なお被災者の生活再建は大きく立ち遅れ、復興をめぐってつぎの政治的対決点が鮮明になっています。
一つは、復興財源をめぐる政治的対決です。政府と民自公の「財源論」は、庶民増税と一体に大企業減税をすすめるために復興財源は1円も出てこない、原発災害対策のための本格的財源論をもたないという二重の問題点をもつ無責任なものです。
日本共産党は、一般の震災復興財源は、歳出・歳入の歪みにメスを入れてまかなうとともに、原発災害対策の財源は、電力業界の「原発埋蔵金」などを活用した「基金」を創設し、賠償・除染・廃炉にあてるという、現実的で責任ある財源論を提案しています。原発災害対策の「基金」創設の提案に対しては、政府も「検討」を約束せざるをえなくなっており、実現のため引き続き力をつくす決意であります。
二つ目に、被災者の生活と生業(なりわい)の再建か、大震災に乗じて大企業のもうけ口を増やす政治かが問われています。
大企業が自由勝手に沿岸漁業に参入できる「水産特区」の押し付け、仮設住宅やガレキ処理などの復興事業を地元企業でなく県外大企業に丸投げするなど、被災者よりも大企業のもうけを優先させる政治の歪みをきびしくただしていきます。
三つ目に、「個人財産の形成になる」という古い理屈で被災者への公的支援に背を向けるのか、従来の枠組みを超えて公的支援制度の拡充・創設をかちとるかも重要な争点です。
とくに、住宅再建への支援額・支援対象の拡大、店舗・工場の復旧のための直接支援制度の創設、宅地被害への直接支援の創設などに踏み込むかどうかは、被災地復興の熱い焦点になっています。
党が取り組んだ「震災募金」「党機関支援募金」は、二つの合計で12億円を超えました。ボランティアはのべ2万人を超えました。復興への道のりは長期のたたかいとなります。わが党は、被災者の生活再建を最優先に、復興がなしとげられるよう、被災地でも、国政の場でも、全力をつくす決意です。これまでのご協力に感謝するとともに、引き続く被災地への全国的な支援を心から訴えるものです。
徹底した除染と全面賠償――原発に固執する姿勢を変えさせるたたかいと一体に
つぎに、原発災害から、国民の命と暮らしを守るたたかいについて報告します。
被災3県のなかでも福島県の復興には特別の困難さがあります。いまなお避難者は15万人を超え、5万8千人は福島県を離れて避難しています。存続の危機にさらされている自治体もあります。わが党は、自主避難も含めて避難された人々と、現地で暮らし続けている人々の双方に対して、生活と権利、健康を守るための万全の対策を等しくとることを、政府に強く要求します。
ここでも、いくつかの重大な政治的対決点が浮き彫りになっています。
一つは、徹底した除染に責任をもつのかどうかという問題です。この問題での政府の対応は、求められる一大事業にてらしてあまりに無責任といわなければなりません。依然として汚染廃棄物の「仮置き場」がなかなか決まらないことが、除染の重大な障害となっています。
わが党は、(1)「中間貯蔵」という問題の先送りでなく、最終処分の方法と場所を、住民合意を尊重しながら示すこと、(2)「仮置き場」の設置も、自治体まかせでなく、住民合意を貫きながら国の責任でおこなうこと、(3)食品の暫定基準値を厳しい規制値へと見直し、検査体制の抜本的強化をはかるとともに、長期的・系統的な健康管理をおこなうこと、(4)科学者などの英知を結集した「放射能測定・除染センター」をつくることなどを、政府に強く求めてたたかいます。
いま一つは、原発災害の全面賠償をおこなうのかどうかという問題です。政府の「中間指針」を見直し、全面賠償を明記することを強く求めます。賠償問題に対しても、東京電力の対応は、加害者としての自覚がなく、できるだけ値切ろうという誠意を著しく欠くものとなっています。この間、農民連とわが党も協力して、モモとあんぽ柿の全面賠償を東電に約束させるなどの成果もかちとられています。全面賠償をかちとるために最後まで力をつくします。
政府は、除染と賠償について、原発に固執する立場から、できるだけ放射能被害や経済的被害の実態を小さくみせよう、対策も最小限にしようという姿勢です。この姿勢を変えさせ、原発災害から国民の命と暮らしを守るたたかいに全力をあげる決意であります。
「原発ゼロの日本」への合意をつくる広範な共同と粘り強い運動を
つぎに「原発ゼロの日本」をめざすたたかいについて述べます。
3中総報告では、国民的合意をつくりあげていくうえでの「二つの留意点」として、(1)「原発ゼロの日本」の一点での広い共同をつくりあげていくこと、(2)原発の危険から命と健康を守るうえでの緊急要求を重視し、互いに連帯を強めていくことを強調しました。
「原発ゼロ」の一点での広い共同をつくりあげていく努力としては、東京での「7・2集会」、「9・19集会」、浜岡、福島、福岡などでの大集会が、つぎつぎと画期的な成功をおさめています。福島県議会で、県内の原発全廃を求める請願が全会一致で採択され、それを受けて佐藤知事が県内の原発全廃を「復興計画に明記する」と表明したことも重要であります。党派の垣根をこえた国民的運動の発展をひきつづき追求したいと思います。
同時に、原発の危険から命を守る緊急要求の一つひとつを重視し、連帯を強め、「原発ゼロ」をめざす大きな国民的流れをつくっていきます。「除染・賠償」のたたかいと「原発なくせ」を一体に取り組んでいる福島のたたかい、「再稼働を許さない」たたかいと「原発なくせ」を一体に取り組んでいる九州をはじめとした各地のたたかいなどは、たいへんに重要です。
若い世代や、子育て世代が中心になって、「放射能汚染から子どもを守れ」「原発なくせ」などを掲げ、集会やデモ、署名など、草の根からの多様な運動が広がっています。若者が自発的に集まった「原発やめろデモ」が、全国各地で繰り返しおこなわれています。地域に根差し、人々のつながりのなかで運動が広がり、インターネットを積極的に活用していることが特徴です。これらの運動の多くに日本共産党員も参加・協力していますが、大いに発展させたいと思います。
定期検査中の原発の再稼働問題は重大な局面にあります。わが党の国会での追及に、首相も「事故究明、徹底調査がすべてのスタートの大前提」と認めざるを得ませんでした。わが党は、原因究明ぬき、まともな規制機関なしの「再稼働」に強く反対します。原発輸出にきびしく反対をつらぬきます。
たたかいの相手は、財界中枢、アメリカという二つの支配勢力です。長い息での粘り強い「原発ゼロの日本」への合意形成の努力が必要です。日本共産党は、そのための国民的討論と運動の先頭に立って奮闘する決意を表明するものであります。
TPP問題、普天間問題――対米従属を問う二つの熱い焦点
つぎにTPP問題、普天間問題という対米従属を問う二つの熱い焦点について報告します。
たたかいはこれから――TPP参加阻止の一点での共同闘争の発展を
野田首相は、11月のAPEC首脳会議で、日本列島に広がった反対の世論と運動に耳をかさず、国民へのまともな説明もないままTPP参加方針を表明しました。ぎりぎりまで方針を隠し、国会での議論からも逃げたまま、やみくもに事をすすめることは、民主主義を文字通り蹂躙(じゅうりん)する暴挙であります。わが党は、この暴挙に強く抗議し、参加方針の撤回を強く求めます。
たたかいはこれからがきわめて重要になります。TPP参加への道をすすもうとすれば、まず米国との「事前協議」が必要となります。農林水産物の全面自由化、食の安全の規制緩和、混合診療の全面解禁などが突きつけられることになるでしょう。その一歩一歩が、国民の批判と怒りを広げざるをえないでしょう。
TPPに参加すれば、「ゼロ関税」とされ関税自主権を奪われるだけでなく、米国からみて「非関税障壁」とされるあらゆる国内制度の撤廃が求められます。アメリカの狙いは、米国の多国籍企業が何の制約も受けずに、日本への輸出をおこない、日本で企業活動をおこなえるようにすることにあります。それは、アメリカの経済ルールを日本に持ち込み、押し付けるものであり、米国の多国籍企業による日本の経済主権の全面的な蹂躙にほかなりません。「食と農」への壊滅的打撃をはじめ、被害は国民生活のあらゆる分野におよぶことになります。文字通り日本を丸ごと売り渡す「亡国の政治」を、絶対に許すわけにはいきません。
アメリカは、TPPをつうじて、アジアでの経済覇権主義を露骨に追求しており、この道に日本をゆだねることに未来はありません。小規模分散型の農業を含め、さまざまな分野で共通性があるアジア諸国が、互いの経済主権、食料主権を尊重し、平等・互恵でともに栄える経済圏をアジア自身の手でつくる方向にこそ、未来があります。
この間、TPP参加阻止の一点で共同闘争が大きく広がっています。JA全中(全国農業協同組合中央会)など農林水産業、日本医師会など医療分野、全国町村会など自治体分野を含め、広大な戦線が築かれつつあります。日本共産党は、この国民的共同の一翼を担うとともに、それを発展させるためにあらゆる知恵と力をつくして奮闘します。日本列島津々浦々から、国民的運動をさらに発展させ、政府にTPP参加を断念させるまで頑張り抜こうではありませんか。
力ずくでの新基地建設は許さない――全国の連帯したたたかいを
米軍・普天間基地問題でも、野田政権は、沖縄県民の頭越しに「辺野古移設」――新基地建設への暴走を開始しました。年内に「環境アセス評価書」を沖縄県に提出し、公有水面埋め立てを申請する段取りに踏み出そうとしています。
防衛省の沖縄防衛局長が、沖縄県民と女性を侮辱・愚弄(ぐろう)する暴言で更迭されるという事態が起こりました。これは偶然に起こった一個人の問題ではありません。自分たちの行為が犯罪行為であることを自覚したうえで、県民の頭越しに、力ずくで新基地建設を推し進めようという政府の姿勢が象徴的にあらわれたものであり、絶対に許すわけにはいきません。防衛大臣の更迭は当然ですが、辞めればすむというものではありません。「環境アセス」をはじめ新基地建設にむけた動きをただちに中止することを強く求めます。
日本共産党は、「県内移設反対」が沖縄県民の揺るがぬ総意になった状況をふまえて、「沖縄の情勢は決して後戻りすることはない限界点をこえた。解決のためには無条件撤去しかない」と、米国政府に直接伝えてきました。
この間、米国内でも、レビン上院軍事委員長が「(辺野古移設は)非現実的、実現不可能」と述べたのに続き、共和党幹部のコバーン上院議員が沖縄の海兵隊の米本土帰還を主張するなどの動きが伝えられています。自公政権時代に普天間問題に直接かかわってきた岡本行夫元首相補佐官も、「沖縄県民の感情はポイント・オブ・ノーリターン(限界点)を過ぎてしまった」「辺野古移設はもはや不可能だ」と述べています。
米国議会の有力者、日本の交渉当事者のなかからさえ、現実をリアルに見て対応すべきだという声が出ているにもかかわらず、米国政府にいわれるまま、新基地建設につきすすむ野田政権の「使い走り」「御用聞き」ぶりはあまりに情けないではありませんか。
政府が、力ずくで事をすすめようとすれば、島ぐるみの怒りのマグマが噴き出すことは間違いありません。沖縄県民の総意に日本国民全体がどう応えるかが問われています。国民的連帯を広げ、「基地のない沖縄」「基地のない日本」をめざすたたかいをさらに発展させようではありませんか。
来年6月にたたかわれる沖縄県議会議員選挙で日本共産党の前進・勝利をかちとることは、沖縄県民の総意をさらに強固なものとし、「基地のない沖縄」をつくる最もたしかな力となります。沖縄県党組織の奮闘とともに、全国的な支援を心から訴えます。
「消費税増税と社会保障の一体改悪」反対、社会保障充実をめざすたたかい
つぎに、「消費税増税と社会保障の一体改悪」に反対し、社会保障充実をめざすたたかいについて報告します。
社会保障大改悪と一体の消費税大増税――これまでにない最悪の計画
いま野田内閣がすすめようとしている「税と社会保障の一体改革」とは、社会保障制度の大改悪をやりながら消費税を2倍にするという、これまでのどんな庶民増税・社会保障改悪にもなかった最悪のものであります。
社会保障改悪のメニューは、自公政権下で「構造改革」の名のもとに大きく後退した社会保障制度をいっそう切り捨て、最悪の水準に引き下げるものとなっています。年金では、支給開始年齢の引き上げ、年金支給額の切り下げなど、現在の年金受給者にも、将来の年金受給者である現役世代にも犠牲をしいる大改悪がたくらまれています。医療では、70〜74歳の医療費窓口負担を2割にし、定率の窓口負担にくわえ定額負担をしいるなどの負担増が計画されています。保育では、「子ども・子育て新システム」の名で保育への公的責任を放棄する動きが大問題になっています。
「社会保障の大改悪」と一体の消費税増税など論外です。そして社会保障改悪のどれをとっても、そして消費税増税そのものも、2009年総選挙で民主党が掲げた公約を裏切るものであり、絶対に許されるものではありません。
財源を段階的に確保しながら、段階的に社会保障拡充に踏み出す
この問題では反対とともに対案を示すことが重要です。社会保障の財源をどうするか。所得の少ない人に重くのしかかる消費税増税は、社会保障の財源として最もふさわしくないものです。社会保障の財源は、応能負担――負担能力に応じた負担の原則をつらぬいて確保すべきであります。
日本共産党は、社会保障の改悪を中止し、つぎの三つの内容で財源を段階的に確保しながら、段階的・連続的に社会保障の拡充に踏み出すことを求めます。
第一に、大企業、大資産家への新たな減税を中止し、軍事費、大型開発、原発関連予算、政党助成金など「聖域」を設けず歳出のムダにメスを入れます。
第二に、富裕層と大企業に応分の負担をもとめる税制改革――これまでのゆきすぎた減税を見直し、欧米で検討されている富裕層への課税強化をすすめます。
第三に、国民全体で社会保障の抜本的拡充の財源を支えるため、所得に応じた負担をもとめる税制改革をおこないます。
過去最悪の「税と社会保障の一体改悪」を許さず、社会保障の充実をはかるたたかいは、今後の国民の暮らし、日本の経済と社会のあり方を左右する歴史的たたかいとなります。
「消費税増税と社会保障の一体改悪」反対、社会保障充実の財源はムダの削減と「応能負担の原則」でまかなえ――この旗印を高く掲げ、国民的たたかいをおこそうではありませんか。
貧困と格差をなくし、雇用・家計・経済を立て直す
つぎに貧困と格差をなくし、雇用・家計・経済を立て直すたたかいについて報告します。
「私たちは99%だ」――世界の運動と響きあう日本の現状
ニューヨーク・ウォール街で始まった貧困と格差に反対する運動が、全世界に広がっています。この運動が掲げるスローガン――「1%の大金持ちが支配する社会でいいのか」「私たちは99%だ」は、日本の現状とも響きあうものであります。
大企業の内部留保は増え続け260兆円にも及ぶ一方で、国民の所得は減り、貧困と格差が拡大し、長期にわたって「成長の止まった国」という状況から抜け出せない。そのもとで上位1%への富の集中が日本でも起きています。こうして日本は「右肩下がりの格差拡大」がすすむ国となっています。
これらをつくりだした大きな原因が、労働法制の規制緩和による正社員の非正規社員への置き換え、人間らしい雇用のルールの破壊でした。それはリーマン・ショックを契機に「派遣切り」という一大社会問題を引き起こしました。労働者とわが党のたたかいによって、労働法制の規制緩和から強化への潮目の変化が起こりました。しかし、ここに来てこの分野でもふたたび逆流が生まれています。「民自公」3党の合意で、政府が提出していた労働者派遣法改定案が、完全に骨抜きにされたことは、許しがたいことであります。
大企業に過剰に蓄積された富を、暮らしと経済に還元させよう
世界経済危機と異常な円高、未曽有の大災害と原発事故は、長期にわたって低迷がつづく日本経済への深刻な打撃となっています。世界経済危機が長期化するもとで、これまでのように「国際競争力の強化」を口実に、雇用や国内需要を犠牲にして、外需依存の経済政策を続けていては、日本経済の前途はいよいよ閉ざされることになります。国内需要を喚起させる経済政策、とりわけ大きく減少した国民の所得を回復し、家計を応援する政策への抜本的転換が必要であります。
日本共産党は、労働者派遣法の抜本改正、中小企業への適切な支援をおこないながら最低賃金の時給1000円以上への引き上げ、長時間・過密労働の抜本的是正、解雇規制のルールの確立、大企業と中小企業との公正な取引のルールの確立などを求めてたたかいます。
無法な「派遣切り」、リストラや不当解雇に抗して勇気をもって立ち上がった全国各地の若者と労働者のたたかいへの支援と連帯を心からよびかけます。正社員と非正規社員の連帯、民間労働者と公務労働者の連帯、労働者と中小零細企業家、農林水産業者の連帯――99%の国民的連帯の力で、大企業に過剰に蓄積された富を、暮らしと経済に還元させようではありませんか。この方向にこそ、日本経済を健全な成長と発展の軌道にのせる道があるということを強調したいと思います。
選挙制度改革をめぐるたたかいについて
つぎに選挙制度改革をめぐるたたかいについて述べます。
衆議院で選挙制度に関する各党協議会がおこなわれていますが、その争点として、現行の小選挙区比例代表並立制を維持・改悪していくのか、民意が反映する制度に抜本改革するのかという対立軸が鮮明になっています。
小選挙区制が導入されて17年、5回の総選挙がおこなわれましたが、大政党有利に民意を歪め、おびただしい「死票」を生み出すという、反民主主義的な害悪は回を追うごとに深刻になっています。さらに、この制度のもとで「政党の堕落、政治家の資質の劣化」がすすんでいることは、この制度を推進した当事者の口からも語られています。
小選挙区制が導入された当初は、これに反対を貫いたのは、日本共産党だけでありました。しかし、いまでは民主党、自民党以外のすべての政党が、現行制度の抜本改革、民意の反映を重視した選挙制度を主張するという変化が生まれていることは、きわめて重要であります。
わが党は、選挙制度の民主的改革を求める広範な国民運動と共同して、小選挙区制の害悪を徹底して告発し、民意をより正確に反映する比例代表中心の制度に抜本改革することを強く要求するとともに、小選挙区制の害悪をいっそう拡大する比例定数の削減は絶対に許さないという立場で奮闘するものであります。
要求実現のたたかいと一体に、綱領路線を国民多数の合意にする独自の努力を
国民運動の諸課題について述べてきましたが、TPP交渉参加問題、沖縄・新基地建設問題などでの暴走の根本には、日米安保体制を「神聖不可侵」なものとする異常な対米従属の政治があります。大震災からの復興に逆行する「構造改革」の押し付け、原発に固執する政策、社会保障改悪と消費税増税、貧困と格差の広がりなど国民の生活苦の根源には、異常な財界中心の政治があります。
こうしたもとで、日本共産党は、さまざまな分野で、政治的立場の違い、党派の垣根をこえ、一致点にもとづく共同――「一点共闘」を広げ、国民要求にもとづくたたかいを多面的かつ豊かに発展させ、現実政治を動かすために奮闘します。同時に、今日の深刻な政治の閉塞状況の根源には、「二つの異常」を特徴とする日本の政治の歪みがあること、どんな要求も、この歪みに正面からメスを入れる改革をつうじてこそ、根本的打開の展望が開かれることを明らかにするために、独自の努力をはらいます。
同志のみなさん。新しい情勢のもと、国民要求実現のたたかいと一体に、党綱領がさし示す日本改革の方針を、国民多数の合意にしていくために大いに知恵と力をつくそうではありませんか。
3、総選挙方針――「二大政党づくり」を乗り越え、綱領実現にむけた新たなスタートを
報告の第三の主題は、来るべき総選挙の方針についてです。
解散・総選挙の時期は、予断をもって言うことはできませんが、野田政権と国民との矛盾の急速な広がり、「二大政党」全体の行き詰まりの深刻さからみて、政局は不安定な状況におちいっており、来年の一定の時期以降には、解散・総選挙の可能性をはらみながらの政治情勢の展開になると予想されます。任期満了まで1年半余りとなったいま、いついかなる時期の解散・総選挙にも備えた取り組みに全力をあげる必要があります。
来るべき総選挙の歴史的意義と目標について
まず来るべき総選挙の歴史的意義と目標について述べます。
民主連合政府にむけて、新たな本格的なスタートを切る選挙に
「二大政党づくり」の動きが破たんに直面する新しい情勢のもとで、外交、内政のどの分野でも国民は政治と社会への閉塞感を深めています。大震災と原発事故以降の9カ月は、従来の古い政治の枠組みでは、この未曽有の国民的危機へのまともな対応ができないことを示しました。
来るべき総選挙で、わが党は、この閉塞状況を打開する展望は、「二つの異常」を特徴とする日本の政治の歪みに根本からメスを入れる改革をすすめることにあること、その担い手は日本共産党であることを、広く国民に訴えてたたかいます。
さらに、わが党の綱領実現という目標とのかかわりで、大志をもって、総選挙を位置づけてたたかいます。「民自公」の3党政治に「ノー」の審判を下し、日本共産党が本格的な反転攻勢に転じ、21世紀の早い時期に民主連合政府を樹立するという目標にむけて、新たな本格的スタートを切る選挙にしていきたいと思います。
「成長・発展目標」を自覚化し、650万票以上の得票目標に正面から挑戦しよう
総選挙にのぞむ目標としては、まず、綱領実現をめざし中期的展望にたった「成長・発展目標」をあらためて自覚化し、全国すべての地方党機関、党支部が、それぞれの地域・職場・学園で、政治的力関係を変える大志をもって総選挙にのぞむことを訴えます。
第25回党大会では、「『成長・発展目標』の基本は、国政選挙で、どの都道府県、どの自治体・行政区でも、『10%以上の得票率』を獲得できる党をめざすということである。そのさい、すすんだ都道府県、党組織では20%から30%以上の得票率をめざす。早期に5%以下の県をなくすことも重要である」と決定しています。来るべき総選挙をこの「成長・発展目標」に接近、実現する第一歩の選挙と位置づけてたたかいます。そのうち「5%以下の県をなくす」ことは、次期総選挙で達成すべき目標とします。
次期総選挙の政治目標は、「比例を軸に」をつらぬき、650万以上の得票、10%以上の得票率を獲得し、すべての比例代表ブロックで議席獲得・議席増をめざすことであります。現在議席のない北海道、北陸信越、中国、四国での議席獲得、東京、北関東、南関東、東海、近畿、九州・沖縄での議席増、東北の議席確保をめざしてたたかいます。
私たちが出発点とすべきは、2010年参院選比例票の356万票(6・1%)であります。この水準では、現有9議席のうち、東北と近畿で議席を減らすことになります。650万票(10%)の得票目標の獲得のためには、参院比例票を1・8倍(得票率では1・6倍)に伸ばすことが必要となりますが、これに正面から本腰を入れて挑戦しようではありませんか。
比例代表と小選挙区の候補者擁立の基本方針について
つぎに比例代表と小選挙区の候補者擁立の基本方針について提案します。
前回総選挙の候補者擁立の方針と総括について
前回総選挙でわが党は、第24回党大会5中総決定にそくして、(1)小選挙区では、「参院選比例得票を8%以上獲得したところで、日常的・系統的に活動できる力量ある候補者を擁立できる選挙区」「各都道府県で一選挙区以上」で候補者を擁立する、(2)比例代表選挙では、ブロック全域で活動する候補者にくわえて、全県でそれぞれの県で日常的な活動をおこなう候補者を擁立する、という方針でたたかいました。これは、党の力量をリアルに検討し、比例での前進に党の力を集中させるためにとった方針でした。
この方針にそくして、2009年総選挙でわが党は、300のうち152の小選挙区で候補者を擁立してたたかいました。小選挙区候補を擁立した選挙区ではそのうち70%が比例代表の得票を伸ばし、擁立しなかった選挙区では比例代表の得票を伸ばしたのは31%でした。この総選挙から総括と教訓を引き出した9中総決定では、方針の全体としての的確さを確認しつつ、将来的には全選挙区で擁立できる党への前進をめざすことが全党的課題となっていることを強調しました。
新しい情勢のもとでの提案――「すべての小選挙区で候補者擁立をめざす」
ここで幹部会として新しい提案をしたいと思います。次期総選挙では、前回の方針を変更し、比例代表の候補者は、ブロック全域で活動する候補者とすることを基本とし、小選挙区については、「すべての小選挙区で候補者擁立をめざす」という方針でたたかうことを提案します。この提案は何よりも、この間の情勢の大きな変化にそくしたものであります。
前回の総選挙は、国民のなかに「自公政権ノー」「自民党政治を変えたい」という大きな流れがわきおこり、「政権交代」が最大の焦点となる選挙でした。わが党は、「自公政権ノーの審判」を正面から掲げてたたかいました。5中総方針は、そうした情勢のもとで、結果として国民的感情とも違和感のない方針だったと思います。
しかし、次期総選挙は、まったく異なる情勢のもとでの選挙となります。すなわち、国民が自公政権と民主党政権の両方を実体験し、その政治的体験を通じて、両方に怒りと批判をつのらせているもとでの選挙となります。「二大政党による政権選択」という動きが破たんに直面し、国民のなかに、「自民か、民主か」という枠組みをこえて、新しい選択肢を探求する動きが大きく広がるもとでの選挙となります。そして、これまでにない広範な人々と日本共産党との対話と共同が広がる新しい状況が生まれているもとでの選挙であります。こうした新しい情勢のもとで、わが党は、この総選挙を、「二大政党づくり」の策動を乗り越えて、党綱領実現にむけて新たな本格的なスタートを切る選挙としなければなりません。
こうした情勢と任務にてらすならば、選挙戦をたたかう基礎単位である小選挙区に、わが党が候補者を最大限に擁立し、比例でも小選挙区でも、閉塞打開と日本改革の展望を示してたたかうことは、わが党に課せられている責務であります。
党組織の力量という点では、全党的にみても、さまざまな問題点・弱点を抱えている状況があります。だからこそ今、私たちは「党勢拡大大運動」に取り組んでおり、この運動を必ず成功させなければなりません。しかし、わが党の対応を考えるさいに、組織の実情からだけ出発するのではなく、情勢の劇的変化のもとで国民が求めている党の役割を果たすという見地から出発することが何よりも大切ではないでしょうか。「二大政党」全体への不信と批判が広がるもとで、わが党が、小選挙区での積極的擁立の方針をとることは、閉塞打開の展望とそれを担う新たな政治的選択肢を求める広範な国民の思いとも合致するものとなり、比例代表選挙での前進にとっても、重要な意義をもつものとなるでしょう。
中央と地方が一体で候補者づくりの大仕事に力をつくす
もちろんこの方針の実践は容易なことではありません。党組織の現状からみて、候補者擁立自体が、大仕事となります。党機関の常勤体制が弱まっているもとで、「支部が主役」の党活動を指導する党機関の機能が弱まったりすることのないよう、また、擁立するからには可能な限り日常的・系統的に活動する条件のある候補者を擁立するよう、中央と地方が一体で候補者づくりに力をつくします。
「すべての小選挙区で候補者擁立をめざす」という方針を保障する財政措置についても、中央と地方が一体で努力をはかります。党大会で確認した「国政選挙供託金支援基金」を強化します。あわせて地方党機関の供託金募金・選挙募金の取り組みを強化します。募金活動への党内外の方々の協力を心から訴えるものです。
以上が候補者擁立についての幹部会の提案であります。
全党が総選挙、とりわけ比例選挙を、「自らの選挙」としてとりくむ
つぎに、総選挙をたたかう方針について報告します。ここでとくに強調したいのは、全党が総選挙、とりわけ比例選挙を、「自らの選挙」として取り組むということであります。
比例代表選挙を「自らの選挙」として取り組む一大画期の選挙に
この間の数回の国政選挙をたたかうなかで、選挙を重ねるたびに国政選挙への構えが弱まり、「国政選挙に力が入らない」「国政選挙の活動が薄くなる」などの傾向が、党内に生まれていることは重大です。その背景には、選挙制度の改悪と「二大政党づくり」という、日本共産党排除の二重の仕掛けがありました。
次期総選挙では、この弱点を根底から払しょくし、全党が総選挙、とりわけ比例代表選挙を、文字通り「自らの選挙」として取り組む、一大画期の選挙としていきたい。情勢の進展のなかにも、そうした取り組みへの発展を可能にする条件が大いにあります。
第一の力点――比例ブロックごとに議席増のための政治・組織戦略を具体化する
そのための力点として二つの点を提起します。
第一の力点は、全国11の比例ブロックごとに、得票目標を自覚化し、議席増のための政治・組織戦略をもつということであります。
一つは、比例代表選挙の仕組みをよくつかみ、議席増のためには自らが責任を負う党組織でどんな取り組みが必要かを自覚化することであります。比例代表選挙は、遠い選挙のように見えますが、実際は、どの市町村、どの地域の得票も議席に結びつく、最も身近で民主的な制度です。この選挙を実際に最も身近な選挙にしていくために、「ドント方式」での得票率と議席との関係をよくつかみ、それぞれのブロックで議席増をかちとるためには、どれだけの得票率増が必要か、650万票以上に対応する得票目標はどういう意味があるのかを、ブロック、県、地区、自治体・行政区、支部にいたるまで明らかにして、日常不断に自覚的に追求するようにします。
二つ目は、政治目標を実現するために、比例ブロックごとに、どうやって政治的力関係を変え、議席増をはかるかの政治作戦と組織方針をもつことであります。必勝をめざす「政治スローガン」を明確にし、切実な要求にもとづく国民運動、保守を含む無党派の方々との対話と共同を広げ、新たな支持層を開拓する思い切った計画をたて、実践するようにします。総選挙勝利を前面にすえて「党勢拡大大運動」の成功に総力をあげて取り組むようにします。
三つ目は、比例代表選挙を「顔の見える」選挙にしていくことであります。日本共産党そのものへの支持の大きな波をつくりだしながら、候補者の魅力と役割の押し出しも重視します。比例ブロック選出議員と予定候補者は、小選挙区予定候補者、党機関、地方議員団、支部と力を合わせて、住民要求に応えた活動を強化し、有権者との結びつきを広げる先頭に立って奮闘します。
四つ目に、比例ブロックごとの後援会活動について新たな探求、推進をはかります。旧中選挙区制時代には、選挙区ごとの後援会が旅行会や各種の行事など楽しく元気のでるいろいろな取り組みを活発におこない、それが単位後援会や分野別後援会の活動を励まし、選挙活動の日常化の力になった経験をもっています。こうした経験を生かし、日本共産党後援会比例ブロック連絡会を確立して、比例ブロック内の府県、自治体、行政区、分野別後援会の交流、連帯、学習など「ブロックは一つ」の活動を具体化し推進していきたいと思います。
五つ目に、小選挙区のたたかいは、次期総選挙で議席をかちとることは容易ではないが、勝利をめざして全力をあげるとともに、比例での躍進に貢献するたたかいに取り組みます。日常不断に有権者との結び付きを広げ、小選挙区という選挙戦をたたかう基礎単位で政治家として自らを鍛え上げながら、繰り返しの挑戦で、毎回、一歩一歩得票を伸ばし、2010年代に「成長・発展目標」を実現し、どの都道府県でも、小選挙区で当落を争える力をもつ選挙区をつくりだすという大志をもった取り組みをおこなうことを訴えたいと思います。
六つ目に、四つの議席空白ブロックでは、この間の3回の総選挙で連続して議席を獲得できないできましたが、今度こそこれを断ち切って、必ず議席を獲得するための特別の計画をたて、それにもとづく奮闘をおこない、全国的連帯をはかることを訴えるものです。最も大きな飛躍が求められる四国ブロックをはじめ、すべての比例ブロックで必ず議席を獲得し、議席を増やすために、「全国は一つ」の立場にたった大奮闘を呼びかけるものであります。
第二の力点――結びつきを生かし、広げることを軸にした選挙活動の日常化をはかる
第二の力点は、2中総決定が参院選から導いた重要な教訓――「支部を主役」に、一人ひとりの党員の結びつきを生かし、広げることを軸にした、本来の選挙活動のありかたを草の根から展開することです。対話と支持拡大の運動を、こうした見地に立って直ちに開始し、日常的・系統的に発展させます。
2中総決定が参院選の教訓として明らかにしたように、結びつきを生かし、広げることを軸とした選挙活動の日常化のうえでは、(1)「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」「集い」の取り組みと、(2)すべての支部が対応する単位後援会を確立し、「後援会ニュース」も活用して、日常的に後援会活動を発展させる努力――この二つの活動の強化が大きなカギとなることを強調したいと思います。
そのさい、「集い」でも、後援会活動でも、身近な住民要求、地方政治の問題とともに、国政における日本共産党の値打ち――日本改革の方針、党の理念と歴史、現実政治を動かす党の実績など、党を丸ごと理解してもらう活動に、意識的・自覚的に取り組むことが大切であります。
全党が総選挙を「自らの選挙」として取り組むうえで、全国で2700人を超える地方議員のみなさんが、総選挙を自分の選挙と同じ構えと意気込みで取り組み、「党勢拡大大運動」でも先駆的役割を発揮することは決定的に重要であります。全国の地方議員のみなさんが党支部と一体に大奮闘することを心から訴えるものです。
次期参議院選挙勝利をめざす活動と一体にたたかう
つぎに次期参議院選挙勝利をめざす活動と一体にたたかうという問題について述べます。
次期参議院選挙は、1年7カ月後にたたかわれます。折り返し点を迎えています。衆議院選挙と参議院選挙を一体にたたかい、相乗的に党躍進の波をつくりだしていきたいと思います。
次期参議院選挙の政治目標は、比例代表選挙で、650万票以上の得票、10%以上の得票率を獲得し、すでに発表した5人の比例代表予定候補者の全員当選をはかることを、全党の一致結束した力で達成することにあります。あわせて、かつて議席をもっていた北海道、埼玉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫での議席奪回に積極的に挑戦します。
各都道府県委員会は、衆院小選挙区予定候補とともに、参院選挙区予定候補を決定し、そろって選挙活動をスタートできるようにします。
参議院議員選挙の直前にたたかわれる東京都議会議員選挙での前進・勝利のための取り組みも一体的にすすめていきます。
来るべき総選挙と参議院選挙で必ず躍進をかちとり、21世紀の早い時期に民主連合政府を樹立するという目標にむけ、新たな本格的スタートを切るために全力をつくそうではありませんか。
4、「党勢拡大大運動」の到達点と、発展・飛躍にむけた方針
報告の第四の主題として、「党員拡大を中心とした党勢拡大大運動」の到達点と、この運動の発展・飛躍にむけた方針について述べます。
「党勢拡大大運動」の到達点について
「党勢拡大大運動」は、3中総後の全党の5カ月にわたる奮闘で、全体として、貴重な成果をあげ、今後の発展の契機となる多くの教訓をつくりだしています。しかし、来るべき総選挙での勝利、「大運動」の目標にてらすなら、その成果は初歩的であり、一部の先進的な党支部・党組織の取り組みにとどまっています。
中心課題である党員拡大では、「大運動」に入って新入党員を迎えた党支部は15・2%、入党決意者は約4600人であります。今年の5月以降、半年にわたって、毎月、ほぼすべての地区委員会が党員を迎えていることは、重要な前進の一歩です。戦略的課題と位置づけた職場支部と若い世代のなかでの党員拡大で、新しい前進の芽が生まれていることも重要です。第4回中央委員会総会として、新しく入党された同志に心からの歓迎の気持ちを送りたいと思います。
「しんぶん赤旗」読者拡大では、日刊紙の発行危機打開のための購読料値上げで、大きな後退の危険性がありましたが、3中総時点の日刊紙の読者数を維持していることは、重要な成果であり、「日刊紙を守ろう」という全党の奮闘のたまものであります。しかし、日刊紙、日曜版とも安定的な前進の軌道に乗せるにはいたっていません。
「綱領・古典の連続教室」は、全国の4割の支部、約2万8千人に受講が広がっています。「教室」の系統的な開催は、全党が、綱領的・世界観的確信を身につけ、大局的な展望と確信をもって活動するうえで大きな力を発揮しつつあります。
「大運動」を、一部の党支部・党組織の取り組みから、文字通りすべての支部が自覚的に参加する全党運動へと、どうやって飛躍させるか。報告では、3中総決定を前提において、「大運動」の目標について新しい提案をおこなうとともに、飛躍へと転じるうえでの五つの強化方向を提起したいと思います。
総選挙勝利を正面にすえた運動に発展させる――目標の明確化と発展を提案する
まず、この運動を総選挙勝利を正面にすえた運動に発展させる、そのために目標の明確化と発展を提案します。
3中総決定は、「なぜ『党勢拡大大運動』か」について、四つの角度からその意義を明らかにしました。その全体をふまえつつ、総選挙が迫るもとで、「大運動」を総選挙勝利を正面にすえた運動へと思い切って発展させる必要があります。その見地から、「大運動」の目標について、つぎの基本的見地にたって、明確化と発展をはかることを提案します。
「大運動」は、「党員拡大を中心」にした運動――5万人の目標を必ずやりきる
まず、党員拡大の目標についてです。3中総決定では、「すべての地区委員会が、毎月、新しい党員を迎え、全国すべての支部が『大運動』の期間中に新しい党員を必ず迎えることを目標とします」と決めました。この提起にそくして、支部、地区、都道府県で党員拡大の目標を決めていますが、その合計は約5万人の新入党員を迎えるというものになっています。
これは全体としてきわめて積極的な目標だと考えます。それは、すべての支部で新しい同志を迎え、1支部平均で2〜3人の新しい同志を迎えるという目標となっています。これをやりきって総選挙をたたかうならば、勝利にむけた大きな保障となることは間違いありません。
「党勢拡大大運動」は、「党員拡大を中心」とした運動であることを、あらためて強調したいと思います。党員拡大の遅れという弱点を打開することは、党のあらゆる分野の活動の発展を支える最大の保障となります。党員拡大の目標については、支部、地区、都道府県が、すでに自ら決めた目標を、必ずやりきることを確認したいと思います。
総選挙勝利を正面にすえ、読者拡大の目標の見直しと発展を提案する
つぎに「しんぶん赤旗」の読者拡大の目標についてです。3中総決定では、「全都道府県、全地区が、毎月、日刊紙読者でも、日曜版読者でも、着実に前進することを目標とします」と決めました。この決定にそくして、各都道府県がそれぞれ目標を決めていますが、次期総選挙での前進・勝利を正面にすえ、それにふさわしい読者の陣地を築くという立場から、4中総を契機に、次の基本的考え方にたって目標の見直し・発展をはかることを提案します。
第一は、総選挙勝利に必要な読者の陣地を築くという立場にたって、その最小限の第一関門として、日刊紙も、日曜版も、2009年の前回総選挙時の陣地を上回る到達点を、「大運動」期間中にかならず築き、総選挙にむけてさらに前進の波を発展させるということであります。
第二に、3中総決定では、「党員拡大運動と一体に『しんぶん赤旗』日刊紙の購読を訴えることを、特別の意識性をもってとりくみます」ということを、「大運動」の目標設定のさいの基本方針として明記しています。また、すべての党員が日刊紙を購読することの重要性を重ねて強調しています。目標をこの見地をふまえたものにすることが必要となってきます。
この二つの基本的考え方にたって、次の方向で目標の見直し・発展をはかることを提案します。
まず、「しんぶん赤旗」日刊紙の読者拡大の目標についてですが、各都道府県が決めている目標を見ますと、ほとんどの県で、党員拡大の目標を下回っています。全党的にも、党員拡大の目標が約5万人であるのにたいして、日刊紙拡大の目標は合計で2万8千人となっています。すべての党員が「日刊紙」を購読する党をつくることを入党の最初から貫く、さらに党外にも広く「日刊紙」読者を広げていくという見地にてらせば、この目標では足らないということになるのではないでしょうか。そこで、いまの目標を見直して、すべての支部、地区、都道府県で、党員拡大目標に匹敵する、あるいはそれを上回る「日刊紙」読者拡大目標を決め、それを達成するようにしたい。かりに全党的に党員拡大目標と同水準の5万人の「日刊紙」読者を拡大するならば、前回総選挙時比で108%の峰を築くことができます。5万人の党員と「日刊紙」読者を拡大し、党の基幹的部分を強めることは、質的にも強い党をつくることになります。採算面でも、「日刊紙」発行の赤字を脱し、情勢が求める党活動構築の財政的基盤を確立することができます。
「しんぶん赤旗」日曜版の読者拡大の目標についてですが、各都道府県が決めている目標は、多くの県で「大会時回復」が多く、全党的な目標の合計は、12万5千人となっています。これでは実は目標をやりきっても、前回総選挙時比で96%にとどまります。ここでも目標を見直して、すべての支部、地区、都道府県が、「大運動」期間中に、少なくとも前回総選挙時を上回る日曜版読者の陣地を築くことを提起したい。その場合、全党的な目標の合計は約17万人ということになりますが、これを必ずやりきり、さらに前進をかちとるようにしたいと思います。
以上が「大運動」の目標についての幹部会の提案であります。
「大運動」の目標を「成長・発展目標」に接近する第一歩として自覚的に位置づける
支部、地区、都道府県は、「成長・発展目標」と、それにみあう党員拡大、日刊紙読者拡大、日曜版読者拡大の目標を有権者比でもっています。「大運動」の目標をやりきれば、有権者比でどこまでいくのかを明確にして、「大運動」の目標を、「成長・発展目標」に接近する第一歩として自覚的に位置づけるようにします。
同志のみなさん。「党勢拡大大運動」をつうじて、「5万人の党員、5万人の日刊紙読者、17万人の日曜版読者を、全党が力をあわせて増やし、党勢拡大の高揚をつくりだし、総選挙勝利の土台となる自力をつけよう」――これを合言葉に、奮闘しようではありませんか。
「大運動」の発展・飛躍にむけて――五つの強化方向
「大運動」の発展・飛躍をどうやってかちとるか。この間のすぐれた経験に学び、悩んでいる問題をともに打開するという立場から、五つの点を強化方向として提起します。
情勢の劇的変化、党躍進の条件を、決定と「しんぶん赤旗」にそくしてつかむ
第一は、情勢の新しい劇的変化、党躍進の可能性と条件を、中央委員会決定と日々の「しんぶん赤旗」にそくしてつかむことであります。
いま日本の政治には、情勢の新しい劇的変化が起こっています。一方で、「二大政党づくり」が破たんに直面し、これまで覆い隠されていた日本の政治の真の「対決軸」が見えやすくなり、他方では、わが党とこれまでにない幅広い国民、保守を含む無党派の方々との新たな共同が各分野で広がっています。わが党の奮闘いかんで、日本共産党の前進・躍進をかちとりうる新しい可能性と条件が生まれています。
この間の「大運動」の取り組みでも、情勢のこの特質をしっかりつかんだところで、大きな変化が起こっています。北海道・十勝地区では、6割を超える支部が「集い」に取り組み、5割を超える支部で新入党員を迎え、読者拡大でも前進していますが、その最大の教訓の一つは、3中総決定を指針に、十勝での生きた情勢の変化をつかみ、「力をつくせば前進できる情勢」だということを、腑(ふ)に落ちるところまで支部と党員のものとしていることにあります。
率直にいって、党内には、この間の「二大政党づくり」という反共戦略がつづくもとで、「頑張っても前進は難しい」「当面は選挙で芽が出ない」といった気分が、広範に残されています。しかし、情勢は大きく変化し、新しい共同が広がり、党がいま前進しなくていつするのかという激動が起こっているのであります。ここをすべての支部、党員が生き生きとつかみ、元気に足を踏み出せるようになるかどうか。ここに「大運動」飛躍の最大のカギがあるということを、強調したいと思います。
その最大の指針となるのは、中央委員会決定と日々の「しんぶん赤旗」です。この点で3中総決定の読了・徹底は、39%にとどまっていますが、ここに党の抱える最大の弱点の一つがあります。「決定で党をつくる」という気風を党のすみずみにつくりあげ、すべての支部が決定を討議し、すべての党員、100%の党員が読了・徹底する党への前進をはかろうではありませんか。
「支部が主役」で、要求活動と党勢拡大を「車の両輪」として取り組む
第二は、「支部が主役」で、「政策と計画」をもち、結びつきを生かし、要求活動と党勢拡大を党活動の「車の両輪」として取り組むことであります。
2中総は、「党員の結びつきに光をあて、生かし、広げる活動を党建設の大方針にすえる」ことを提起しました。支部と党員の多面的な結びつきを生かし、要求実現をめざす多彩な運動、たたかいに取り組んでいるところでは、党内に新鮮な活力がわきおこり、それと一体に「大運動」が前進しています。
いま、大震災、原発問題、放射能汚染、TPP問題、雇用問題、さまざまな生活危機に直面するなかで、これまで政治に距離を置いていた若い世代、子育て世代をはじめ、新しい層、広範な人々がかつてない規模で、多種多様な運動に参加しています。
そのもとで、結びつきを生かし、要求実現と党勢拡大を党活動の「車の両輪」にすえることの重要性をあらためて強調したいと思います。かつて「2本足の党活動」が、わが党が活力をもって発展する基本方針として取り組まれ、いまも、「2本足」という言葉は使っていませんが、その根本精神は変わりません。これを「車の両輪」の活動として、党活動の基本方針としてあらためてしっかりとすえたいと思います。
「大運動」で前進を築いているところでは、ほとんど例外なく、国政上の要求とともに、地域・職場・学園の身近な要求を生き生きとつかみ、その実現のために努力し、信頼を高めるなかで、党勢拡大をすすめています。「車の両輪」の活動を、全党のすみずみに広げていくことが、「大運動」の飛躍の大きな力となります。
量とともに質を――“日本共産党らしい党づくり”への特別の努力をはらう
第三は、量とともに質を――“日本共産党らしい党づくり”への特別の努力をはらうことであります。
「実態のない党員」を生み出したこと、党費納入に後退傾向が生まれていることの反省にたち、党員拡大と一体に党の質的強化をはかり、“日本共産党らしい党づくり”、すなわち、党規約第2条に明記されているように「日本社会のなかで不屈の先進的な役割をはたすことを、自らの責務として自覚している」党――不屈性と先進性がみなぎる党づくりのために力をつくします。
一つは、迎えた党員とともに成長する支部づくりに取り組むことであります。「大運動」で党に迎えた新しい党員が一人残らず、自覚的な党員として成長するために、支部と機関が努力をつくしているところでは、そのことが質的に強い党へと成長する大きな転機となっています。
その出発点は、入党時の働きかけにあります。綱領と規約の基本点を理解し、党員として活動するうえで、新入党員学習の修了と「党生活確立の3原則」が大切であることを理解してもらい、それらがきちんと修了・定着するまで党が責任をもつ。支部と機関がそれをあいまいにし、「やれる範囲で」などと値引くことは、入党時から党員としての成長を妨げ、党員としての人生を傷つけることになりかねません。
入党時の働きかけでもう一つ重要なことは、「支部が主役」の見地を貫くことであります。毎月10人以上の党員を継続的に迎えている東京・足立地区委員会から、次の報告が寄せられています。「党員拡大は、100%『支部が主役』ですすめている。議員や機関幹部が支部と離れて入党をすすめることはしない。議員が結びついた人は、支部の『集い』や催し物に参加してもらって、支部と結びついてから、議員と協力して支部自身が入党を働きかけている。『支部が主役』になって、新入党員を迎えた支部は、『自分たちで迎えた以上、大切にしよう』と、新入党員学習や支部会議参加などを、自分たちの問題として取り組み、新入党員の成長につながっている」。この教訓を、全党のものにしたいと思います。
二つ目は、「党生活確立の3原則」を実践し、すべての党員が自覚的に活動する党をつくることであります。
「支部会議に参加する」という点では、会議を開くこと、参加者を増やすことの両面で努力をはかりたい。支部会議の中身を「参加したくなる」「参加すれば元気が出る」「会議が待ち遠しい」というようなものに改善していくようにしたいと思います。
「『しんぶん赤旗』日刊紙を読む」という点では、今日の大手メディアの多くが、“翼賛報道”に終始しているという状況のなかで、これなくしては党員が暗闇のなかで方向を見失いかねない問題としてとらえることが大切であります。大震災のもとで「赤旗」配達が復旧したさい、「暗闇の洞窟で出口を導いてくれる一条の光」だというメールが寄せられましたが、これは全国どこでも言えることであります。
「党費を納める」という点では、党費の問題を数の問題、お金だけの問題と見ないで、党を自覚的に支える人間の問題としてとらえることが大切であります。一人ひとりの党員が自覚と誇りをもって党を財政的に支える党づくりに力をつくします。党機関と党支部が、党費納入問題を、「党員の心を集める」という見地で取り組み、毎月、党費を納めていた党員が、あるとき納めなくなることは、その党員の人生に異変が生じたことを示すものとしてとらえる、党支部・組織の党費納入の後退が生まれたら、組織の崩れが生じたことを示すものとしてとらえる、そういう党づくりの根本にかかわる問題としてとらえて弱点をただし、着実な前進をはかることを訴えるものです。
三つ目に、「綱領・古典の連続教室」を、全支部、民青同盟あげての学習運動に発展させることです。この取り組みをつうじて、綱領的・世界観的確信とともに、学ぶ喜びが伝わっていることが何より重要なことだと、私は毎回の感想文などをみて実感しています。学習の基本は独習にあります。そしてその原動力は学ぶことの喜びにあるのではないでしょうか。それを促す一大事業として、「連続教室」を大きく成功させることを、心からよびかけ、講師の一人として、最後までしっかりつとめる決意を表明したいと思います。
「集い」を党活動推進の「軸」として位置づけ、豊かに発展させる
第四は、「集い」を、選挙勝利にむけた活動、あらゆる党活動を推進する「軸」として位置づけ、豊かに発展させることであります。
この5カ月間の「集い」の開催支部は25・6%、開催数は8200回、参加人数は12万3千人となっています。週を追うごとに広がりが出て、「ご近所の集い」「出前集い」などが網の目のように広がっていることは、「大運動」推進の大きな力になっています。これを全支部の取り組みとし、100万人を超える一大運動に発展させようではありませんか。
国民の切実な関心から出発して、党の綱領、歴史、理念――党の全体像を語る取り組みとして「集い」を豊かに発展させましょう。大きな力を発揮している党創立記念講演ダイジェストDVDを、引き続き大いに活用していただくことをお願いしたいと思います。
「党機関は支部へ、支部は国民の中へ」――党機関の指導の改善と刷新の努力を
第五は、党機関の指導の改善と刷新への努力をはかることです。
2中総、3中総後の実践は、「党機関は支部へ、支部は国民の中へ」という党機関の指導改善・刷新の取り組みが、全支部、全党員が参加する党活動をつくるうえで、重要なカナメとなっていることを示しています。10月におこなった「地区委員長アンケート」では、改善と前進の教訓とともに、悩みも寄せられました。「機関会議での政治討議の大切さはわかるがうまくいかない」、「地区役員が支部の援助・指導に入れない」――とくにこの二つが悩みとして多く寄せられました。
「党機関の政治討議」という点では、全国的な情勢の特徴が、その県、地区内にどういう形であらわれているのか、国民との接点でよくつかみ、リアルに出しあう。党機関メンバーが「連続教室」を受講し、自由に感想を出し、大所高所から世界のこと、日本の政治を、論じ合う気風をつくる。この両面から政治に強い機関になるよう努力を重ねたいと思います。
「支部に入る」という点では、まず支部に足を運び、話をよく聞き、実情をつかむことからはじめようではありませんか。そして、支部への個別指導を担当の「地区委員まかせ」にせず、集団で検討し、知恵を出し合い、党機関としての指導責任を果たすようにしようではありませんか。
職場支部と若い世代の中での活動――変化をとらえ発展の芽を育てる
つぎに職場支部と若い世代の中での活動について述べます。
職場支部――政治的体験を積む中で労働者の意識に大きな変化が生まれている
職場支部の「大運動」の取り組みは、まだ初歩的ですが、党員拡大では「大運動」前の時期の1カ月の平均拡大数と比較すると1・5倍、とくに教職員分野は2・3倍、自治体分野は2・2倍に前進しています。こうした前進の芽が生まれているのは、決して偶然ではありません。政権交代、大震災・原発事故と、大きな政治的体験を積む中で、多くの職場で労働者の政治や社会に対する見方、生き方や働き方に対する意識に大きな変化が生まれています。
一つは、「競争と分断」「自己責任論」による職場支配への疑問と批判、人間的連帯を求める意識が高まっていることです。そのもとで、まじめに働き、仲間を大切にしながら、信念を曲げずに生き、たたかっている日本共産党員への信頼と共感が新たに広がっています。
いま一つ、「いい仕事がしたい」という働き方への要求に応えた取り組みへの共感が広がっています。自治体分野、教職員分野での「職場講座」では、「住民に役立つ仕事がしたい」「いい教育がしたい」という願いにこたえる多彩で粘り強い取り組みを通じて、結びつきが豊かに広がっていることが交流されました。民間大企業でも、ベテラン党員が長年の仕事で身につけた技術を青年労働者に継承する取り組みが、人間的信頼を広げています。
一人ひとりの労働者党員は、だれでも「結びつき」をもっています。まず足を踏み出してみれば、そうした新しい変化が実感され、「結びつき」が「党としての結びつき」に発展し、入党者を迎えている。これを大きな流れにしていこうではありませんか。
なお、職場支部の活動においては、「労働者のなかの党員拡大では、労働組合の違いをこえ、あらゆる労働者のなかに根をおろす」という3中総の結語でのべた大方針を、かさねて強調しておきたいと思います。
若い世代――知的探求と人間的連帯を求める動きにこたえる取り組みを
若い世代のなかでも、政権交代、大震災・原発事故をへて、生き方や価値観を問いなおし、「もっと知りたい」という知的探求への動き、「自分も役に立ちたい」という温かい人間的連帯を求める動きが、起こっています。多くの若者が被災地のボランティアに参加しています。「原発なくせ」集会やデモ、原水爆禁止世界大会などに若い世代が参加し、見違えるようにたくましく成長しています。この変化をとらえ、働きかけたところで、豊かな発展への芽が生まれています。
そのうえで、第一に、青年・学生支部や民青同盟のなかで、綱領と科学的社会主義を学ぶ活動を、党が本気になって援助することが、前進の最大のカギだということを強調したいと思います。「綱領・古典の連続教室」を視聴してきた青年・学生の多くが、「資本主義の問題点がわかった。青年の生きづらさの原因となっている日本社会の歪みを知ることができた」と、生き方と活動への自信をもち成長しつつあります。若者の関心や要求、生き方への探求に心をよせて、“知的めざめを社会進歩にむすぶ”活動、学ぶ喜びが実感でき、それが最大の魅力となるような活動を、党の援助でつくりだそうではありませんか。
第二に、青年・学生分野は、わが党にとって広大な空白がひろがる分野ですが、そのなかにも潜在的に日本共産党に関心をもち、共感・支持を寄せている若者たちは、たくさんいるということを強調したい。党の総力を結集し、青年の要求を掲げたたたかいと一体に、結びつきを広げ、気軽に、また率直・大胆に、党や民青に迎える取り組みに挑戦すれば、必ず前進をつくりだすことができます。
東京都委員会では、被災地ボランティアを空白大学前などで大胆に呼び掛け、19大学のべ280人を超える学生を組織し、就活問題の取り組みや「マルクスは生きている」連続セミナーなど学生の切実な要求や関心に応える企画に年間を通じて取り組み、学生党員数で前進方向に転じています。兵庫県委員会では、全地区が原発問題で学生と高校生対象の宣伝を実施し、地区ごとに民青同盟と懇談、援助を強化するなかで、民青地区委員会をこの1年で一つ再建、年明けにさらに二つ再建の予定だとのことです。
世界と日本の激動のなか、21世紀の未来を担う若者を、知的魅力あふれる取り組み、温かい人間的連帯があふれる取り組みをつうじて、党と民青同盟に迎え入れる活動に、大いに取り組もうではありませんか。
来るべき総選挙で何としても勝利をつかみたい。これは全党の共通の思いだと思います。いまこの「大運動」に精魂を傾けて取り組み、これを成功させることが勝利への道を開きます。他に安易な道はありません。この5カ月間に全党の努力でつくられた教訓を生かし、来るべき総選挙での躍進を正面にすえ、「党勢拡大大運動」の飛躍を、みんなの力で必ずかちとろうではありませんか。
5、資本主義の矛盾の深まりと科学的社会主義の生命力
報告の最後に資本主義の矛盾の深まりと科学的社会主義の生命力にかかわって述べたいと思います。
世界経済危機――過剰生産恐慌が土台にあり比重を増しつつある
世界に目を転じてみましょう。
2008年秋のリーマン・ショックに端を発する世界経済危機について、私たちは、この危機の性格を「金融危機と過剰生産恐慌の結合」(第25回党大会決議)ととらえました。それから3年余りが経過し、過剰生産恐慌が危機全体の土台であり、その比重をますます増しつつあることが、明瞭になっています。
世界経済危機にさいして、欧米諸国のとった対応は、金利の引き下げ、中央銀行による資金供給の量的緩和、大銀行への公的資金の投入など、金融的対応が中心でした。大銀行は救済され、一握りの富裕層は巨額の富を手にし、投機マネーは温存・強化されました。しかし、巨額の財政支出によって、信用不安、財政危機は一段と深刻になりました。
金融的対応に終始し、実体経済と国民生活の安定のための手を打たなかった国々では、失業率が増大し、消費は落ち込み、貧困と格差が広がりました。ILO(国際労働機関)とOECD(経済協力開発機構)がこの9月に提出した共同の報告書によりますと、2008年以来、主要20カ国・地域で2000万人が失業し、世界全体の失業者は2億人に達し、1930年代の世界大恐慌のピーク時とほとんど変わらない水準となった。さらに、現在の雇用情勢が続けば、2012年末までに2000万人が職を失い、この落ち込みは2015年までさらに悪化するとされています。ニューヨーク・ウォール街でおこり、世界に広がっている運動の背景には、貧困と格差の世界的規模での拡大があります。
マルクスへの注目の世界的な広がり
こうしたもとで、マルクスへの注目が世界的に広がっています。
著名なエコノミストでスイスの大手銀行UBSの上級経済顧問を務めるジョージ・マグナス氏は、8月に発表した「マルクスに世界経済を救うチャンスを」と題する論評で、「(世界経済危機を)いかに理解するか苦労している政治家は、……マルクスの著作を勉強するのが賢明だ」とのべ、『資本論』を引用しながら、今日の危機の根源に「過剰生産と過少消費との矛盾」があると指摘しました。さらに、マグナス氏は、この危機にどう対処するかについて、「マルクスの精神を現実に生かすため」には、雇用、所得、総需要を伸ばすことが必要だと提起しています。
つづいて、10月、クリントン政権時代に米国の経済諮問委員会や財務省のアドバイザーを務めた経済学者、ヌリエル・ルービニ・ニューヨーク大学教授は、資本主義が過剰生産、過少消費をもたらし、破滅的な危機を繰り返す可能性があるとしたマルクスの分析について、「正しかった」と繰り返しのべ、「格差に適切な対処をおこなわない経済モデルは、最終的には正当性を問われる危機に直面する」と警告しました。
世界の資本主義体制を支えてきた支配層のなかからも、今日の経済危機を理解し、それに対処しようとすれば、マルクスの理論に依拠することが必要だという声が、広くあがっていることは重要です。
党綱領と科学的社会主義の示す変革の展望を、大いに学び語ろう
今日の世界経済危機は、「巨大に発達した生産力を制御できないという資本主義の矛盾」(党綱領)の深刻なあらわれの一つであり、それは資本主義という体制の存続の是非そのものを根本から問うものとなっています。それはまた、資本主義という体制を乗り越える、未来社会への新しい探究を促さざるをえないでしょう。
資本主義陣営からのマルクスへの注目は、今日の世界経済危機の深さを反映した重要なものでありますが、もとより限界をもっています。それはその多くが、「マルクスは、資本主義の矛盾を分析するうえでは正しかったが、社会主義論では間違いだった」というものにとどまっていることです。その根底には、旧ソ連を社会主義そのものとする立場があります。
日本共産党は、自主独立の立場にたった、ソ連の覇権主義との長年の厳しいたたかいなどを通じて、1994年の第20回党大会での綱領一部改定において、崩壊した旧ソ連社会は社会主義とは無縁の社会だったという明確な結論を出しています。さらに2004年の第23回党大会で採択された新しい党綱領では、マルクス本来の未来社会論の豊かで魅力的な内容を全面的に明らかにし、そのなかでも旧ソ連社会は、「社会主義とは無縁な人間抑圧型の社会」と明記しています。党綱領の立場こそ、今日の資本主義の深刻な矛盾を乗り越える、科学的展望を指し示すものであります。
全党の同志のみなさん。いま、日本も世界も、大きな激動と変化のただなかにあります。党綱領と科学的社会主義の示す変革の展望を、大いに学び、国民のなかで未来への展望を語り合おうではありませんか。「党勢拡大大運動」を成功させ、強く大きな党をつくり、直面する総選挙で必ず躍進をかちとろうではありませんか。
以上をもって、幹部会を代表しての報告を終わります。