2011年12月13日(火)
主張
COP17の成果
新枠組みの成功に生かそう
南アフリカのダーバンで開かれていた国連気候変動枠組み条約の第17回締約国会議(COP17)は、地球温暖化の防止に向けた世界的な対策の議論で重要な成果をあげました。すべての国が参加する新たな枠組みづくりに向けた道筋を示すとともに、新枠組みの発効まで「空白」を生まないよう、京都議定書を継続することも決めました。数年来続いた先進国と新興国との深刻な対立を乗り越えて得られた成果を、新たな枠組みづくりの成功に向けて生かす真剣な努力が各国に求められています。
義務付けに抵抗した米
「反対は? ないものと認めます」。現地時間の金曜日に終わるはずの会議が閉幕したのは日曜日早朝でした。「決裂」との見方も出たなか、合意にこぎつけたのは、温暖化を強く懸念する島しょ国をはじめとする途上国や欧州連合(EU)、NGOに代表される国際社会の圧力でした。
新たな枠組みは、米国や中国を含むすべての国が参加する法的文書とされ、2015年に開かれるCOP21で採択し、20年に発効させると決まりました。温暖化対策の包括的な枠組みが初めてつくられることになります。
合意に至るまでには、世界で2番目の温室効果ガス排出国でありながら、温暖化対策に後ろ向きな米国の姿勢が大きな障害となりました。米国は新枠組みの出発時期を設定することに反対しただけでなく、米国が削減義務を負う法的拘束力のある枠組みづくりそのものにも抵抗し、対策を各国の自主性にまかせようとしました。その姿勢には強い批判があがり、孤立を深めた米国は弁明に追われました。米国が自らの後ろ向き姿勢を正当化するために引き合いに出す中国が、次期枠組みでの削減義務受け入れを示唆したことも、米国への圧力を強めました。
アフリカ諸国などの強い要求を受け、京都議定書の継続が決まったことも重要です。しかし、日本はロシアやカナダとともに不参加を表明しました。「京都」の名を冠した議定書を日本が投げ捨てた皮肉な事態は、野田佳彦政権の責任放棄の姿勢を世界に示しました。経団連の米倉弘昌会長は政府を「高く評価」し、財界の使い走りとしての野田政権の性格を浮き彫りにしています。世界の流れに背を向けた野田政権の姿勢は厳しく批判されなければなりません。
財界は費用がかかることを理由に、温暖化対策の義務付けに強く反対しています。米倉会長は、13年以降は自主的に対策に取り組むと表明しました。しかし、対策を財界の自主性に任せてきたことこそ、日本が京都議定書の現行目標も達成できないでいる原因です。温暖化の根源には、環境破壊を顧みない大企業の利潤第一主義があり、そこに焦点をあてた対策こそが必要です。
第2約束期間に参加を
温暖化の進行を示す現象が広がるなか、産業革命以降の気温上昇を「2度以内」に抑えるとの国際目標の実現は困難を増しています。今回の成果を出発点に、難題を乗り越えて実効ある枠組みをつくる必要があります。
そのためにも、日本は積極的な役割を担うべきです。新枠組みの発足を待つのではなく、京都議定書の第2約束期間に参加することがその第一歩です。