2011年12月29日(木)
主張
アセス評価書搬入
この“朝駆け”は非道極まる
沖縄県民が熟睡している真冬の未明4時すぎに、閉庁して警備員しかいない県庁庁舎へ、環境影響調査(アセスメント)評価書の入った段ボール箱を、多数の防衛省職員で一気に運び込む―この“朝駆け”は非道が過ぎます。
ことは米軍普天間基地の「移設」を理由に、名護市辺野古へ新基地を建設するための事前の手続きです。県民は圧倒的に反対しています。ただでさえ米軍基地が集中する沖縄へ新しい基地を押し付けているのに、政府・防衛省には県民の痛みがまったくわかっていません。評価書提出は撤回し、新基地建設は白紙にすべきです。
県民の痛みがわからない
だいたい、アメリカに「見るべき進展」を求められ、「年内提出」を約束したからといって、アセス評価書を年末ぎりぎりになって提出しようとすること自体、異常です。しかも防衛省職員が直接届けるのではなく宅配便を使って届ける姑息(こそく)なやり方をとって抗議され、今度は仕事納めの28日未明に暗闇にまぎれて庁舎に搬入するなど、許されることではありません。
条例では評価書を届けて担当課から受領の確認をもらわなければならないのに、搬入した箱には宛先もなく、長時間守衛室に積まれたままになったのは、事態の異常さを浮き彫りにしています。
評価書提出の時期をめぐり、「犯す前に犯すというか」と女性と沖縄県民を傷つける暴言をはいた防衛省の沖縄防衛局長(当時)は更迭されましたが、県民が寝静まっている未明を狙った評価書搬入は、防衛省がこの言葉通りの蛮行を働いたことを見せ付けています。
前代未聞ともいうべき異常事態は、沖縄に米軍の新基地を押し付けるという日米の合意が、どんなに県民の意思を踏みにじるものであり、道理のないものなのかを証明しています。もともと市街地のど真ん中に位置し、事故や米兵による犯罪も絶えず、アメリカでさえ「世界一危険」と認める普天間基地を撤去することは、十数年前からの日米の合意です。全国の米軍基地の74%が集中する沖縄の異常を解決するには普天間基地を即時・無条件で撤去すべきなのに、撤去するなら代わりに新基地をよこせと“居直り強盗”まがいの態度に出たのが日米政府です。
名護市辺野古への新基地建設に反対する沖縄県民はこの15年、建設のための杭(くい)1本打たせてきませんでした。2年半前の総選挙では普天間基地の「国外・県外」への移設を掲げ政権を交代した民主党が、普天間基地の県内「移設」を再確認し、新基地建設を推し進めてきたのは、まさにアメリカに追随し、国民との公約を裏切るものです。アメリカから進展を迫られ、異常な評価書搬入に及んだのは、この政権の対米追随姿勢をあらためて浮き彫りにしただけです。
新基地建設計画の撤回を
沖縄県は評価書を受け取ることになりましたが、評価書が押し付けられたからといって、それで新基地建設計画が進むわけではありません。新基地建設を進めるためには防衛省が公有水面の埋め立てを申請しなければなりませんが知事は認めないと発言しています。
県民が望まず、実現の見通しも立たない新基地建設計画は撤回すべきです。県民が切望するように普天間基地の無条件撤去を求めることこそ政府の責任です。