2011年12月30日(金)
きょうの潮流
細長い大船渡湾を見下ろす国道に沿い、更地が連なります。夕暮れ、バスの窓からぽつんと一軒、「餃子(ギョーザ)」の看板の店がみえました▼国道から少し山側のだだっ広い無人の野の、そこだけにともる明かり。仮設の店は、1畳ぐらいの広さでしょうか。あとで大船渡の町の人にきくと、津波の前は中華料理屋を営んでいた人の店でした▼町の人がいいます。「あの店の主人も、とにかく収入がないとやっていけませんからね。補償もなにもないんですよ」。やはり市民の間にも、小さな店の必死の思いが伝わっているようでした▼新聞に、「民主党 消費税13年8%、15年10%」の見出しがおどります。しかし、津波に壊されたどの町を訪ねても、「消費税の増税」などおよそ現実離れしていて、どこの国の話かと思えてきます▼野田首相の「官邸かわら版」を開けると、首相の語録を載せています。「被災地の皆さんに、心と体の温(ぬく)もりをお届けしたい」。しかし、首相自身の心が温かいなら、どれほど大増税が震災からの復興に冷水をあびせ、家や仕事を失った人々に新たな人災をもたらすか、分かるはずです▼消費税をなくす全国の会の事務局長を長く務めた杵渕(きねぶち)智子さんは、22年間にわたり毎月24日、東京の街角で署名を集めてきました。今月の体験は、「初めてのこと」でした。署名をいただいた20人のうち、なんと女性3人が目に涙をいっぱいためて訴えてきました。「民主党は一体なんなの!」「私たち、生きていちゃいけないの?」…。