2012年1月3日(火)
主張
経済危機下の世界
問われる地域協力のあり方
「リーマン・ショック」から3年余を経て、世界経済の危機が一段と深まっています。かつては途上国の問題だった債務危機に、欧州などの主要資本主義諸国が直面し、「世界は1930年代の大恐慌と同じ脅威に直面しかねない」(ラガルド国際通貨基金=IMF=専務理事)と厳しい見方が表明されています。
新しい国際秩序を
昨年12月、中南米で米国の干渉を排して、主権尊重と各国の平等に立ち、域内のすべての国々を統合した地域共同体が誕生しました。米国が長年“裏庭”とみなし干渉してきたこの地域で、自立的な政権が次々に生まれた結果もたらされた歴史的な動きです。
域内の多くの国は米国の干渉を打破するなかで経済主権を確保し、多国籍企業に奉仕する弱肉強食の新自由主義を克服しながら、資源を国民生活の向上に活用してきました。社会主義への志向をもつ政権も少なくありません。
この共同体が、世界的危機のなかで、各国の平等に立つ公正な成長や持続可能な発展などの理念を掲げて協力を推進していることは、新たな国際経済秩序をめざすものとして注目されます。それは世界的危機の域内への波及を緩和するだけでなく、危機への対処を考えるうえでも示唆的です。
「グローバル化」の名の下に押し付けられてきた新自由主義は、各国経済を多国籍企業と国際金融資本の利益に奉仕する道具に変えるものです。新自由主義に反対して、各国の経済主権を確立し、平等・公平を基礎とした新しい国際経済秩序をめざすことが、危機を克服するうえでもきわめて重要になっています。
ユーロ圏でも統合のあり方が問われています。投機集団が債務を抱える国を狙い撃ちするなか、欧州連合(EU)は各国の財政規律を強化し、違反した国に自動的に制裁を科す措置を盛り込もうとしています。生産性を引き上げようと、「構造改革」を強調する声もあります。
増税をはじめ社会保障や教育の切り下げなどの緊縮政策は、大多数の国民生活を直撃し、貧困と格差を一段と広げています。実体経済をますます掘り崩し、財政危機がさらに進行する“負の連鎖”も指摘されています。
経済と財政の再建を展望するうえで、投機に対する規制を強化するとともに、国民生活の安定に力を入れる必要があります。
昨年は「私たちは99%だ」を合言葉に、一握りの富裕層による富の独占に反対する叫びが世界に広がりました。日本でも、貧困と格差に反対する声が強まり、新たな経済秩序を求める力になることが期待されます。
TPPはゆがみ拡大
野田佳彦政権は、環太平洋連携協定(TPP)参加に向け米国との協議を年明けから本格化させます。TPPは各国の平等を基礎にした地域協力とは逆に、米国を“盟主”とした新自由主義に基づく経済圏づくりです。経済主権を失い、多国籍企業に奉仕する経済をつくることは、財界本位で「ルールなき資本主義」といわれる日本経済のゆがみを強め、格差をひどくするものです。
TPPへの参加を阻止することは、日本と世界の経済のゆがみをただす大きな一歩となります。