2012年1月6日(金)
「八ツ場」受注の天下り法人
ずさん業務でも「優良」
報告書ミスだらけ 各地で指名停止
本紙と日本共産党の塩川鉄也衆院議員の調査で明らかになった八ツ場(やんば)ダム関連の業務を天下り法人がごっそり受注する実態。発注者と受注者の“身内”のようななれあいの中で、ずさんな業務がおこなわれていたことがわかりました。(矢野昌弘)
社長をはじめ取締役4人が国土交通省OBという天下り企業のセントラルコンサルタント(本社、東京都中央区)は、八ツ場ダム関連で、この3年半で11件、2億4500万円余の業務を請け負いました。
同社の住吉幸彦会長は、国交省土木研究所の元所長です。馬場直俊社長は同省東北地方整備局の元局長です。OBが一人退職すると、次のOBが入社するという“受け皿”になっています。
一方で同社は、請け負った業務で計算ミスや設計ミスを連発。全国の発注機関から、この1年余りで受けた指名停止処分は、3件もあります。
こうしたミスは、八ツ場ダム事業でも例外ではありません。
同社はダム水没予定地の住民移転先の安全性を調べる「代替地検討業務」を2010年8月上旬に随意契約で受注。7月中旬に東日本高速道路株式会社の指名停止処分(1カ月)が終わったばかりなのに、ここでもデータの入力間違いをして、計算ミス。代替地の耐震性について当初、「安全」という結果が一転。代替地の一部は震度6から7程度で崩壊することが判明しました。
事務所長賞受賞
こんなミスを多発する同社ですが、同ダム工事事務所から08年に「事務所長賞」を受賞しています。
「優良業務」として表彰されたのは同社作成の「H18川原湯地区まちづくり計画検討業務」です。
その報告書を見ると、誤字脱字だらけ。例えば、「応桑」という地層の名前を「大桑」と書き間違えています。また資料となる地層断面図では、作成された日付が抜け落ちたものが多くありました。
「工事事務所もろくに読まなかった証拠だ」と話すのは、拓殖大講師の竹本弘幸さん。報告書のずさんさに驚いたといいます。
「こんな報告書を表彰する一方、住民の安全にかかわるミスをしながら、なんら処分をしなかった点をみれば、発注側と受注側になれあいがあるといわれても仕方ない」
本紙の取材にセントラルコンサルタントは「(報告書のミスについては)国交省が一括して答えることになっており、答えられない。(国交省OBについては)正式な手続きを経て採用しており、受注に有利に働くことはない」と回答。
同ダム工事事務所は「対応できるものが現在いない」としています。
再開先にありき
八ツ場ダム問題を追及してきた日本共産党の伊藤祐司群馬県議は「官僚も天下りコンサルも御用学者も住民の安全などそっちのけで“再開先にありき”の数合わせの検証やずさんな検証をすすめたことは明らかです。恥ずかしくないのかと言いたい。次世代にこれほどひどい負の遺産を残すわけにはいきません」と話します。
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