2012年1月24日(火)
主張
経団連春闘方針
内需拡大への自覚はないのか
ベースアップの実施は「論外」、定期昇給の「延期・凍結」もありうる、非正規雇用の労働者だけの処遇改善は「不適当」、最低賃金の引き上げにも反対―。財界の春闘方針と呼ばれる、経団連経営労働政策委員会(経労委)の今年の報告は例年にも増して強い調子で賃上げの抑制を打ち出しています。
報告は、2012年は「企業にとって生き残りをかけた正念場の年」だといいます。財界は、企業さえ生き残れば労働者や国民の生活も日本の経済も、どうなってもいいのか。財界には日本経済の立て直しに不可欠な、国内需要を拡大する立場も自覚もありません。
国民生活を再建してこそ
「失われた20年」といわれるほど、長期にわたる日本経済の停滞が、国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費をはじめ国内需要の不振に原因があることは、政府や財界でさえ認めざるをえない経済の常識です。個人消費が不振なのは労働者の賃金が大半を占める雇用者報酬が伸び悩んでいるからであり、労働者の賃金を引き上げ、消費をもり立て、内需主導で経済を立て直すことが急いで求められています。
ところが経団連の経労委報告は、所得を増やしても貯蓄に回るだけで、「所得増加は消費につながらない」とあべこべに描いて、賃金の抑制を合理化しています。労働者世帯が消費を抑えても貯蓄に回しているのは、収入が増えず、社会保障も改悪されて将来不安が強まっているからです。収入の少ない世帯は、貯蓄を取り崩してもおいつかず、貯蓄が急速に減っているのが現実です。財界は、国民生活の苦しさに目を向けたことがあるのでしょうか。
経労委報告は、「最大の課題はいかに企業を存続させるか」だといって、企業の国際競争力と収益力を高めることが日本経済のためになるといいます。しかし大企業の収益のためにリストラや賃金抑制を押し付け、内需を冷え込ませた結果が経済の低迷です。内需を後回しにして国際競争力を強化し、輸出を増やしてきた結果が異常な円高です。財界には、間違った「成長戦略」で、国民の暮らしと経済を破綻させたことへの反省がまったくありません。
日本の財界・大企業が、企業だけが生き残ればいいと突き進んできた結果、一部の大企業だけがもうけを増やし内部留保をため込んだ一方、年収200万円未満の「ワーキングプア」(働く貧困層)が労働者4人に1人以上にのぼるような「貧困と格差」の拡大です。財界本位のやり方が国民の利益と両立しないことは、もはや明白です。
大企業の内部留保還元を
大企業にその経済力にふさわしい役割を果たさせれば、国民生活もよくなり経済も回復します。資本金10億円以上の大企業がため込んだ内部留保だけでも260兆円もあります。労働運動総合研究所(労働総研)の試算では、企業が内部留保の4%弱を活用するだけで、月1万円の賃上げやサービス残業根絶など雇用条件の改善が実現でき、新規雇用が466万人増え、内需が拡大し、税収増も実現できます。
財界・大企業の横暴から暮らしを守る運動が求められます。民主党政権になっても変わらない、財界・大企業の異常な支配を打ち破ることが急務です。