2012年3月18日(日)
北朝鮮「ロケット」発射計画 世界が憂慮
ロシア・中国も「懸念」
北朝鮮が、金日成(キム・イルソン)主席の生誕100周年(4月15日)にあわせ、「地球観測衛星『光明星3号』を運搬ロケット『銀河3号』で打ち上げる」と発表した問題で憂慮の声が高まっています。衛星打ち上げに仮装した長距離弾道ミサイルの発射実験ではないかとの疑念がもたれているためです。 (外信部=中村圭吾、北京=小寺松雄)
1990年代に長距離弾道ミサイルの開発に着手した北朝鮮は93年、日本海に向けてノドンミサイルの発射実験を実施。以来、たびたび弾道ミサイルを発射してきました。98年には、長距離ミサイル「テポドン1号」が日本上空を飛び越えて三陸沖の太平洋に落下。2006年には「テポドン2号」を含む7発の弾道ミサイルを発射しました。
北朝鮮は98年のミサイル発射について、人工衛星「光明星1号」を打ち上げたと主張。09年4月にも「運搬ロケット『銀河2号』で人工衛星『光明星2号』を周回軌道にのせることに成功した」と発表しましたが、日本政府などは、テポドン2号かその改良型の発射だったと結論づけました。
国連の安全保障理事会は09年6月、北朝鮮が2度目の核実験(同年5月)を実施したことを受け、北朝鮮に核開発・ミサイル計画の停止を求める決議1874を採択。北朝鮮に対し、「弾道ミサイル技術を使用した、いかなる発射も実施しない」ことを求めています。
国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は16日、北朝鮮の「打ち上げ」計画が、この安保理決議に違反するとして中止を要求。ロシアのラブロフ外相も「深刻な懸念を引き起こす」とする声明を発表。「北朝鮮は安保理決議に背いてはならない」と警告しました。
中国の張志軍外務次官は16日、北朝鮮の池在竜(チ・ジェリョン)駐中国大使を呼び、懸念の念を伝えました。
張次官は、「朝鮮半島の平和と安定を守ることは、関係国の共同責任であり、共通の利益に合致する」と指摘。「関係国が冷静で自制的な姿勢を貫き、事態をエスカレートさせて情勢を複雑化しないよう希望する」と表明しました。
米国のヌーランド報道官は16日、北朝鮮が「ミサイル発射」を強行すれば、ウラン濃縮活動の停止と栄養食品支援についての2月の米朝合意が「破棄される」と警告。2月の協議では、「いかなる衛星打ち上げも合意破棄とみなす」という立場を明確に伝えていたことを明らかにしました。