2012年3月21日(水)
放射性物質食品新基準、検査機器足りない
「休業しろというのか」 被災3県焦燥
4月1日から食品に含まれる放射性物質に「新基準値」が導入されます。「一般食品」の新基準値は1キロあたり100ベクレル(これまでの暫定基準値は500ベクレル)。東京電力福島第1原発事故で広がった放射能汚染から食の安全、安心をどう守るのか―。本紙は被災した東北3県(岩手・宮城・福島県)が、放射性物質検査機器を、3月末時点で何台保有予定かを調査しました(表参照)。その結果、納期が間に合わない、改良が必要などの問題が浮かび上がりました。 (遠藤寿人)
検査機器は高価(約1500万円)で高精度な「ゲルマニウム半導体検出器」(Ge)と、安価(約60万円)で簡易測定ができる「NaIシンチレーションスペクトロメータ」(NaI)などがあります。
宮城県は東北電力女川原発近くの県原発センターにあった4台(Ge)の検査機器を津波で失いました。
3県ともこの1年で保有、発注台数を増やしています。しかし、発注しても納期が間に合わない事態が起きていて、岩手県では「完納は6月ごろになる」といいます。
簡易型検査機器を自治体や食品会社に販売する「応用光研工業」(東京都福生市)は「納期は最も早くて3カ月。とにかく昨年の9月から生産が追いつかない」といいます。
宮城県では五つの地方卸売市場に、簡易型検査機器各1台を設置しています。
石巻市の漁業関係者は「1台で間に合うのか…。新しい検査機器が来るまで休業しろというのか。だれが補償してくれるんだ。漁師は1回、陸に上がると海に戻れなくなる。地域を捨てることになる」といいます。
同市の水産関係者は「100ベクレルは世界的にも厳しい。でも守らないと…。汚染魚が出ればその海域全部が、日本の水産全部だめになる可能性だってある」と不安を口にします。
同県女川町地方卸売市場は、町が検査のための職員3人を確保しイサダ(小エビ)や小魚などを検査。結果を町のホームページに公開しています。
同県南三陸町地方卸売市場では町が検査員2人を雇用。検査結果は公表していません。
二つの市場の簡易検査機器は精度が低く、新基準値にあわせるには改良が必要です。
検査結果の公表も市場によってばらばら。国の責任による早急な検査体制の整備が求められています。
体制充実を
日本共産党の三浦一敏宮城県議(石巻・牡鹿区)の話 200種ほどの大衆魚が取れるのが石巻の特徴です。でもいい値がつかず、すべてがパーになることもありえます。以前は、福島県相馬沖からトロールで引いたが、東京電力の原発事故後は金華山沖から狭いエリアで取らざるを得ない。漁師をとりまく環境は本当に厳しくなっています。風評被害はすでに始まっています。日本共産党は100ベクレル測れる検査機器を増やし、数値を公表するとともに、測定スタッフを増やすよう要望しています。
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