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2012年3月26日(月)

大阪・橋下市長 保育面積切り下げ狙う

市民ら「詰め込みは命脅かす」

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表 保育所の面積基準

 大阪市や東京都で、「地域主権」の名の下に、保育所の子ども1人当たりの面積基準が大幅に引き下げられようとしています。大阪市では橋下徹市長が、国の基準を大きく下回る基準を条例案として3月議会に提出。27日の本会議での成立を狙っており、市民の反対の声が強まっています。

 大阪市はこれまで「0歳児5平方メートル、1歳児3・3平方メートル」を基準としてきました。ところが橋下市長は、この基準を0〜5歳まですべて、1人当たり1・65平方メートル(畳1枚に相当)に引き下げようとしています。

 これは国が従来、最低基準としてきた「0〜1歳児は3・3平方メートル、2歳以上は1・98平方メートル」を大幅に下回るもの。「子どもの詰め込みは命を脅かす」と市民から不安の声が上がっています。

東京都でも狙う

 東京都でも、0〜1歳児の面積基準を3・3平方メートルから2・5平方メートルに引き下げる条例案が22日の都議会厚生委員会で可決され、29日の本会議での成立が狙われています。

 児童福祉施設などの最低基準は昨年4月、民主党政権の「地域主権改革」一括法で撤廃され、地方の条例に丸投げされました。居室面積や人員配置については従来の最低基準に「従う」とされましたが、待機児童の多い35自治体では、3年間の特例措置として基準以下への引き下げを認めました。今回の大阪市や東京都の条例案は、この特例措置によるものです。

 大阪市は、条例が成立すれば4月1日からも実施する構えです。日本共産党市議団は、条例案の撤回を迫っていますが、橋下市長は、「(国から地方に)与えられた裁量を使うのは当たり前」などと開き直っています。

党「撤回へ全力」

 日本共産党の井上ひろし市議は、「条例案は、もともと劣悪な国基準をさらに引き下げ、子どもの命を危険にさらすもので断じて許されないものです。安全を度外視した条例案には、市民の圧倒的多数が反対の声を寄せています。最後まで、撤回させるために市民のみなさんと全力をあげます」と語っています。


解説

最低基準撤廃で劣悪環境へ

図 海外に比べ劣悪な日本の基準

 大阪市の橋下徹市長が狙う、認可保育所の子ども1人当たりの面積1・65平方メートルは畳1枚分。0歳児クラスなら6畳間にロッカーや遊具などを置いたうえ、ねんねの子、ハイハイの子、歩き始める子が交じる乳幼児6人と保育士2人が一日をすごすことになります。子どもの命と成長を脅かす暴挙です。

 小泉自公政権下の2001年度以降、“待機児童解消”の名の下に、認可保育所への子どもの詰め込みが強力にすすめられた結果、死亡事故が急増しています。

 保育施設で子どもを亡くした親や弁護士などでつくる「赤ちゃんの急死を考える会」の調査(09年)では、00年度までの40年間に15件だった認可保育所での死亡事故が、01年度以降の8年間で22件と大幅に増えています。厚労省も同年、事故の増加を認めています。

 10年に愛知県碧南市の認可保育所で起きた1歳児の死亡事故では、市が国の基準を低く解釈して1人当たり1・65平方メートルに詰め込んでいました。そのような劣悪な環境では子どもの命が保障されません。

 大阪市の条例案は「地域主権」の名で民主党政権が最低基準を撤廃したことが、子どもの保育環境を劣悪にすることをまざまざと示しています。

 全国どこにいても保障されるべき基準が保障されなくなりかねない事態は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とうたう日本国憲法25条の精神を否定するものです。民主党政権の責任は重大です。

 大阪市の条例案には、現在、国の基準に市が独自の上乗せをしている人員配置基準を国基準に引き下げることも盛り込まれています。「地方分権」などといい「国にがんじがらめに抑えられている」という橋下市長の狙いが、基準引き下げを自由にやりたいだけでしかないことを示しています。

 子どもの命を危険にさらす詰め込みをやめ、認可保育所を抜本増設する計画を正面に位置付け予算をつけることこそ、自治体の役割です。

 (鎌塚由美)


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