2012年4月3日(火)
主張
プラハ演説3年
核兵器廃絶への展望開くには
「核兵器のない世界」をめざすと、オバマ米大統領がプラハで演説してから5日で3年になります。最大の核兵器保有国である米国が廃絶を国家目標としたことは、人類の悲願というべき核兵器の廃絶への新たな展望を開くものと歓迎されました。
しかしいま、核兵器廃絶への道を現実にするには、廃絶そのものに向けた国際交渉にとりかかることが不可欠だということが、あらためて明らかになっています。
「抑止力」論が障害
オバマ大統領は先週、核安全保障サミットが開かれたソウルで演説し、1年余り前に発効したロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)を核軍備削減の「重要な成果」だと強調しました。同時に、同条約のもとで米国が配備する1500発以上の戦略核兵器は「必要な数を上回っている」と、核兵器の削減が遅々として進んでいないことも認めています。
新STARTのような軍備管理条約が結ばれるのは米政権の1期(4年)で一つといいます。オバマ大統領が今年11月に再選され、ロシアと新たな交渉が行われるとしても、大幅削減も難しいのが現実です。まして、それが「核のない世界」につながる保証はありません。オバマ大統領自身プラハで、核兵器廃絶の実現は「私が生きているうちには無理だろう」と悲観的に述べています。
日本共産党の志位和夫委員長は3年前、オバマ大統領に書簡を送り、プラハ演説に歓迎を表明しながら、廃絶を将来へと先送りすることは「同意できない」と主張しました。「核兵器廃絶のための国際条約の締結をめざして、国際交渉を開始するイニシアチブを発揮する」ようにと、同大統領に求めました。今日の状況は指摘の正当さを浮き彫りにしています。
オバマ大統領は、核兵器がある限り米国と同盟諸国の防衛を保証する効果的な核軍備を維持すると述べています。財政難で軍事費の大幅削減を迫られているにもかかわらず、オバマ政権は2013年度予算案で、核兵器関連予算を前年度比5%増と膨らませています。増額分には大陸間弾道弾に搭載される核弾頭の使用延長なども含まれ、包括的核実験禁止条約(CTBT)発効後にも核兵器開発を続けられる未臨界核実験など核兵器技術を高めています。
「抑止力」としての核兵器の有用性を認める立場は、核兵器廃絶に足を踏み出すうえで重大な障害であり、克服が求められます。「核抑止」とは核兵器で反撃するという核脅迫にほかなりません。唯一の被爆国である日本の「防衛」が、米国の核軍備正当化に使われていることを見過ごすわけにはいきません。日本政府は米国による「核の傘」を拒否すべきです。
廃絶の国際交渉を
ソウルでの首脳会議の中心テーマは核兵器や核物質をテロの脅威から守ることでした。そこでの演説で、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が「核の脅威を除去する最良の道は核兵器の廃絶だ」と指摘したことは重要です。
今月末には、2015年の次回核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた第1回準備委員会がウィーンで開かれます。今度こそ核兵器廃絶の国際交渉に足を踏み出すべきです。廃絶をめざす国際世論を高める必要があります。