2012年4月14日(土)
主張
北朝鮮「ロケット」発射
孤立して生きる道はない
北朝鮮が13日、事実上の長距離弾道ミサイル発射実験となる「ロケット」発射を強行しました。「ロケット」は発射直後に分解、落下し、失敗に終わりました。
失敗とはいえ、発射は2009年に全会一致で採択された国連安保理決議1874に反しています。しかも、朝鮮半島の非核化と平和をめざす6カ国協議に参加する日韓米中ロをはじめ、世界各国が北朝鮮に自制を強く求めてきたなかで、国際世論に挑戦するように行われました。厳しく批判されるべきものです。
発射は安保理決議違反
北朝鮮は今回の発射を「実用衛星」を打ち上げるための「ロケット」であり、発射は当然の権利だとして正当化してきました。しかし、安保理決議1874は「北朝鮮に対し、いかなる核実験または弾道ミサイル技術を使用した発射もこれ以上実施しないことを要求する」としています。たとえ「ロケット」であっても、弾道ミサイルと共通の技術が使われており、北朝鮮の主張は通用しません。
重要なことは、安保理決議が北朝鮮の核兵器開発と弾道ミサイル技術開発を、一体のものとして禁止していることです。北朝鮮は長距離弾道ミサイルをこれまでに3度発射しています。06年の発射後、安保理は弾道ミサイルを発射しないよう要求する決議を採択しました。それでも北朝鮮は09年に発射を強行し、これを「人工衛星」だと強弁しました。そこで、決議1874では「ロケット」だという言い逃れを許さないものとなっています。
多段ロケット技術は核兵器の運搬手段にも使われ、ロケットと弾道ミサイルの違いは突き詰めれば弾頭が人工衛星か兵器かという点にあります。北朝鮮が核兵器開発を放棄していないもとで、長距離弾道ミサイル技術を獲得することは、東アジアと世界に緊張をもたらす行為であり、「ロケット」であっても認められません。
06年と09年の弾道ミサイル発射では、北朝鮮はいずれもその後に地下核実験を強行しました。弾道ミサイル発射への国際的な批判を、核実験強行のテコに使った格好です。北朝鮮の核武装は大きな緊張をもたらし、世界の平和と安全を掘り崩すものです。
再度の核実験は厳重に慎むべきです。国際社会の一員として、北朝鮮は核兵器開発を完全に放棄すべきです。北朝鮮が宇宙の平和利用に乗り出すというなら、核兵器の放棄こそが世界の理解を得る最低限の前提です。
北朝鮮はいま、指導部が交代するという大きな変化のさなかにあります。新たな条件があるにもかかわらず、北朝鮮が今後も国際的に孤立を深める道を歩むのかどうかを、世界が注目しています。どの国であれ、世界から孤立しながら繁栄することは望めません。北朝鮮は05年、6カ国協議の場で、核兵器・核計画の放棄を約束しました。北朝鮮はこの合意に立ち返り、約束を実行することで国際社会に復帰すべきです。
情勢の悪化を防ぐ
国際社会にとっていま大切なことは、非軍事的・外交的手段で一致した行動をとり、情勢のさらなる悪化を防ぐことです。そのうえで、北朝鮮の核問題を解決するために外交努力をいっそう強めることが求められます。