2012年5月4日(金)
きょうの潮流
一歩入ると、のびのびと育った木々が枝を広げる緑の世界にすっぽり包み込まれました。コナラ、イヌシデ、ケヤキ、アカマツ…。木の下に、メーデー会場の公園で出会ったばかりのキンランも咲いて▼東京都杉並区の三井の森公園を訪れました。遊歩道を5分ほどで巡るうちに、体まで初夏の緑に染まるようなすがすがしい気分を味わいました。もとは、広大な「三井グランド」の一角だった森です▼子どもの遊び場。都市に暮らす人々のいこいの場。生き物たちの聖地。東京を代表する緑地だった「三井グランド」のほとんどは、いま、マンション群に姿を変えています▼先ごろ、開発に対して裁判でたたかっている「三井グランドと森を守る会」の人たちが、とうとうつきとめました。東京の緑地が乱開発で消えてゆく、そもそもの始まりを物語る記録です。国立公文書館の蔵の中に眠っていました▼それによれば―。1969年。新しい都市計画法の施行に先立ち、国は、東京の都市計画に定められている「緑地地域」をなくすようあたふたと審議会に諮る。審議会で激しい議論が交わされ、「(緑地地域を残すため)当局は闘わなければならない」と抵抗する人もいた。しかし、圧力に屈してゆく▼圧力をかけていたのは、新しい法律に「緑地地域」が吸収されて残れば開発のじゃまと考える、業界や地主、政・官界です。「みどりの日」はあっても、都市の街づくりに「緑地地域」はない現実。「守る会」のような人々が、緑の守り手です。