2012年5月10日(木)
イスラエルで大連立
イラン核開発への態勢強化か
【カイロ=小泉大介】イスラエルのネタニヤフ首相は8日の会見で、自身が党首を務めるリクード主導の右派連立与党と最大野党・中道カディマとの大連立政権樹立を発表しました。首相は、総選挙を今年9月に前倒し実施すると7日に決めた直後に一転して大連立に合意。その理由として「国家の安定」を挙げましたが、メディアなどでは、イラン核開発をめぐる攻撃体制強化の可能性が指摘されています。
今回の大連立により、与党は国会定数120のうち94議席を占め、総選挙は当初予定の来年10月まで実施されない方向となりました。2009年総選挙でリクードより一つ多い28議席を獲得しながら連立政権づくりに失敗したカディマのモファズ党首は8日、「(野党でいたことは)歴史的な誤りだった」と述べました。
ネタニヤフ首相は会見で、大連立政権が直面する問題について、「もちろん、最重要課題の一つはイランだ」と断言しました。首相は、イランの核開発阻止を口実に、イスラエル単独で先制攻撃を行うことも辞さない立場。一方、モファズ氏は、米国などとの協調を重視し単独攻撃に慎重姿勢を取ってきました。ネタニヤフ氏は、モファズ氏と今後、真剣な協議を行っていくと表明しました。
この問題についてイスラエルの英字紙エルサレム・ポスト8日付(電子版)は、「首相はモファズ氏が連立入り後に考えを変えると信じている可能性がある」と指摘。有力紙ハーレツも「連立はイスラエルによるイラン攻撃に道を開くものだ」との見出しで報じました。
一方、ネタニヤフ首相は、過去2年近く協議が中断したままとなっているパレスチナとの和平について、「責任ある和平プロセス」を追求すると強調。モファズ氏は「私には考えがある」と述べ、最終和平合意に至る前に、国境と治安に関する暫定合意を結ぶ意向を示しました。
パレスチナ自治政府のアッバス議長は8日の声明で、「われわれはイスラエル政府に対し、連立の拡大を、和平合意達成のスピードアップの機会とするよう求める」「それには、占領地におけるすべての入植活動の停止が必要だ」と表明しました。