2012年5月13日(日)
日米安保条約をなくしたらどういう展望が開かれるか
志位委員長が記念講演
全国革新懇総会
全国革新懇(平和・民主・革新の日本をめざす全国の会)は12日、第32回総会を東京都新宿区の日本青年館で開きました。日本共産党の志位和夫委員長(革新懇代表世話人)が「日米安保条約をなくしたらどういう展望が開かれるか」と題して記念講演を行いました。
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記念講演で志位氏は、「今年は日米安保条約発効60年の節目の年であり、安保廃棄の課題は革新懇運動にとって原点ともいえる大問題です」と切り出し、安保条約をなくした場合の展望を豊かに語りました。
「アメリカいいなりでいいか」の声噴出
志位氏は、発効から60年を経て異常な対米従属の体制が行き詰まりを深め、「こんなアメリカいいなりの国でいいのか」という声が保守の人びとも含めて広範な国民から噴き出していると指摘。
(1)沖縄米軍基地問題の矛盾が限界点を超え、直近の世論調査でも「安保条約破棄」と「平和友好条約に」が70・9%に達するなど、県民の中で日米安保こそ苦難の根源だという認識が広がっている(2)日米共同声明で「動的防衛協力」の名で集団的自衛権の行使へ重大な一歩を踏み出すなど、安保条約と憲法がいよいよ両立しえなくなっている(3)環太平洋連携協定(TPP)参加で日本の経済主権が根底から損なわれる危機に直面し、反対の共同が広がっている(4)国際政治における日本外交の地位が著しく低下し、存在感がなくなっている―ことを詳しく語りました。
この中で、NHKの世論調査(2010年)で、「これからの安全保障体制」では“アジア諸国との外交によって安全保障をはかる”が67%、「中国への対応」でも“外交によって対応する”が80%に達したことを紹介。国民は単純な「日米同盟基軸」論や「軍事的抑止力」論を乗り越えつつあるとし、「安保条約をこのまま続けていいのか」を問う国民的議論を起こすことを呼びかけました。
安保条約をなくしたら、三つの展望開く
志位氏は、日米安保条約をなくせば三つの点で展望が開かれると語りました。
基地の重圧から一挙に解放
第一は、米軍基地の重圧から日本国民が一挙に解放されることです。志位氏は、(1)安保条約のもとでは基地一つ動かすにも日米合意が必要だが、通告によって安保条約をなくせば、米軍基地をすべてなくすことができる(2)アメリカの引き起こす戦争の根拠地から抜け出すことができる(3)在日米軍のために充てていた血税(年間約7000億円)と土地(総評価額約14兆円)を、国民の暮らしのために使うことができる―と指摘しました。
憲法9条を生かした“平和の発信地”に
第二の展望は、日本が憲法9条を生かした“平和の発信地”になることです。志位氏は、「安保条約をなくしてこそ、日本は軍縮への転換のイニシアチブを本格的に発揮できます」と提起しました。東アジアの緊張の根源は、米国の新たな覇権主義の戦略にありますが、一方で中国も世界第2位へ軍事力を増大させています。日本が米軍基地をなくしてこそ、中国や東アジア諸国に軍縮への転換を本格的に提起できます。
軍事に頼らない “平和的安全保障” を
では、安保廃棄後の安全保障をどうするか。志位氏は“平和的安全保障”という考え方を提唱しました。これは、異なる体制、異なる文明が存在する東アジアで、軍事力に頼らず、対話と信頼醸成、紛争の平和的解決の徹底など外交によって安全保障を追求する道です。
志位氏は「理想論でなく、東南アジアに先駆的実例があります」とのべ、ASEAN(東南アジア諸国連合)が発展させてきた四つの枠組みを紹介。北東アジアにもこの平和の地域共同体を広げる条件はあるとのべ、「6カ国協議」の枠組みを発展させる外交努力を力説しました。
また、安保条約から抜け出せば、「核兵器のない世界」へのイニシアチブも発揮でき、平和外交の力で世界平和に貢献できると強調しました。
経済主権を確立する確かな保障
第三の展望は、日本の経済主権を確立する確かな保障がつくられることです。
志位氏は、▽農産物の輸入自由化▽濃縮ウランと原子炉の押し付けによる「原発列島」化▽金融自由化と超低金利政策による国民の富の吸い上げ▽労働の規制緩和の押し付け―など、アメリカいいなりで日本経済がゆがめられてきたことを告発。根底には安保条約第2条の規定があり、「安保条約をなくせば、日本経済は従属のかせから解放されて、自主的発展の道を進むことができます」と強調しました。
志位氏は、安保条約に代えて日米友好条約を結べばアメリカとの関係は対等・平等になり、真の友好を築けると指摘。また、138カ国54億人(オブザーバーを含む)が参加する巨大な潮流として発展している非同盟諸国首脳会議に合流し、「世界の進歩への大きな貢献の道を開く」ことを訴えました。
東アジアに平和的環境へ緊急の外交努力を
志位氏は、安保廃棄をめざすとりくみとともに、東アジアの平和的環境をつくる緊急の外交努力が重要だと語りました。
(1)軍事的対応の悪循環をきびしくしりぞけ、北朝鮮の違法行為をやめさせ、国際社会の責任ある一員としていく上で、国際社会が一致して外交的解決に徹する態度を堅持する(2)日中両国、米中両国が軍事力で対抗する思考から脱却し、軍拡から軍縮に転じることを強く求める(3)領土をめぐる紛争問題の解決にあたっては、歴史的事実と国際法に基づく冷静な解決に徹する(4)日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配で、未解決の問題をすみやかに解決し、歴史を偽造する逆流の台頭を許さない―ことの重要性を強調しました。
安保条約なくす国民の多数派づくりを
最後に志位氏は、安保条約をなくすためには、それを求める国民的多数派をつくることが必要だと指摘。日米軍事同盟の異常を一つひとつただすとともに、「安保をなくしたらどういう展望が開かれるか」を、広く国民のものにしていくとりくみを進めようと呼びかけました。「力を合わせ、本当の独立国といえる、平和・中立の新しい日本をつくりましょう」と訴えました。