2012年5月16日(水)
奨学金の会 教育無償化へ要請
国際人権規約留保撤回を
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国民のための奨学金制度の拡充をめざし、無償教育をすすめる会(奨学金の会)は14日、外務省を訪れ、玄葉光一郎外務大臣あての要請書を手渡しました。中等・高等教育の漸進的無償化を定めた、国際人権A規約の13条2項(b)(c)(別項)の留保を早期に撤回することなどを求めました。
教育無償を求める運動と世論に押され、政府は同条項の留保を撤回する方針を表明しています。政府は1979年に同規約を批准しておきながら、「奨学金制度、授業料減免制度の存在」などを理由に留保しつづけてきました。規約批准160カ国のうち同条項を留保しているのは日本とマダガスカルのみです。
要請には、三輪定宣会長(千葉大学名誉教授)ら6人が参加。三輪会長は、経済的理由から退学に追い込まれる学生や、給付制奨学金がないため卒業後に返済に苦しむ利用者の実態などをあげ、「学費が高くて奨学金が貧しいのでは、国際社会に対して恥ずかしい」と批判しました。
参加者たちは、「具体的にどのように留保を撤回するのか政府の姿勢が見えてこない」と強調しました。
「いつまでに撤回できるかはいえない」と応じる担当者に対し、日本学生支援機構労働組合の藤井和子委員長は「経済的な負担が個人や学生に借金となってかからないよう、留保撤回をすすめてほしい」と迫りました。
A規約13条2項(b)(c)
A規約13条2項(b)(c)は次のとおり。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c )高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。
国際人権A規約 1948年の世界人権宣言を基に条約化し、人権の国際的保護を定めたものです。66年に国連総会で採択され、76年に発効されました。A規約は「社会権」を、B規約は「自由権」を、それぞれ規定しています。