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2012年5月25日(金)

消費税「輸出戻し税」の実態

身銭切る下請け 大企業へは還付

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 消費税増税問題にかかわって、「輸出戻し税」が話題になっています。問題点を考えます。(清水渡)


 付加価値税など消費税と同様の税を導入している国は、日本以外にもあります。消費税を「輸出品に課税しない」ことが国際的なルールです。輸出品に課税しないのは、海外の消費者から日本の消費税をとることはできないからです。

 輸出に消費税を課さない場合、輸出業者は仕入れの際に払った消費税分が「損」になってしまいます。その分を税務署が輸出業者に還付する仕組みを、俗に「輸出戻し税」と呼んでいます。ですから、「輸出戻し税」の還付は、大企業に限らず、輸出を行うすべての業者が受けることができます。

仕入れ税額控除

 法律上、消費税を「負担する」ことになっているのは消費者です。一方、実際に税務署に「納める」のは事業者です。「売り上げにかかった消費税」と「仕入れにかかった消費税」の差額を納税する仕組みです。

 たとえば、ある企業が80億円で原材料や部品などを仕入れて製品に加工し、その製品を100億円で販売した場合を想定します。消費税率が5%であれば、その企業は仕入れの際、代金の80億円に消費税分を加えて84億円を取引先に払ったということです。一方、販売する際には、代金の100億円に消費税分を加えた105億円を受け取ります。この企業は「売り上げにかかった消費税」=5億円と「仕入れにかかった消費税」=4億円の差額、1億円を税務署に納めます。

 この仕組みは、「仕入れ税額控除」と呼ばれます。

不公正な取引で

 消費税の課税の仕組みを見れば明らかなように、国内で取引が完結する場合、企業は消費税を「負担」しません。

 しかし、輸出する場合、消費税を「輸出品に課税しない」ことが国際的なルールですから、受け取れない消費税分を「負担」することになります。ですから、その分を「輸出戻し税」として還付するわけです。

 ところが、一部の輸出大企業は取引の実態として、中小企業や下請けに対して納品の際に「消費税分を安くしろ」などと単価を買いたたく場合があります。その上で、「払わなかった」消費税まで、税務署から「還付」されています。もちろん、輸出大企業の取引先がすべて中小企業だというわけではありませんし、消費税分を取引先にまったく払ってないともいえません。ですから、還付額すべてが大企業のボロもうけになっているわけではありません。

 とはいえ、実際に、「輸出戻し税」制度によって多額の収入を得ており、消費税の増税でその額が膨らむのは確かです。問題は、消費税の還付制度そのものにあるのではなく、大企業が下請けに消費税分を押し付けていることにあります。しかも、輸出企業に限らず、国内販売が中心の大企業でも、下請けに押し付ければ、その分が「もうかる」ことになります。

 大企業が下請けに消費税分を押し付けている場合、この「輸出戻し税」は下請けが身銭を切って負担した税金です。これを正しく解決するためには、大企業が消費税を下請けにきちんと払うようにさせ、下請けの負担をなくすことです。この制度を廃止して「社会保障の財源」に充てるとすれば、下請けが身銭を切って負担した税金を社会保障のあてにすることになります。

 逆に、大企業の下請けに対する不公正取引を放置したまま「輸出戻し税」を廃止すれば、大企業は「輸出戻し税の廃止分だけさらに単価を引き下げろ」と下請けに迫る恐れもあります。

 ですから、「輸出戻し税」を廃止して、社会保障の財源に充てるというのはふさわしい方法ではありません。消費税の引き上げを阻止し、廃止を目指すことが解決への道です。

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