2012年6月16日(土)
大飯 耐性試験「妥当」の陰で
三菱 検証委員に300万円
原発再稼働のためのストレステスト(耐性試験)で原子炉メーカーが自社製原子炉のテスト業務を行っていた問題で、三菱重工業がテスト結果を検証する委員の大学教授3人に昨年度、計300万円の寄付をしていたことが15日までに、本紙の調べで判明しました。寄付が行われたのは、三菱重工製の原発の審査が行われたわずか4カ月前でした。こうした時期の寄付は、審査体制の根本が問われる大問題です。
昨年度、審査実施の4カ月前
三菱重工による寄付が判明したのは、経済産業省原子力安全・保安院内に設けられたストレステストの結果を検証する専門家による委員会「発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価に係る意見聴取会」(11人)のメンバー3人です。
委員が所属する大学に本紙が情報公開で入手した資料によると、岡本孝司座長(東京大学教授)、阿部豊委員(筑波大学大学院教授)、山口彰委員(大阪大学大学院教授)に対し三菱重工はそれぞれ100万円の寄付を東京電力福島第1原発事故後の昨年6月から7月にかけて寄付をしていました。
納入も試験も
三菱重工は、同社が納入した関西電力大飯原発3、4号機などのストレステスト業務を受注しています。同3号機のテスト結果は昨年10月末に、4号機の結果は同年11月に保安院に提出され、委員会の審査が始まりました。2基のテスト結果は、この聴取委員会の審査で「おおむね妥当」との結論となっています。
原発業界から委員への寄付は、聴取会でも問題になりました。1月の会議では、岡本座長が「三菱重工以外の企業からも寄付を受けている。大学のルールに基づいて適正に行っており、個人の利益のために使用していない」と弁明する一幕もありました。
長年にわたり
3人の委員には過去にも三菱重工からの寄付の実績があります。岡本座長は、09〜11年に計300万円、阿部委員は06〜11年に計600万円、山口委員は09〜11年に計300万円となっており、長年にわたって、三菱重工と密接な関係にあることは明らか。本来、安全審査に関わる資格が問われる重大問題です。
また山口委員は、日本原子力発電(日本原電)から50万円の寄付を今年2月末に受けています。日本原電は昨年12月に敦賀発電所2号機(三菱重工製)のテスト結果を保安院に提出。この点でも委員の適格性が問われます。
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