2012年7月25日(水)
論戦ハイライト
TPP参加問題 参院予算委で紙氏追及
24日の参院予算委員会で、環太平洋連携協定(TPP)の参加問題を取り上げた日本共産党の紙智子議員。関税ゼロと非関税障壁の撤廃を迫る米国に追従し、参加を前提に交渉を進めている日本政府の姿勢が浮き彫りになりました。
紙「協議段階でも理不尽要求」
玄葉外相「信頼醸成の材料 米が希望」
例外なし
紙氏は、TPPの大原則の一つである関税撤廃となれば日本農業と地域経済が大打撃を受けることを農水省の試算(表)を示して指摘。TPPの説明会では、「米だけを例外にできるのか」との質問に、政府が「関税撤廃期間を長く取ることで配慮できる」とし、例外扱いされないと答えたことを示し、こう追及しました。
紙 配慮するというが、関税ゼロを時間をかけてやるというだけのことだ。
玄葉光一郎外相 交渉の中で決まっていく。
紙 外務省の発表文書でも「段階的な撤廃により対応する」ことで合意しているではないか。
紙氏は、「例外措置」があるかのようにいう政府のごまかしを批判。農水相の認識をただしました。
紙 (TPP)参加となったら大臣は反対するのか。
郡司彰農水相 多くの懸念の声が寄せられている。それを発信するのが役目だ。
紙 反対を表明すべきだ。
紙氏は米国と自由貿易協定(FTA)を結んだ韓国では米以外は関税撤廃となり、畜産関係者から悲鳴が上がっていることを紹介。「関税ゼロになったらどんな国内対策をしてももたない」と強調しました。
重い負担
紙氏は、米国がTPP交渉参加の条件として(1)牛肉の月齢制限の緩和(2)簡易生命保険や共済の優遇措置の撤廃(3)軽自動車の税金優遇の廃止―を突き付けていると指摘。軽自動車の税金は年間7200円なのに、一般の車と同じになれば2万9500円に値上がりすると述べました。
紙 庶民に重い負担になる。こんな理不尽な要求を受け入れるつもりなのか。
外相 詳細なやりとりを日米間でしている状況ではない。
紙 オバマ大統領自ら要求している。いわば事前協議の段階で入場料を求めている。こんな理不尽な入場料を払ってまでTPPに入るのか。
外相 信頼醸成の材料を米国側が希望しているのは事実。
外相は米国の理不尽な要求を認めた形となりました。
さらに紙氏は、政府の国家戦略会議(議長・野田佳彦首相)が作成した「日本再生戦略(案)」の工程表で、2020年までに貿易額全体に占める経済連携協定締結国の割合を80%に高めると明記されている問題を取り上げました。
紙 TPPに入らなくても80%は達成できるのか。
首相 APEC(アジア太平洋経済協力会議)加盟国が参加する自由貿易圏ができたら80%になる。
紙 ということはTPP参加が前提だ。
さらに紙氏は、2012年度に実施すべき事項として「関税削減・撤廃」が明記されていることを示して迫りました。
紙 議論の最中にすでに工程表に書き込んで進めている。国民には情報を隠したまま、事実上参加を決めて、表明の時期を狙っているということではないか。
首相 (工程表は)TPPだけの話ではない。経済連携をやっていくなかで上がってくるということだ。
参加前提をごまかす首相に対し、紙氏は「2012年度中に参加表明するということを否定しなかった」と指摘。「だから国民は心配している。デフレと震災で苦しむ中、消費税増税とダブルで経済をだめにするTPP参加は絶対に許されない」と強調しました。
国境措置撤廃による農林水産物生産等への影響試算
○農林水産物の生産減少額(*) 4兆5000億円程度
○食料自給率(供給熱量ベース) 40%→13%程度
○農業の多面的機能の喪失額 3兆7000億円程度
○農林水産業および関連産業への影響
・国内総生産(GDP)減少額 8兆4000億円程度
・就業機会の減少数 350万人程度
*国産農水産物を原料とする1次加工品(小麦粉等)の生産減少額を含めた。
農林水産省提出資料から紙智子事務所作成