2012年8月27日(月)
原発災害教訓生かせ
福島再興 エネルギーどうする
科学者会議シンポ
日本科学者会議が25、26の両日、福井県敦賀市で開いた第33回原子力発電問題全国シンポジウム「福島原発災害の教訓をどういかすか」では、福島県民の置かれている実態や東京電力福島第1原発の現状、放射能汚染の状況とともに、「脱原発」後の地域づくり、電力問題や今後のエネルギーの方向性が提起されました。
原発と地域
放射能汚染で未来奪われる
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「福島の惨禍に何を見るか」と題する特別講演をしたのは、福島大学教授(前副学長)の清水修二氏。県内外に16万人が避難し、依然七つの自治体が役場を移転している現状があるのに、福井県、おおい町などの自治体が再稼働を認めていることは「残念」としました。
原発誘致で地域の発展をはかるという「外来型開発」を批判した清水氏は、福島原発災害の現状をリアルにみるなら、原発のリスクと地方財政や地域雇用はてんびんにかけることはできないと強調。放射能汚染が起これば地域の未来が奪われ、とりかえしがつかないと指摘しました。
また、雇用問題について、チェルノブイリ原発の例をあげ、「原発が停止した状態では雇用はないが、廃炉は雇用をうむ」とし、「原発依存からの脱却を国策に」と主張しました。
福島では、原発災害で、家族の離散や、被害者同士の人心の分断まで生じていること、何よりも県民は健康被害の小さいことを願っていることなどをあげ、「憲法13条の幸福追求権」が崩されてしまっていると述べました。
自然エネルギー
明確な展望と方向性を示す
原発に頼らない太陽光や風力など再生可能エネルギーの未来について、日本環境学会会長の和田武・元立命館大学教授は明確な展望と方向性を示しました。
和田氏は、再生可能エネルギーの潜在的発電能力は、現在の原発をふくめ発電能力の数倍あること、資源が無限、地域で雇用をうむ、事故リスクがほとんどない、などの利点を列挙しました。
ドイツやデンマークの実例を紹介しながら、日本での普及の遅れを指摘しました。
7月から施行された再生可能エネルギー法について、和田氏は固定価格による買取制度が導入され、「どこで誰がどんな発電をしても損しない仕組み」ができたと説明。
この制度のもとで、市民、自治体、生協や農協などの団体、中小企業が再生可能エネルギーの発電施設の建設・運営をすすめることや、都会や山村など地域の特性を生かすことが重要だとのべました。
電力問題
原発なしでもまかなえる
元電力中央研究所の本島勲氏は、原発をもつ9電力会社の過去の発電の需要と供給の関係を詳しいデータを示しながら解説しました。
本島氏は、原発が大企業、大規模工場のためにあると指摘。水力、火力、原発などのシステム別に発電設備の稼働率を検討した結果、「火力発電の稼働率を7割に上げれば、原発なしでも電力はまかなえる」と結論づけました。
2日間の参加者は、201人。地元、福井県や敦賀市からも多数の市民が参加しました。