2012年9月13日(木)
「日本維新の会」結成
「古い政治」を強権的に
解雇規制緩和・軍事力強化・TPP「参加」…
日本国憲法の下で歩んできたはずの私たちの社会の中で、民主主義を窒息させるような異質の危険をもつ政党が旗揚げされました。
橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」が12日、大阪市内で政治資金パーティーを開き、7人の国会議員を集めて急造した「日本維新の会」の結成を宣言したのです。
同党が「綱領」と位置付ける「維新八策」の中身はどうでしょうか。経済政策は、派遣法改悪では飽き足らぬとばかりに大企業に都合のいい「解雇規制の緩和」を盛り込むなど、国民生活をどん底に陥れた小泉「構造改革」をより極端にした新自由主義です。外交・安保政策は、憲法9条の改悪を志向し、「日米同盟を基軸」に軍事力の強化と売国の環太平洋連携協定(TPP)「参加」を打ち出すという従来型のアメリカいいなりです。
財界・アメリカ中心の政治にはメスを入れず、大阪府知事・大阪市長としての橋下氏のこれまでのすべてがそうであったように古い政治の焼き直しにすぎません。
民主主義否定
同時に橋下氏の政治には、これまでの古い政治をより強権的・独裁的に行おうとする危険な側面があります。
橋下氏は知事時代の昨年6月、「今の日本に必要なのは『独裁』」と語りました。市長就任後は「今の日本に必要なのは『決定できる民主主義』」と言い出しましたが、それがただの言い換えだったことは、その後の言動を見れば明らかです。
一般市民の思想・信条にかかわる質問まで答えさせる市職員に対する「思想調査」、教育への露骨な政治介入に道を開く教育関連条例、公務員を橋下氏の下僕とするための職員基本条例、モノ言わぬ市職員をつくる政治活動制限条例…、そのすべてが憲法と民主主義の精神を真っ向から踏みにじる暴挙です。
それらは、教員や公務員などを“既得権者”として攻撃し、それとたたかう自分をヒーローと描き出す手口や、“選挙で勝てば何でもあり”とばかりに民主主義を歪曲(わいきょく)する思想のもとで進められてきました。
しかし、公務員攻撃の帰結は、大阪市の解体であり、現在も進行中の「市政改革プラン」による市民施策の約400億円近い削減だったのです。
新党に集まった議員は、公教育を破壊する教育の市場化について「教育バウチャーでも株式会社(による学校運営)でもなんでもいい」(みんなの党出身の小熊慎司参院議員)などとこともなげに言い放つ議員ばかり。松浪健太衆院議員は、自民党で生活保護攻撃の旗振り役でした。
資格問われる
橋下氏はいま、こうした議員で設立した新党を足場に次期総選挙で「基本的には過半数を目標にする」などと豪語しています。
しかし、代表たる橋下氏の「従軍慰安婦強制の事実に確たる証拠はない」という発言一つをとっても「自国の歴史と政治的責任についてあまりに無知であるか、これらを意図的に無視・否認して問題を矮小(わいしょう)化している」(アジア女性資料センターのアピール)卑劣な主張であり、国政を担うに値しないことは明らかです。
マスコミの洪水のような垂れ流し報道の中で「維新」に期待感を持っている人々も、「政治を変えたい」という思いは一緒です。「維新」の実態を見極め語り合うことの重要性がいよいよ増しています。(藤原直)