2012年9月15日(土)
主張
エネルギー・環境戦略
「すぐゼロに」となぜいえぬ
「いますぐゼロにすると、なぜいえない」―。野田佳彦政権が東京電力福島原発の事故を受け検討してきた「エネルギー・環境戦略」がようやく決まった直後、首相官邸前や全国各地で繰り広げられた行動では抗議の声が相次ぎました。「戦略」は「2030年代に原発稼働ゼロを可能にするよう、あらゆる政策資源を投入する」とするだけで、その間の「重要電源」としての原発の再稼働や、使用済み核燃料を再処理する核燃料サイクル計画の継続をうたったからです。直ちに原発から撤退するよう求めた、国民世論に背くものです。
「再稼働」の前提は重大
政府は当初2030年の原発依存度として「0%」「15%」「20〜25%」の3案を示してきました。「原発ゼロ」が書き込まれたのは政府の調査でも圧倒的な国民が原発からの撤退を求めたからですが、「2030年代」というだけではいつになるかもわかりません。しかもその期限も「決定」でなく「目標」だというのではいよいよ実現の保証がなくなります。
とりわけ見過ごせないのは、「戦略」が「原発ゼロ社会」を目指す原則と称して、「40年運転制限制の厳格な適用」や「原発の新設・増設は行わない」とともに、「原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働とする」と、原発の再稼働を否定しないことです。「安全性が確認された原発」は「重要電源として活用する」というのです。再稼働中止を求めてきた国民の願いを踏みにじっています。
現在日本国内にある50基の原発のうち、稼働中の原発は国民の反対を押し切って再稼働を強行した関西電力大飯原発の3、4号機だけです。それでもこの夏の電力はまかなえました。関西電力の場合も原発を再稼働させなくても間に合った計算です。原発の再稼働は必要ありません。
原発がいったん事故を起こせば取り返しがつかない被害をもたらすことは、発生から1年半たった福島原発を見れば明らかです。しかも原発を再稼働させ、運転を始めれば、それだけで危険な使用済みの核燃料がたまります。使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出す核燃料サイクルの計画は破綻しているのに、やみくもに原発を再稼働させ、再処理計画を続けるのは危険です。
だいたい原子力規制委員会が「確認」すれば危険な原発が「安全」になるなどというのは虚構です。野田政権は19日に発足する規制委員会の委員にこれまで原発を推進してきた人物をあて、首相の任命だけで決めようとしています。規制委の「安全確認」が形だけのものになる危険は明らかです。
すべての原発から撤退を
「エネルギー・環境戦略」の決定は当初の予定が、アメリカや財界など「原子力ムラ」の懸念でずれ込みました。この程度の「戦略」さえまともに決定できないこと自体、アメリカ・財界いいなりを抜け出せていない民主党政権の姿を浮き彫りにするものです。
財界などは「原発ゼロ」は、電気料金の上昇や経済の停滞を招くといいますが、これらの課題は政府が撤退を決断したうえ、政府の責任で解決すべきです。
すべての原発から直ちに撤退する政治決断をおこなって「即時原発ゼロ」を実現するよう求める、国民の運動がいよいよ重要です。