2012年9月22日(土)
森林資源活用 地域を活性化
木くずで冷暖房・電力…雇用創出も
岡山県北部にある真庭(まにわ)市は森林資源を利用した木質バイオマス事業が盛んです。かつては利用幅が狭かったかんなくずなどの木くずがペレット(固形燃料)に姿を変え、市内にある大型施設の冷暖房設備に使われるなど、活用されています。真庭観光連盟が運営している「バイオマスツアー真庭」に同行し、事業の発展をめざす取り組みを見ました。(竹田捷英)
岡山・真庭 バイオマス事業
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市内久世にある市役所本庁舎からは四方に山並みが見え、自然の豊かさを感じさせます。
市の北部には蒜山(ひるぜん)三座といわれる1000メートルを超す上蒜山、中蒜山、下蒜山が連なり、市の中部は山岳地帯。市域(828平方キロメートル)の79%が森林です。7年前に旧真庭郡の4町4村、上房郡の1町の計9町村が合併して市が誕生しました。人口は約5万人です。
●91%が利用され
市内には30社の製材所があり、製材品の出荷量は年12万立方メートル。西日本有数の量です。かんなくずなどの木くず、廃材は年に12万トンになります。その91%が利用されています。
製材所のひとつ、A社の工場では原木を搬入するトラックや製材製品を運び出すトラックがひっきりなしに出入りしています。
工場内には製材の際に出る木くずを粉砕・圧縮し成型したペレットをつくるための製粒機があります。つくられたペレットは、健康増進施設の温水プールや床暖房、市の出先機関の冷暖房、市立小学校のペレットストーブ、農業用ハウスの温風ボイラーの燃料として供給されています。
工場内には発電プラントがあります。製材で発生するかんなくずをボイラーで燃やし、蒸気でタービンを回して発電しています。発電出力は1時間当たり1950キロワット。一般家庭約3300世帯分をまかなう電力といわれます。自社内の工場、事務所内の電力をまかない、余った電力は販売しています。
市外から供給される石油などの燃料に代わって、地域内で燃料をつくり供給することによって、燃料費の節減やCO2排出量の削減になっています。
健康増進施設の場合、ペレットを燃料にした2機のボイラーで水温、暖房をまかなっていますが、施設によると灯油使用の価格に比べ、ペレット使用の価格は約40%の節減になる、といいます。
真庭地域では、家畜排せつ物や食品廃棄物などもバイオマスとして活用する目標を定め、達成のための方策をまとめた構想をつくり国のバイオマスタウンの認定を受けています。
昨年建てた市役所本庁舎はバイオマスタウンの役所にふさわしいつくりです。
庁舎に隣接してエネルギー塔をつくり、チップボイラー、ペレットボイラーを設置、館内1〜3階フロアー約3000平方メートルの空調をまかなっています。また館内の家具や内外装を真庭産の木材でつくっています。屋根には太陽光発電システムを設置、庁舎の電力の15%をまかなっています。
こうしたバイオマス資源の地域内循環、バイオマス事業のとりくみは20年ほど前にさかのぼります。
●立ち上がる若手
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外材の輸入自由化による木材価格の暴落などで林業や製材業が衰退し、高速道路の開通によって青年の県外流出が問題となるなかで、1993年、地元の若手企業家らが未来の真庭について考える組織を立ち上げました。他地域からもさまざまな分野の専門家を招き、積極的な意見交換をして、地域活性化への取り組みをしてきました。
そのなかで合併前の旧自治体を中心に木質資源活用構想がつくられ、2000年時点で7万8000トンも発生していた木質副産物(製材時に発生する製材くずや廃材)を有効利用し、木質資源の循環を築くための取り組みが始まっています。
また地域内循環の実現に向けて製材30社でつくった真庭バイオマス集積基地が注目されています。
山林にある残材や製材所で発生する端材、樹皮を利活用する目的で08年に建設されました。素材生産者や山主によって持ち込まれた未利用木材を加工しています。
日本共産党の岡崎陽輔市議は、「残材の活用などで山林に人が入るようになり、森林育成への意欲もわいてきています。森林資源の活用で地域内循環、地域内流通が盛んになり、地域の活性化につながっています。現に森林組合やバイオマス集積基地などで新たな雇用が生まれています」と語り、事業のいっそうの推進を強調します。
「バイオマス事業は市民にとってもメリットがある事業だと理解してもらい、これまで以上に市民が参加する事業にしていく必要があると思います」
バイオマス 動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することのできるもの(新エネルギー法政令の定義)。農業系では麦わら、米ぬか、家畜排せつ物など、林業系では樹皮、カンナくず、山林の残材など、廃棄物系では家庭生ゴミ、てんぷら油、建設・建築廃材などがあります。