2012年9月23日(日)
主張
米核兵器管理
事実上の新型開発をやめよ
スーパーコンピューターの世界で今年、日本の「京(けい)」を抜いて世界最速に躍り出たのが米国の「セコイア」です。その能力を必要としているのは核兵器の管理にあたる米国家核安全保障局。「セコイア」は核爆発をかつてない精度でシミュレーションするためにつくられました。
計算に必要なデータを地下核実験なしで集めるため、強力なX線発生装置などを使った未臨界実験が行われ、オバマ政権下ですでに5回を数えます。高度な科学技術を駆使した事実上の核開発で、厳しく批判されねばなりません。
存在する限り保持する
オバマ大統領は「核兵器のない世界」をめざし、核兵器の役割を減らしていくことを公約しました。しかし、その公約とは相いれないはずの核政策が現実に進められています。「(この世に)核兵器が存在する限り、米国は安全、確実、効果的な核兵器群を保持する」のがオバマ政権の政策です。「安全な核兵器」などまったく矛盾というほかありません。
「オバマ大統領は核兵器関連予算を増やしてきた。大統領はそのことを語りたがらず、核兵器のない世界についての高まいな演説の方が好みだが、真実はこの分野で彼は気前がいいということだ」。ワシントン・ポスト紙社説(1日付)は、大統領選でオバマ氏を核兵器予算を削る弱い大統領と描く共和党の主張に反論しました。その指摘はオバマ政権の核兵器政策の実態を突いています。
米政府は核兵器管理で、製造から年月を経た核兵器が問題なく所定の動作をするよう整備し、さまざまな実験もそのために利用しています。それは使用期限の延長であって、兵器としての新たな能力を付け加える「新型」開発ではないというのが建前です。
しかし、整備では数多くの部品が交換され、そのなかで核兵器は改造され「近代化」が図られます。「新型」というべき核兵器に生まれ変わることもあります。
爆発力を広島型原爆の50分の1から24倍まで選択できるB61核爆弾。既存の4種類の型を統合し、新たにB61―12がつくられます。小さい爆発力で効果をあげられるよう精密誘導装置が備えられます。ブッシュ前政権当時に“使いやすい核兵器”として大問題になった小型核兵器が、オバマ政権下でひっそりと開発されています。
米国はドイツをはじめ欧州の5カ国に核兵器を配備しています。核兵器の撤去を要求する声はかねてからあったものの、ソ連崩壊後はその声が一段と広がり、オバマ大統領が「核兵器のない世界」を打ち出した後は受け入れ国の閣僚らにも広がっています。
重大なことに、米国はB61―12を2010年代の末には、既存の核兵器と交換で欧州に配備するとの観測が出ています。長期にわたるとみられるB61―12の配備は、欧州諸国民の願いに真っ向から反するものとなります。
「核抑止力」論の批判を
オバマ大統領が新たな核兵器を開発するのは、核兵器の役割を認めるからであり、「核抑止力」論にしがみついているからです。それは核爆発を起こさずとも、核兵器の威力を活用する立場であり、「核兵器のない世界」への最大の障害です。「核抑止力」論への批判がますます重要です。