2012年11月1日(木)
主張
追加金融緩和
国民の所得増やす対策こそ
日本経済は国民の消費が回復せず、輸出も落ち込んで、「デフレ不況」が進行しています。野田佳彦政権は「デフレから脱却をめざす」と日本銀行を督促し、2カ月連続の異例な金融緩和に踏み出させました。
繰り返される金融緩和が、景気の回復にも雇用の改善にも結びつかないことは、経済の現状を見れば明らかです。手詰まり状態にある日銀の金融緩和頼みはやめ、日本経済の主役である国民の家計と中小企業に軸足を置いた経済政策への転換こそが求められます。
大企業支援ではなく
日銀に金融機関から国債などを買い入れる資金を出させる「金融緩和」の狙いは、市中に出回る資金を増やすことです。日銀は2010年11月から緩和策を実施しています。今回の対策では、金融機関から国債などを買い入れる基金を、80兆円程度から91兆円程度に増額しました。
市中に出回るお金を増やしても、資金が金融機関や大企業にとどまる限り、景気はよくなりません。生産や消費が活発でなければ設備投資などの使い道がなく、中小企業や国民には回っていかないからです。結局あまった資金は大企業の余剰資金を増やすだけで役立ちません。現にこの2年を見ても、日本経済は少しもよくなっていません。
今回の金融緩和で日銀は、国債や社債に加え、指数連動型上場投資信託(ETF)や、不動産投資信託(J―REIT)など非常に投機的な金融商品の買い取り枠を拡大しました。日銀が供給した資金が投機をあおるだけになりかねない危険な対策です。白川方(まさ)明(あき)日銀総裁でさえ「異例の世界」という危険な領域に、さらに一歩入り込むことになります。
野田政権は、金融緩和を決めた日銀の政策委員会に、前原誠司経済財政担当相が出席し、追加緩和を迫りました。日銀と連名の異例な「声明」も押し付けました。政府の責任は重大です。
4〜6月期の実質国内総生産(GDP)は9月に発表された改定値で年率0・7%増にとどまりました。9月の鉱工業生産指数は3カ月連続低下しました。9月の家計調査報告では2人以上世帯の消費支出はマイナス0・9%と、8カ月ぶりの減少となりました。国民の所得が減り、消費も低迷する経済の悪循環が続いています。
にもかかわらず野田政権はあいも変わらず金融緩和頼みを続けるばかりで、国民の暮らしを立て直し、消費を拡大する政策はまったくとろうとしません。政府が先週決めた「経済対策」も、大企業本位の「経済再生戦略」を前倒しするというだけで、国民の必要な対策に手が届いていません。
消費税の増税中止を
なにより国民にばく大な負担を押し付ける消費税の増税は、消費をさらに落ち込ませ、経済を悪化させる最悪のものです。野田政権が「デフレからの脱却」を口にするなら、まず消費税の増税を中止すべきです。
金融緩和の「副作用」は国際的にも大問題です。中央銀行の国際機関である国際決済銀行(BIS)は今年の年次報告で、「緩和策の効果が薄れる一方、副作用は増大する」と警告しています。異常な金融緩和頼みは、根本から見直すべきです。