2012年12月4日(火)
国のかたち変えるTPP
「守るべきは守る」は成り立たない
「アメリカ型ルール」で日本の「国のかたちを変える」環太平洋連携協定(TPP)への参加の是非が、総選挙の重要争点の一つとなっています。
全品目の関税撤廃が原則
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TPP交渉の第15回会合が3日、12日までの日程でニュージーランドで始まりました。今回から、アメリカなど従来の9カ国に加えて、カナダとメキシコが参加します。新規参加の条件の一つは、「すでに合意した条文をすべて受け入れる」ことでした。しかし、交渉文書も交渉内容も4年間は秘密にする合意があり、政府がどんな条文を受け入れて交渉に参加したかは、国民には分かりません。
TPP交渉第15回会合を前に、ニュージーランドのキー首相は11月26日、酪農製品の関税が撤廃され、同国の薬価制度が維持されない限り、協定に署名しないと語りました。キー首相の発言は、TPPが「例外なき関税撤廃」を原則としていることや、国内の医療・薬価制度も交渉の対象になっていることを改めて示しました。
9カ国が中間まとめとして発表した「TPPの輪郭」は、「関税並びに物品・サービスの貿易及び投資に対するその他の障壁を撤廃する」と明記しています。政府発表の「TPP交渉参加に向けた関係国との協議の結果」でも、「全品目の関税撤廃が原則」であり、「90から95%を即時撤廃し、残る関税についても7年以内に段階的に撤廃すべしとの考えを支持している国が多数」です。
「守るべきは守る」という野田佳彦首相の強弁や、「『聖域なき関税撤廃』に反対」という安倍晋三自民党総裁の主張は、まったく成り立ちません。国内世論向けのごまかしにすぎません。
「米国型ルール」押し付け
TPP交渉の各分野を見ると、「百害あって一利なし」であることが明らかです。
TPPで関税が撤廃されると、農業と食料自給が壊滅的打撃を受けます。農産物の輸入が完全に自由化され、食料自給率は13%まで低下します。TPPに参加しないことが、食料自給率を向上させ、農林漁業と農村を再生させる道です。
非関税障壁の撤廃では、国民生活の全分野で「アメリカ型ルール」が押し付けられ、経済主権が奪われます。
アメリカとの「事前交渉」段階でも、輸入牛肉のBSE(牛海綿状脳症)対策、輸入食品・農産物の検査、遺伝子組み換えなどの食品表示、残留農薬や食品添加物の規制などの大幅な緩和が迫られています。
食の安全、医療、金融、保険、官公需・公共事業の発注、労働など国民生活のあらゆる分野で「規制緩和」と「アメリカ型ルール」が押し付けられます。
農林水産省の試算によると、TPP参加で農林水産業が被害を受け、関連産業を含め約350万人もの就業機会が奪われます。雇用と地域経済、内需にとって大打撃です。東日本大震災の被災地復興にも新たな障害をつくります。
共産党は参加に絶対反対
日本共産党は、TPP参加に反対することはもとより、アジアをはじめ世界の国々との主権を尊重した経済関係、貿易関係の正しい発展を目指します。
今日の世界で求められるのは、「アメリカ型ルール」を押し付けるTPPではなく、各国の経済主権を尊重し、それぞれの国の民主的で秩序ある経済の発展をめざす、互恵・平等の投資と貿易のルールです。特に、自国の食料のあり方については自国で決定する食料主権の尊重は、世界の流れとなっています。
日本共産党は、政府がTPP参加の意向を示してからの2年間、全国農業協同組合中央会(JA全中)や日本医師会、生活協同組合、労働組合、建設業者、自治体など広範な人々のTPP反対の共同の発展に誠実に取り組んできました。
国民に隠れ実質的な交渉
民主党は、政権政策では「TPP、日中韓FTA(自由貿易協定)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を同時並行的にすすめ、政府が判断する」として、TPP参加反対の世論の批判をかわそうとしています。しかし、実際には、野田首相は「情報収集」を口実に、国民に隠れて実質的なTPP交渉を行ってきました。
自民党は、政権公約で「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対」としています。しかし、安倍総裁は、日本商工会議所との懇談会で、「『聖域なき関税撤廃』を突破する交渉力が自民党にはある」と述べ、交渉への意気込みを示しています。世耕弘成政調会長代理もNHKの番組で、「日米の信頼関係に基づいてきっちり事前交渉し、守るべきものを守ることを確認した上で、交渉入りしたい」と明言しました。
公明党は、衆院選重点政策で「事前の協議内容が公開されず、十分な国民的な議論ができていません」「十分審議できる環境をつくるべきです」とし、自らの態度を示していません。
みんなの党は「アジェンダ(課題)2012」で「速やかな交渉参加」を掲げ、「日本維新の会」は選挙公約で「交渉に参加。ただし、国益に反する場合は反対」としています。