2012年12月9日(日)
自民党型政治と日本共産党の違いくっきり
報道ステーション 志位委員長が発言
日本共産党の志位和夫委員長は7日、テレビ朝日系「報道ステーション」の党首討論に出席しました。番組では、11政党の党首がそろいましたが、環太平洋連携協定(TPP)や憲法問題など国政の中心課題をめぐって、自民党とその“亜流”政党対日本共産党という総選挙の真の対決構図が鮮明になりました。主なやりとりを紹介します。司会は、古舘伊知郎氏です。
90年筋通す党に注目――「老舗中の老舗」が逆に新鮮
冒頭、司会の古舘氏は、民主党が大幅に議席を減らす可能性を示した新聞各紙の世論調査を話題にしました。
各党、「精鋭無比がそろっている。最後まで頑張りたい」(野田佳彦首相)、「ゆるむことのないよう、王道の選挙を続けていく」(自民党・安倍晋三総裁)、「結党して1週間後に公示だ。訴えがまだ通じていない」(日本未来の党・嘉田由紀子代表)などと語りました。
古舘氏が「志位さん。(日本)記者クラブの討論会で、『左派』が衰退しているという質問に、“それは違う”と強く否定していました」と水をむけたのに対し、志位氏は総選挙の特徴を交えて次のように話しました。
志位 今度の選挙は、私たち、新しい政治を求める国民のみなさんの大きな流れがおこっていると思います。
たとえば、TPP(環太平洋連携協定)の問題で「このやりかたに反対だ」ということで、私たち、たとえばJAグループのみなさんとずいぶん共同してきましたけれども、JAグループとして共産党を応援してくれる(動きが)、あちこちでうまれています。
それから「原発ゼロ」の運動で、私もだいたい毎週金曜日の官邸前行動に参加してきましたけれども、そういうなかからも期待(の声)があがってくる。
ですから、前の運動の形態とはいろいろ違いますけれども、新しい政治を求める国民の流れはずっと広がっています。
そのなかで共産党は90年の歴史をもっています。「ブレない党」「筋を通す党」ということが、たくさん政党ができるなかで逆に光って注目され、期待もあつまるというのを実感しています。
古舘 新しい党がバババババッとできましたので、本当に「老舗中の老舗」ということなんですね。
志位 「老舗中の老舗」が逆に新鮮と(いう状況です)。
TPP――「関税ゼロ」の合意を丸のみしなければ入れない
総選挙の争点をめぐって、TPPがテーマになり、みんなの党の渡辺喜美代表は「交渉に入らなかったら先に進まない」と推進姿勢を鮮明にさせたほか、野田首相も「農業、食の安全、国民皆保険など、国益にそって守るべきものは守る」といいつつ、「マルチ(多国間)だからアメリカのいいなりにならない交渉のやり方もある」と推進を強くにじませました。
自民の安倍氏は「『聖域なき関税撤廃』を突破できるなら交渉していく」、未来の嘉田氏も「いまの段階で交渉入りは反対」と表明するなど、横並びで“条件付き賛成”の立場を示しました。これに対し、志位氏はつぎのように語りました。
志位 さきほど野田さんが、「守るべきものは守る」とおっしゃいました。渡辺さんもそういうことをおっしゃったけど、「守るべきものを守る」ということができないのが、TPPの仕組みです。
2国間のFTA(自由貿易協定)だったら、いろんな交渉の余地があります。しかし、TPPというのは「例外なき関税ゼロ」というのが大原則になっている。
昨年11月に(参加)9カ国の交渉で、それが「TPPの大要」として合意になっています。新たにカナダ、メキシコが参加しました。そのときに、その合意を丸のみしなければ入れないわけです。つまり「例外なき関税ゼロ」を丸のみしなければ入れない。そして、「非関税障壁の撤廃」、これも丸のみしなければ入れない。
ということになりますと、先ほど首相が言っていた、農業、食の安全、そして国民皆保険が全部壊されることになると(いうことです)。
普天間基地・オスプレイ・米兵暴行――基地全面撤去しかない
司会の古舘氏が「日米地位協定」に話題を移し、「アメリカ支配の典型的パターンだ」という認識を示しました。日本維新の会の石原慎太郎代表に見解を問うたのに対し、石原氏は軍事・防衛で「米国の属国」だとしつつ、「北朝鮮にしろ、ロシアにしろ、シナにしろ、核兵器を持っている。日本だけが無防備に近い形で放置されている」などと語り、「核武装」への姿勢をにじませました。
古舘氏が志位氏に「日米合同委員会自体も閉鎖性を感じませんか。志位さんどうですか」と見解を促したのに対し、志位氏は次のように答えました。
志位 日米合同委員会の問題はあります。そして、日米地位協定の問題はあります。裁判権の問題、それから日本の国内で米軍が自由に移動できる、訓練が自由にできる、ドイツと比べても非常に自由勝手な米軍の行動を保証しているわけですから、日米地位協定の改定は必要です。
ただ、私は、沖縄の問題はもっと深刻になっていると思います。沖縄の人たちからみますと、まず「普天間基地の辺野古移設」という県民がみんな反対していることを押し付けられた。そのうえオスプレイを押し付けられた。そのうえ女性の暴行事件がおこっている。こういう流れなわけです。
ですから、もう基地があったら、ああいう悲劇はなくならないと(いうことです)。「米軍基地の全面撤去」という言葉が、超党派の全会一致の県議会決議のなかに初めて入った。もうそこまで沖縄の人々はきています。
ですから、米軍基地は本当になくすということを、本当に真剣に考えるべきときにきていると思うし、その根源にある日米安保条約―今年で(発効して)60年になりますが、これをそのまま続けていいのかと(いうことが問われています)。
私たちは、これを廃棄して、日米友好条約に切り替えようといっていますが、やっぱりそういう大転換が必要なところにきているということです。
これに敏感に反応したのが、自民党の安倍氏。安保条約の“片務性”を問題にし、「集団的自衛権の行使」を可能にすることで日米が“従属ではなく、対等になる”という持論を展開しました。古舘氏が、連立政権を組むとしている公明党の山口那津男代表に、安倍氏の見解の妥当性をただしても「それを課題にするのは時機尚早」などとはぐらかすだけでした。
憲法9条2項を変えれば日本が海外で戦争する国に――9条を生かしていくことこそ
議論は、そのまま憲法問題に移行しました。自民党の安倍氏が、「(自衛隊が)海外に対して軍といい、国内に(軍)じゃないと言っているのは、おかしい」と「国防軍」の創設を正当化したのに対し、野田首相は「議論するのはいいが、政権公約で掲げて約束して進めるのがいいのか」と手法を疑問視するだけ。「集団的自衛権と自衛権の区別なんか空理空論」(みんな・渡辺氏)「自主憲法制定は立党の精神」(国民新党・自見代表)など、番組内では改憲論が続出しました。
維新の石原氏にいたっては「『絶対平和』という一種の共同幻想が、いまだに国会の討論を支配しているのは、バカバカしい」とのべて、憲法9条を敵視・全否定する姿勢をあらわにしました。古舘氏に「平和憲法に感謝はかけらもないのか」と問われても、「ないですなあ」とあしらいました。
これらの議論に対して、志位氏は次のように主張し、「憲法擁護」の旗を掲げました。
志位 憲法問題で結局、「国防軍」という話が出てくる。野田総理は、その議論はよくないとおっしゃったが、前原(誠司・国家戦略担当)大臣は「自衛権をはっきり書くべきだ」とおっしゃる、そんな意見です。(憲法)9条のなかで特に2項を変えようという話です。2項で“戦力をもてない”となっている、ここを変えようと(いう狙いです)。
変えたらどういう国になるかが問題だと思います。2項があるために、「海外での武力行使はできない」となっていた。それが、はずされたら、私は日本の国がかわってしまう(と考えます)。
自衛隊ができて58年ですが、一人の外国人も殺していない、一人の(自衛隊員の)戦死者もだしていない―これは9条のおかげです。これをはずしたら、日本の国が変わってしまって、いわば「殺し、殺される国」になってしまうと、それでいいのだろうかと(思います)。アジアのなかでそういうやりかたで生きていけるのかと(いうことです)。そういう方向に未来があると思いません。9条を生かしていくのが大事です。