2012年12月29日(土)
「未来」と「生活」が分党
政党助成金は「生活」に
日本未来の党から党名を改めた、「生活の党」代表の森裕子参院議員と、新生「日本未来の党」代表の嘉田由紀子滋賀県知事は28日、大津市内で記者会見を開き、両代表名の共同声明を発表しました。
会見には生活の党の小沢一郎衆院議員が同席しました。
嘉田氏が読み上げた共同声明は、本日、「二つの政治団体に分党して、新たなスタートを切ることになりました」とし、総選挙で掲げた卒原発などの「理念と政策は二つの団体、この旗の下にたたかった多くの同志にも引き継がれるもの」としています。
記者から「目指す方向がいっしょならなぜ別れたのか」との質問に、嘉田氏は「家風が違う場合にハッピーライフは難しい。家風の違いとご理解いただきたい」と述べました。
「生活の党に政党助成金が入る。結婚で言えば、金の切れ目が縁の切れ目ということか」との質問に、森氏は「負担は私ども方に残していただいて、(嘉田氏側は)身軽になっていただく」と述べました。
嘉田氏は県議会で可決された知事と国政政党の役職の兼務解消を求める決議との関連で、今後の国政への関与を問われ、「少し時間をいただいて身の振り方は年明けにも述べさせていただきたい」と答えました。
政治不信深める背信行為
総選挙後わずか10日あまりで「未来の党」が「分党」に走ったことは、主権者の選択をないがしろにする背信行為であり、国民の政治不信をいっそう強めかねません。
「未来」の森裕子副代表(当時=現「生活の党」代表)は、「円満に“分党”について合意が調いました」(27日)などと述べましたが、実態は人事案をめぐる権力闘争を演じた末の分裂劇でした。
総選挙中、「未来の党」は、「卒原発」「消費税増税凍結」「反TPP(環太平洋連携協定)」を公約に掲げました。しかし、複数の候補が原発推進の立場で、公約した「原発ゼロ」も事実上10年後に先送りするものでした。「即時原発ゼロ」は言明せず、再稼働もありの内容でした。将来の消費税増税は不可避だとする議員も多く抱え、過半数の候補が改憲に賛成でした。
そんな実態に反して大手商業メディアは、「未来」を「中道リベラル勢力の代表」「左の第3極」などと盛んに持ち上げたのです。
そのためか、同党は改選直前の62議席を9議席に減らす大敗北を喫したものの、比例で342万票も獲得しました。その期待にも応えないまま分裂するというのは、有権者への裏切りにほかなりません。同党の実力者である小沢一郎氏は民主党幹事長時代に「国民が主権を行使するのは唯一選挙の機会だけ」などと主張していましたが、自身の主張すら否定するものです。
しかも、来年の政党助成金の受け取りの権利は小沢氏ら「生活の党」が引き継ぐのも、政党としての堕落を示しています。
いくら看板を取り繕っても、いずれも国民を裏切った勢力の一翼であることは明白です。来年の参院選で国民の厳しい審判を受けることは間違いありません(林信誠)