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2013年1月3日(木)

安倍政権の「日米同盟強化」路線

国民・近隣諸国と矛盾

2013外交展望

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 安倍晋三首相は昨年末、首相指名を待たずオバマ米大統領と電話会談し、「日米安保協力の強化と経済連携の深化」を確認しました。その下で集団的自衛権行使、沖縄の米軍新基地建設、TPP(環太平洋連携協定)参加の動きなどが次々打ち出されつつあります。こうしたアメリカ言いなりの外交・安保政策の推進は、日本国民や近隣諸国民との矛盾を一層深刻にせざるを得ません。(榎本好孝)


 安倍首相は初の外遊先に米国を選び、1月にもオバマ大統領と首脳会談を行う意向です。

集団的自衛権行使の検討へ

 首相は就任会見で「(民主党政権で失われた)日米同盟の絆を改めて強化していくことが日本の外交・安全保障立て直しの第一歩だ」と強調。そのために小野寺五典防衛相に次の点を指示しました。

 ▽米国の新国防戦略と連携して自衛隊の役割を強化し、日米軍事協力の指針(ガイドライン)を見直す

 ▽民主党政権が2010年に策定した軍事力の整備方針である「防衛計画の大綱」とこれに基づく「中期防衛力整備計画」を見直す

 ▽沖縄の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への「移設」を含め在日米軍再編を進める

 さらに首相は就任会見で集団的自衛権行使(海外での武力行使)について、第1次安倍政権下の07年に設置した諮問機関のメンバーから意見を聞き、検討を始める考えを表明しました。この諮問機関は08年、集団的自衛権の行使は憲法上許されないとする政府見解の変更を求める報告書をまとめています。

 米国の新国防戦略はアジア太平洋重視を打ち出し、「大国化」する中国への軍事的優位と同地域での軍事行動の自由を確保するのが狙いです。米国防費削減の下で日本などの同盟国に一層の軍事力拡大と役割分担も求めています。同戦略に基づく対日要求を進んで具体化しようというのが首相の指示です。

 これは日本の軍事費や兵器の増強に直結します。米海兵隊のオスプレイ配備や新基地建設に反対する沖縄での島ぐるみのたたかいに敵対するとともに、東アジアの緊張を高めます。

 日米首脳会談では、TPPへの日本の交渉参加問題も大きな焦点になります。

 首相は就任会見で「状況を分析しながら総合的に検討していきたい」と表明しました。「聖域なき関税撤廃を前提とする以上、交渉参加に反対」との総選挙公約から後退し、交渉参加に含みを持たせており、すでに反発の声が上がっています。

尖閣問題での交渉は否定

 近隣外交では、領土や歴史認識の問題で悪化している中国や韓国との関係が焦点です。

 首相は就任会見で「国益を守る、主張する外交を取り戻さなければならない」と強調しました。しかし尖閣諸島問題では昨年の総選挙で「中国と交渉することはあり得ない」と発言。日本領有の正当性を主張する外交交渉も否定し、問題解決の道を閉ざしています。

 「慰安婦」問題で安倍新政権は、日本軍の関与を認め謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話の継承を明言していません。首相は昨年9月の自民党総裁選で強制連行の事実を否定し、新たな談話を出すべきだと発言。韓国などから非難の声が上がっていました。

 米国でも、河野談話の見直しで日米韓3国の連携がうまくいかなくなれば、東アジアでの戦略的立場が弱体化するとの懸念があります。このためキャンベル米国務次官補が首相に河野談話見直しを棚上げするよう要請したと伝えられています。(米紙ニューヨーク・タイムス昨年12月20日付電子版)

 「慰安婦」問題や靖国神社参拝などで、安倍政権が過去の侵略戦争や植民地支配を美化する動きを強めれば、日本は国際的な孤立を深めることになります。

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