2013年1月27日(日)
主張
「安倍予算」何のため?
所得再分配の機能忘れたのか
第2次安倍晋三政権初の、年度当初の予算案の編成作業が大詰めです。24日の閣議で予算編成方針を決定したのを受け、閣僚折衝で議論を煮詰め、週明け29日に2013年度予算の政府案を決定する段取りです。予算はその政権がどんな政治を目指しているのかを示すものです。安倍政権がどこに向かって何をしようとしているのを浮き彫りにすることになります。
財政の機能をゆがめる
予算は、国民が納める税金やその税金を担保にした国の借金(国債)で国の仕事を賄う、財政の見積もりです。財務省が事実上編集し毎年発行している『図説・日本の財政』(財政白書)は、財政の働きを(1)資源配分の調整(2)所得の再配分(3)経済の安定化―という三つの機能があると説明しています。財政のいわば常識でしょう。
「安倍予算」はどうなのか。全体像は予算案を見る必要がありますが、資源配分の点では10年ぶりに軍事費を増額に転じさせているなど、軍事費への配慮が露骨です。経済安定の点では、安倍首相が「経済再生」を最優先にと繰り返しているため、今年度(12年度)の補正予算とあわせた「15カ月予算」で公共事業を拡大するなど、景気対策重視が特徴でしょう。
問題はその中身です。無駄な軍事費だけでなく、車がほとんど走らない高速道路や採算を度外視した大型コンテナ港湾の建設など不要不急の大型公共事業を積み上げたのでは、資源配分の面でも、経済の安定化の面でもまともな予算とはいえません。安倍政権は、道路整備のための「特定財源」の復活までたくらみました。
「安倍予算」が、所得再配分の機能をいよいよ後退させようとしていることは重大です。国が国民の最低生活を保障する生活保護の扶助費を1割近く削減しようとしているのはその最たるものです。これまでも自民党政府は、社会保障費を毎年2000億円以上削減するなど福祉を後退させてきましたが、民主党政権が具体化し、安倍政権が実行する生活扶助費の本格的な削減は初めてです。「安倍予算」は財政のあるべき姿を大きくゆがめるというほかありません。
財政の所得再配分機能について前記『日本の財政』は、「過度の所得格差が生じた場合」「政府がそれを是正していく」ものだと説明しています。国民の税金で賄われている財政の役割を考えれば当然であり、貧困と格差拡大の中、いよいよその重要性は増しています。所得再分配のためには所得税の累進課税や資産税、失業保険や就学援助などの制度がありますが、生活保護はその中でも要の制度です。その削減は、国民の生存権を明記し国の社会保障の義務を定めた憲法25条に反することにもなります。
安倍政治に展望はない
政治の根本目的は国民生活の安定です。国民が困ったとき、その暮らしを支えることのできない財政では、何のための政治か、財政かといわれるのは当然です。
安倍首相は経済の再生のために積極的な財政政策を掲げ、国債も大増発します。しかし、財政のあるべき姿を大きくゆがめたうえ、その結果が財政の破綻で、国民に消費税など大増税を押し付けるというのでは、国民の願いに応えることはできません。国民に展望を示せない政治を、国民が長続きさせるわけにいかないのは当然です。