2013年2月2日(土)
参院本会議 市田書記局長の代表質問
1日の参院本会議で代表質問に立った日本共産党の市田忠義書記局長。憲法問題とあわせて、賃上げ・雇用、中小企業、環太平洋連携協定(TPP)などの各問題で安倍政権の姿勢をただし、国民の立場に立った打開策を示して政治の根本転換を求めました。
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働く人の暮らし
「賃上げ目標」こそ掲げよ
市田氏は、首相が「真面目に働いても暮らしがよくならない」と述べたことをあげ、「なぜそんなことになったのか」と、その責任を追及しました。
市田氏は、働く人の給料(残業代やボーナス含む)は月平均31万4236円で、1990年以降最低水準にまで落ち込んでおり、その背景には「歴代政権の後押しがあった」と指摘。1985年に労働者派遣法がつくられ、「雇用は正社員が当たり前」という原則が壊されたと述べました。
市田氏は、働く人の3分の1が派遣や請負、有期などの非正社員に置き換えられ、電機大企業では、リストラ対象者を一部屋に集めて退職を強要する「追い出し部屋」まで使ったリストラが横行していると告発。1997年と比べて企業収益は1・63倍に増えたのに、労働者の賃金は12%も落ち込んだことを示し、「『企業収益を回復させ、その後に賃上げにまわす』という政府の言い分はすでに破たんしている」と追及しました。
首相は「違法な退職強要が行われないよう啓発指導を行っていく」と答えたものの、「企業収益を向上させ、それが雇用の拡大や賃金上昇をもたらす好循環を生み出していく」と破たんずみの政策に固執しました。
市田氏は、政府として「賃上げ目標」を掲げ、最低賃金の大幅アップ、労働者派遣と期限付き雇用の原則禁止、不当・無法なリストラをやめさせることを提起しました。
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中小企業
「金融円滑化法」の延長を
市田氏は、全企業の99・7%、雇用の7割を占める中小企業について、「経済のけん引力」「社会の主役」だと明記した中小企業憲章に触れ、2010年に閣議決定された同憲章を安倍政権が踏襲すべきだと強調し、3月末で期限切れとなる「金融円滑化法」の延長を求めました。
同法は、中小企業が貸し付け条件の変更を希望する場合、金融機関に応じるよう義務付けたものです。2008年秋のリーマン・ショック以降、経営悪化した中小企業の支援のため09年12月から施行されました。
市田氏は、同法の期限切れによって金融機関の6割が、「企業倒産の増加を懸念している」とする調査結果を紹介。「不況で中小企業が苦しい時に、金融機関が返済条件などを緩和して支援するのは当然の社会的責任だ」と強調し、「中小企業金融の恒久的で抜本的な強化を図るべきだ」と迫りました。
安倍首相は、「中小企業憲章の理念を踏まえ、中小企業、小規模事業者に対する支援策を着実に実施していく」と表明しました。
金融円滑化法の延長には背を向けましたが、「貸し付け条件の変更等や円滑な資金供給につとめるよう金融機関に促す」とのべ、中小企業への「経営支援と一体となった資金繰り支援などの総合的な施策を積極的に進める」と答えました。
TPP
「反対」公約投げ捨てるな
「TPPに参加するか否か、これはわが国農業と農村を破壊に導くだけでなく、社会のありようを根底から変えかねない重大問題だ」
市田氏はこう述べ、国民への公約をないがしろにしてTPP参加になし崩し的に向かうことは許されないとただしました。
市田氏は、自民党が総選挙公約では、「『聖域なき関税撤廃』を前提とする限り、交渉参加には反対」としながら、自公連立政権合意では「反対」の文字が消え、通常国会での所信表明演説では、一言も触れなかったことを指摘し、「反対の旗は降ろしたのか」とただしました。
首相は「公約で明記した通り、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉には参加しない」と答えたものの、「しっかり情報を分析し、国益にかなう最善の道をすすめる」としました。
市田氏は、TPP参加は農業と日本の風土を壊し、食の安全や医療、雇用や地域経済をも脅かすものであり、「国民にとっては『百害あって一利なし』の暴挙だ」と指摘。自民党が野党時代、TPP交渉の方針や協議の実態などの情報開示を求めていたことをあげ、「政権についた以上、自らすべての情報を国会と国民の前に明らかにするのは当然だ」と主張しました。
首相は「状況の進展に応じて、しっかりと情報提供していく」と答えました。
【TPPをめぐる首相、与党の見解の変遷】
●「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加には反対する」 (自民党総選挙公約、2012年11月21日)
●「国益にかなう最善の道を進める」 (自公連立政権合意、同12月25日)
●「情報を分析しながら、総合的に検討していく」 (首相就任記者会見、同12月26日)
●「参院選の前に方向性を示していきたい」 (日本テレビの番組、2013年1月29日)
●「判断時期は現時点では決めていない」「公約に明記した通り、聖域なき関税撤廃を前提にする限り参加しない」 (衆院本会議、同1月31日)