2013年2月10日(日)
衆院予算委 笠井議員の基本的質疑
日本共産党の笠井亮衆院議員が8日の衆院予算委員会で行った基本的質疑(大要)は次の通りです。
「反省」いうなら原発ゼロの決断こそ
笠井 原発事故「収束宣言」を撤回するといえないのか
首相 「収束」と簡単にいえない
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笠井亮衆院議員 まず、東京電力福島第1原発事故について質問いたします。国会事故調査委員会の委員だった田中三彦氏が昨日、衆参両院議長と経済産業大臣に文書を提出されました。昨年2月、第1原発の現地調査を決めた国会事故調に対して、東京電力が虚偽の説明をして、調査を妨害したというものです。
衆議院事務総長。その文書が届いていますか。
鬼塚誠衆議院事務総長 東京電力側の虚偽にもとづく非協力姿勢により1号機原子炉建屋内の非常用復水器の事故調査が行われなかった。衆議院議長に経緯の解明と現場調査の実施を求めるというものです。
笠井 きわめて重大な問題です。事故が津波によるものなのか、地震による損傷がなかったのか。大きな焦点となっていた。田中氏は、1号機4階の原子炉建屋、非常用復水器が、東電の主張と違って地震直後に壊れた可能性がある。そのことを確かめようとした。
ところが、東電の説明で「真っ暗闇の現場での調査は危険である」と判断し、やむなく断念した。しかし、その後、明らかになったビデオ映像などによって、完全な虚偽であり、重大な調査妨害だったというものです。
田中氏は、「このような妨害行為は、国会事故調のみならず、その設置者たる国会と国民を欺くものであり」、「到底許されるものではありません」と厳しく批判しております。
茂木経済産業大臣。田中氏は、「虚偽説明の検証と現地調査の実現への協力をお願いしたい」と要請されています。どうこたえるか。お答えください。
茂木敏充経済産業相 東京電力が何らかの意図をもって虚偽の説明をしたとすれば、断じて許されないことです。昨日(7日)、東京電力に対して事実関係を明らかにするように指示を出したところです。今後、現地等でさらなる調査が行われる場合は、最大限に協力するように東京電力に指導しております。
笠井 国会事故調は国会の国政調査権を背景にして事故の調査を行う権限をもっていたものです。東電の行為は、国会の国政調査権に対する妨害行為といわなければいけない。極めて重大な問題であって、国会として真相究明と再調査を行う。こういう対応が必要だと思います。
東京電力の広瀬直己社長、当時の担当者の玉井俊光元企画部長の証人喚問を要求いたします。田中三彦氏も国会に招致して事情を聞くべきです。
山本有二委員長 後刻、理事会で協議いたします。
笠井 福島原発事故から間もなく2年です。いまだに緊急事態宣言は解除されておらず、16万の避難者の方々が故郷に戻れない。安倍総理は2月1日の参院本会議で「収束していると簡単には言えない」と答弁されました。一昨年12月16日、野田首相が行った「収束宣言」を撤回するということでしょうか。
経産相 「収束宣言」は、前政権において、原子炉の状態を定量的に評価したうえで冷温停止状態の達成を確認したものであると認識しております。現在、原子炉の温度は約25度から45度と低温で、安定していると承知しております。4号機の使用済み燃料プールは十分な耐性を有していることを原子力安全・保安院が確認したところです。使用済み燃料プール底部の補強工事を実施しております。今後も定期検査により確認していく予定です。
収束宣言を理由に東電は賠償打ち切りの動き
笠井 あれこれ言われたが、撤回するかどうかについては全然話がない。なぜ撤回するとはっきり言えないのか。
福島県議会は、「収束宣言」の撤回を強く求めて二度にわたって全会一致で意見書を採択しています。「政府が『収束宣言』をしたことは、当県の実態を理解しているとは言い難く、避難者の不安・不信をかきたてる事態となっている」と厳しく指摘しています。安全・安心の福島県を取り戻したい。これが県民の総意であることは言うまでもありません。
ところが「収束宣言」の後、避難区域の見直しが進められ、東電による賠償打ち切りも進んでいる。総理が「福島の再生」に責任を持つと言われるのだったら、まず「収束宣言」は撤回する。はっきり言うべきではないでしょうか。
安倍晋三首相 総理就任後、福島県にまいりました。笠井委員がご指摘をされたようなそういうような住民の方々は受け止めをしておられた。いまだに帰還できずに不自由な生活を強いられている皆さんともお話をいたしました。その中において原発事故が収束していると簡単には申し上げられない状態だと、私は認識しております。
原発はいまだ高放射能の状態
笠井 簡単にいえないんだったら撤回だと思いますが、じゃあ現在、福島第1原発はどうなっているのか。福島第1原発からいまだに放射性物質が出ているのかどうか分かっているのでしょうか。
経産相 いまだ福島第1原発は高い放射能の状態であることは間違いありません。
笠井 大量に使われている冷却水はどうか。敷地内にある汚水タンクもこれ以上置けなくなり、東電は海洋に流そうとして漁民の怒りを呼んでおります。メルトダウン(炉心溶融)した原子炉など原発施設がどういう状態にあるのか分かっているのか。地震などで再び破壊され、さらに放射性物質がまき散らされるおそれはないのか。ここもはっきりしているのか。どうでしょうか。
経産相 1号機から3号機はさらに放射能が高い状態であり、燃料棒が溶けたデブリ(ごみ)が残っている。この摘出作業が相当困難を極めると考えております。東京電力が廃炉をすすめる、国としても廃炉に向けて研究開発をすすめていきたいと思っております。
笠井 再稼働・新増設は「安全神話」、原発推進姿勢そのもの
首相 反省しなければ。同時に(新設に)挑戦
笠井 放射能が高い状態にある、そしていろんな問題があるといわれた。収束しているとはいえないというのがはっきりしていると思うんですよ。総理は簡単にいえないといわれましたが、その一方で、昨年12月30日のテレビ番組で、発言されております。「新たにつくっていく原発は事故を起こした東京電力福島第1原発とは全然違う」「国民的理解を得ながら新規につくっていく」と。「第1原発は津波を受けて電源を確保できなかったが、福島第2などは対応した」「その違いを冷静に見極める必要がある」。こう発言されています。事故の究明は終わったことにして、原発の再稼働にとどまらず、新増設ということになれば、これは原発推進姿勢そのものということになります。事故の全容がわからない、簡単に収束したとはいえないといわれているのに、「津波が原因だった、その対策をとれば大丈夫だ」という認識で、新規につくっていくなどとどうしておっしゃることができるのでしょうか。
首相 避難をしている方々の心情を思えばですね、慎重に腰をすえてじっくりと考えていかなければいけない課題であると、このように思っております。
笠井 そうしますと、「福島第1原発とは新たにつくるものは違う」という発言は撤回ということですか。
首相 冷静に考えていく必要があるということを申し上げたわけで、新たな技術のなかにおいて解決するという可能性もないわけではないわけです。しかし、やはり事故の結果についての検証も十分に進めていく必要もあるでしょうし、また、被災をしている方々の心情も考えながら考えていく必要があると現段階では思っているということであります。
笠井 事故の検証も進んでいないということも認めたうえで、慎重にといわれたんですが、総理の口から「福島第1原発とは全然違う」という言葉が出ること自体が本当に問題だと思うんです。政府事故調報告は、「国は、引き続き事故原因の究明に主導的に取り組むべきである」といっているわけで、その立場とも違うんじゃないか。事故になったのは想定外の津波のせいだと電力会社が主張してきた言い分とどこが違うのか。「安全神話」に陥って原発をつくり推進してきた歴代自民党政治の反省がまったくないんじゃないかと思うんです。総理、いかがでしょうか。
首相 わが党が政権にあって、安全神話のなかにあって原子力政策を進めてきたということについて、安全対策ということについては反省しなければならない。これは再三申し上げてきたとおりでございます。同時に、事故の調査は厳格に進めていく必要もあるでしょうし、今後そういう事故を克服できるかどうか、科学技術においてできるかどうかということは、同時に挑戦し続けていく必要があるのではないのかと考えております。
笠井 反省はいわれたんだけれども、安全対策だけの問題じゃないと思うんですよ。事故を克服できるか分からないわけです、原因が分かっていないと。その途中において新しいものつくるとか再稼働の話が出てくる。こんなことはありえないと思うんです。総理は「ゼロベースで見直す」と言われますが、ゼロベースで見直すべきは、歴代自民党政権が「安全神話」に漬かってきた原発政策そのものです。地震・津波がある列島において原発がありうるのか、科学技術からも原発を持っていいのか、ありえないということになっている。二度と福島のような事故を起こさないというのなら、政治の決断として「原発ゼロ」、ただちにやめることだと改めて申し上げておきたいと思います。
内部留保活用し、政治の責任で賃上げを
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笠井 もうひとつ、「働く人の所得をどう増やすのか」について質問したいと思います。
安倍総理は「経済の再生」を掲げて日銀に言って物価を2%上げようということで政策を進めている。そこで物価が上がれば、国民の所得が増えて暮らしが良くなるのか、国民の最大の関心事だと思います。物価が上がったら、働く人の賃金が確実に上がる保証はあるのでしょうか、総理。
首相 われわれは「三本の矢」によってデフレ脱却を目指しているわけであります。現在、金融の大胆な緩和というなかにおいて、まずは為替と株式市場に変化が出てきたわけでありますが、企業が業績を回復するなかにおいて収益を上げ、そして、その収益を上げていくなかにおいて、労働分配率をまた考えていくというなかにおいて人材に投資をしていく、そしてそれが賃金の上昇につながっていくであろうと、このように期待しております。
先般、ローソンが2〜3%、働き世代の給与を引き上げると。こうした動きがどんどん出てくることを期待したいと思います。
笠井 物価が2%上がれば、平均的なサラリーマンの世帯で年間10万円近くの支出が増える。すでに円安の影響で輸入食料品とか小麦とかガソリンなども急騰している。このうえ来年の4月には消費税が8%と、踏んだりけったりだ、とみんな思っているわけです。総理は、企業の収益が上がれば雇用と賃金上昇につながるといわれましたが、はたしてそうなってきたか。小泉政権から第1次安倍政権の2001年から2007年、平均現金給与を年額換算にするといくらになるのか。2001年と2007年の額を答えていただきたいと思います。
伊沢章厚生労働省大臣官房統計情報部長 2001年が421万6000円。2007年が396万4000円でございます。
笠井 7年間の平均給与が25万円も減っているわけです。景気が拡大し、円安も重なって企業が軒並み最高の利益を出した、あの当時もこの委員会で安倍総理は「企業が利益を上げれば賃金は上がる」と言われていた。そして今と同じように成長戦略その他やられてきたわけですが、賃金は大きく下がってしまった。下がってしまったという事実はお認めになりますね。
首相 政府から答弁している通りであります。問題はずっとデフレ下にあったわけでありまして、このデフレマインドのなかにおいて投資あるいは労働分配率を上げていこうという意欲はなかった。それが大きな原因ではなかったかと思います。
笠井 給与は下がってしまったという事実をお認めになりました。じゃあその上がった収益、当時、最高の収益を上げていたわけですが、この収益はどこへ行ったんですか。
麻生太郎副総理・財務相 企業はいま巨大な内部留保を抱えていると思っております。常識ですと笠井先生いわれる通り、内部留保は賃金に回るか、配当に回るか、設備投資に回るか、すべきものだと存じますが、企業はじーっと金利のつかない内部留保をずっとため込んでもっておられる。この企業マインドが一番問題なんだと思っております。いま株価が上がり、ドルが高くなり円が安くなりましたので、収益として増えるわけで、従業員の給料を上げようといわれる企業もあれば、まだと思っておられる(企業もある)。われわれが強制してやらせるというような分ではありませんので、私ども共産国家ではありませんので勝手なことはいえませんので、企業が給料を上げてやらなあかんという気になるかならないか。これからの大きな流れだと存じます。
笠井 大企業は大幅利益でも働く人の所得は減。それがデフレの最大原因だ
首相 マインドの問題。収益増を賃金に回すよう要請する
笠井 共産国家とかわけのわからないことをいわれましたけど(笑い)、われわれも強制してという話ではなくて、経済の理屈に従ってやろうと。ちゃんとルール作ってやればできるという話をしているんです。平均給与の年額ですが、ピークは1997年です。その時点を100としますと、企業の経常利益が2011年に159。ジグザグもありますが全体として上がってきている。その間に平均給与は1997年100からずっと下がり、15%も下がって2011年には85まできて、額で66万円も減っているわけです。他方で大企業の内部留保が185で、額でいうと120兆円も増えている。株主配当はこれも284で大幅に急増しているわけです。つまり大企業は大幅に利益を増やしたのに、働く人の所得や雇用を減らして、それが内部留保や株主配当にいたっていると。全体としてそうなっているということを確認したい。
首相 デフレ下において実質金利は上がっていくわけですから、キャッシュ(現金)として持ちたい、それが内部留保になっているということであろうと思う。そのマインドを変えるのがわれわれの政策であって、来週、経営者のみなさんに集まっていただいて、デフレ脱却するためには、しかもスピードを上げるためには、一日も早く賃金、給与として実体経済に現れてくることが一番早いわけで、それは企業の利益にもつながっていくわけですから、収益が上がる、可能性がでてきたことを給与、賃上げ、一時金という形で協力していただきたいという要請をするつもりでございます。
財界が賃下げ宣言、この姿勢を正すべきだ
笠井 総理も財務大臣もマインド、気持ちの問題だというが、それでデフレが起こったんじゃないですよ。一番の問題は、厚労省の「労働経済白書」でもそうだし、自公政権時代の経済財政諮問会議の民間議員をされていた吉川洋東大教授も、『デフレーション』という本のなかでいわれている。佐藤日銀審議委員も、賃上げ、あるいは所得増なしにデフレ打開はできないと。吉川さんは、カギは賃金だ、もともと賃金下がったからこうなったんだと共通していわれているわけです。
それを、気分の問題で、これを切り替えて収益を上げるようにすればというけど、なってこなかったわけですよ。なってこないで内部留保にたまっちゃったわけで、そこのところをしっかり見ないといけないというふうに思うんです。アメリカもEUも経済危機のもとでさまざまな矛盾が噴出していますけど、名目成長も働く人の所得も、リーマン・ショックで減ったあと回復して伸びている。減り続けているのは日本だけです。これは誰がつくったのかというのが問われてくる。企業の収益が上がっても働く人の所得につながらない―ここに問題がある。これを変えないといけないというところにズバッと焦点あてて、取り組みをやらないのか。原因と責任をきちっととらえないのかということです。
総理は経済界に要請してといわれますが、財界・大企業はどうか。賃上げをやらないというだけではなくて、定期昇給の凍結とか見直しとか、そんなことまで口にして、さらさら賃上げなんか考えていないわけです。総理は、財界のこの姿勢はおかしい、変えてもらわないといけないと思われますか。
首相 米国と日本を比較されました。何が大きく違うかというと金融政策が決定的に違ったんです。アメリカはQE(量的緩和)をやった。しかし、日本はやらなかった。ですから、デフレマインドのままなんです。デフレマインドを変えていく。いまインフレ期待があがっているわけじゃないですか。金融政策を変えただけで為替は、株価はどうか、効果はでているじゃないですか。政権をとって1カ月しかたっていないなかで、まだ賃金には反映していない。しかしその中においてもローソンにおいて安川電機において賃上げをしようと。3カ月前に考えられましたか。誰にも思いつかなかったじゃないですか。われわれの政策が経済を変えているんですよ。
笠井 「金融政策で日銀がお金を刷っていけばよくなる」といってさんざんジャブジャブやってきたじゃないですか。それでうまくいかなかったじゃないですか。個々の企業で(給与を)上げようと思っているところがあるというけれども、経団連は「賃上げしない」「定昇の見直しをする」と明言している。いいことなのか悪いことなのか。はっきりいってください。
首相 マインドだけといっているのではなくて、金融政策を変えるわけです。金融政策を変えることがマインドを変えることにつながっていく。それが極めて大きいということを申し上げているんです。実際に賃金が上がっていくまでには時間がかかりますから、そのサイクルを早くしなければいけないということで、経済界にとっても一日も早くデフレ脱却をすることはプラスですから、「賃上げを全然しませんよ」という態度ではなくて、われわれの政策に協力をしてもらいたい、利益が出るという見通しの中では、従業員に還元していただきたいということを申し上げていきたいと思っています。
笠井 これまで1997年からさんざん収益が上がっても(従業員に)回ってこなかったんですよ。そこの問題でしょう。日本経団連が2013年版の『経営労働政策委員会報告書』で、「これまで物価が下がって賃金は実質的に上がっている。だから賃上げをやらない」といっている。いくら総理が賃上げを求めていくといっても結局、経団連は、もっと賃金を下げてもいいといっているわけです。
実際は物価が下がる率よりももっとたくさん収入が減っている状況なのに、経団連は「物価が下がっているから賃上げはいらない」という。経団連の理屈について、おかしいな、理不尽だな、身勝手だなと思いますか。
首相 経団連は経団連の考えでおっしゃっているんだろうと思います。経団連のコメントについて私が「いい」とか「悪い」とかコメントするつもりはありません。しかし、なるべく賃上げ、あるいは一時金という形であっても、従業員の給与が増えていく、そういう対応をしていただければたいへんありがたいと思っております。来週、経営者のみなさんに集まっていただいて、そうした要請を行っていきたいと考えているところであります。
笠井 収益が上がったら賃金に反映するようにしてもらいたいと期待しているといわれるわけでしょう。しかし、経団連は逆のことをいっている。「賃上げはしません」「定昇は見直します」と。そして「これまでさんざん物価が下がっているんだから、もう賃上げはいらないんだ」とまでいっている。そういう状況になっている。
雇用だってリストラがどんどん進んでいるわけです。そういうときに、いま内閣がやろうとしていることと違う、おかしい、ということはいえないんですか。「コメントする立場にない」というのはどういうことですか。
首相 笠井委員が、10年間賃金が上がらないとおっしゃった。それは事実です。しかし、何が足りなかったかといえば、思いきった金融緩和なんですよ。だからこそ私たちはそれをやった。まだ政権ができて1カ月ですから、そう簡単にまだ給与は上がりません。しかし、さまざまな指標において、いい兆しが見えてきたのは事実です。その兆しを見て、何人かの経営者は、それだったら応えていこうということになったんですね。そういう人たちがどんどんどんどん増えていけば、それは連鎖になっていきます。良い循環に入っていくように、われわれも努力をしていきたい、このように思います。
笠井 総理が言ったって、相手が応えていないんですよ。収益が上がったってやらないといっているのが経団連ですからね。身勝手な主張を許して、日本中の企業がいっせいに賃下げやっていったら、国民の所得はもっと減って、消費と需要を減らし、デフレがもっとひどくなるわけです。じゃあ、なんでこんなに賃金が下がってきたのかと言えば、財界が、収益が上がっても賃金に回さないという意思を持っていたという問題と、歴代自民党政権が大企業のリストラと賃下げを野放しにしてきたという問題がある。労働基準法や労働者派遣法などを相次いで改悪して、規制緩和どんどんやってきて、収益が上がっても賃金に回さない、内部留保にためていくということやってきたんじゃないですか。そのことによって働く人や国民の所得が減って、消費が減って、需要が減って、そしたら企業だって生産できなくなり、設備投資にまわらない。ますますデフレがひどくなるという悪循環になってきた。だから「労働経済白書」も日銀の方も、やっぱりカギは賃金だ、賃金を上げることによって切り替えていけば好循環になるじゃないかという話をしているのです。なぜそれをやらないのか。これまでの政策に対する分析と原因、深い反省がないからだということを強く感じます。
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笠井 内部留保の1%だけでも、ほとんどの企業で賃上げが可能
財務相 (賃上げ)できる条件が企業側にある
笠井 先ほど、働く人の所得を減らして、企業が内部留保をためてきたということがありました。私はすでにそこに賃上げする原資があると思います。総理はこれから上げることを期待していると言われるけど、いつになるかわからない。それに対して、働く人や中小企業は一生懸命頑張ったけれど、それが賃金や下請けの単価にまわらずに企業の内部留保にまわってきたと、麻生さん、先ほどおっしゃいました。そこのところに着目してやればいいじゃないかということを考えるべきだと思うんですよ。そこで麻生副総理にうかがいたいのですが、4年前の2009年1月9日、この予算委員会で隣の(首相の)席に座っていらっしゃいました。企業の内部留保を活用した雇用確保の問題、これについて私と議論いたしました。覚えていらっしゃいますか。
財務相 笠井先生とこの種の話をよく、自由主義経済がわかっておられるなと、すごく感心して、前々からうかがってました。(笑い)
笠井 われわれは市場経済というのを重視していますから、そういう意味では議論はかみあって当たり前です。市場経済を通じて、その先にいこうという話をしているんです。
あの時に、私の内部留保の質問に、当時の河村官房長官は、「積極的に経営者団体を通じて要請していく」と明言されて、麻生総理も「重ねていわないといけない」と要請する考えを表明されました。私はいまこそ、マインドの問題とか、これから収益が上がったらいくように期待するという以前に、企業内部にすでに眠ってあまっているこの資金を、賃上げ、雇用確保などにきちっと使う、経済に還元することがまさに必要じゃないかと思うんですが、どうですか。
財務相 賃金はもちろんです。企業の設備投資に回るということも大事だと思っています。配当ももちろんです。その三つにまったくいかないで、内部留保が増え続けたというところが一番問題なんだと思いますが、なぜそうなったかと言われれば、株価が下がり、土地も下がり等々で資産が暴落したために、企業は債務超過という状態を抱えておりましたので、貸し渋り、貸しはがしに対抗するために、内部留保をためにためたというのが経営者のマインドだったと思います。それが、政策が大きく変わったことによって、少し動き始める状況になったということなんで、タイムラグ(時間のずれ)が必ずあり、賃金が一番最後に回ってきますので、その差をなるべく縮めるという努力はし続けなければならんと思っております。
笠井 賃金のために内部留保が必要だというふうに認められました。設備投資のことも言われましたが、設備投資をするためには、需要がなければダメですから、需要が伸びるためには給料が上がらなければダメなんですよ。タイムラグといえば、すでにあるものを使うというのが一番早いわけです。大企業の内部留保はこの14年間で120兆円も積み増しされて、260兆円にも上っております。連結内部留保500億円以上持っている企業グループ、約700まで調べました。試算してみると、内部留保の1%を使えば、月額1万円の賃上げができる企業は約8割になります。従業員数でいうと約7割が月額1万円賃上げできるんですね。ほんの一部でできる。こういう性格だということはその通りと思われますか。
財務相 その数字が間違いない数字だという前提でしかお答えできませんが、それがそのままであれば、今言われたようなことができる条件に企業側はあるということは確かだと存じます。
正規雇用、最低賃金引き上げ、公正取引・適正な下請け単価を
笠井 企業の内部留保の一部を使って、今すぐ賃上げすることができる。そのために政治に何ができるのか。日本共産党が、内部留保の一部を賃金などに活用すればいいと言っているのは、何も強制しろって言っているんじゃないですよ。そうじゃなくて経済の理屈でやっていけばいいのです。大企業のなかに手をつっこんでお金を取り出して国民のために使えと言っているのではなくて、それぞれの会社が自ら雇っている労働者や下請けの給料が上がるために使うように、政治がルールつくろうということを提起しているんです。
人間らしい暮らしを保障するということで、われわれの提案は三つです。一つは、労働者派遣法の改正で正規雇用を原則にする。二つ目に、最低賃金を時給1000円以上に引き上げる。いま全国平均749円ですが、中小企業には国が手当てしながら引き上げる。そして第三に、公正取引で適正な下請け、納入単価を実現する。そういうことをきちっと政治が決めれば、企業が内部留保を活用して、自らの労働者の賃金や下請けに対して払うことができる。まさにこれこそやるべきだ。ましてこんなときに消費税増税なんかとんでもないと申し上げて質問を終わります。
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