2013年3月4日(月)
TPP交渉参加 国会論戦で公約違反・危険性浮き彫り
重要品目守られる保証なし 共産党追及で明らかに
安倍首相が、「TPPは『聖域なき関税撤廃』が前提ではないことが明確となった」などとのべ、交渉参加姿勢を強める環太平洋連携協定(TPP)。国会論戦を通じて浮き彫りとなったものは―。
すべての物品対象
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「『関税と非関税障壁の撤廃』という大原則は何も変わっていない」。首相のごまかしを突き崩したのが、日本共産党の井上哲士参院議員の質問(2月27日)でした。
井上氏は、日米共同声明で「すべての物品が交渉参加の対象」「TPPの輪郭(アウトライン)で示された包括的で高い水準の協定を達成」と明記されていると追及すると、岸田文雄外相は「TPPの輪郭、内容が変更されたとは承知していない」と答弁。安倍首相は「最終的な結果は交渉の中で決まっていく」としか答えられず、重要品目が守られる保証などないことが明らかとなりました。
自民党の公約は「関税撤廃」に関するもの以外にも、「国民皆保険制度を守る」など非関税障壁に関する5項目があります。井上氏は守られる保証はないとし、「公約を守るというなら断固反対しかない。亡国の方向に絶対に参加すべきではない」と批判しました。
審議のなかで外務省は日米共同声明に「自民党の公約の5項目が含まれているという情報はない」(片山慶一経済局長)と答弁。安倍首相は「外務省が答弁した通り」と認めました。
首相は、総選挙政策集「Jファイル」について「政策ではなく目指すべき政策」といいだしており、公約投げ捨ては隠しようがありません。
100%撤廃迫られる
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それでは交渉参加すればどうなるのか。
日本がいくら「聖域」を主張しても、10年以内にすべての関税撤廃が求められる―日本共産党の塩川鉄也議員の質問(28日)で危険性が明らかになりました。
日本は、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)など2国間協定を結んでも、コメや麦、乳製品など約940品目について関税を維持し、品目ベースの「自由化」率は80%台後半です(グラフ参照)。
これに対し、「10年以内の関税撤廃」を要求する米国の「自由化」率は、「100%近い」(岸田文雄外相)のが実態です。
塩川氏が「100%近い自由化率となるような関税撤廃につながる」と追及すると、安倍首相は「入り口で除外する担保はない」と認めました。
塩川氏は「TPPは医療や労働、食品の安全などのルールの緩和や撤廃をめざすものだ。国民の暮らしと安全を脅かす交渉参加はやめるべきだ」と強調しました。
民・維・みんな 参加けしかける
公約投げ捨ての安倍内閣の暴走を止めるどころか、けしかけているのが民主、維新、みんなの3党です。
「一日も早く参加表明されて具体的にアメリカと交渉に入るよう努力すべきだ」。こういって参加を求めたのは民主党の福山哲郎参院議員。(2月27日)
同党の前原誠司前政調会長は「ビジネスチャンスが生まれる」と財界・大企業とうりふたつの主張。「自動車、トラックは日本の一番の(交渉)カード」だとして交渉参加の指南まで買ってでるありさまでした。(28日)
維新の会は「農業について関税を死守する方針がいいのか」「保護するだけでは強くならない」(山田宏衆院議員、28日)などといって、「聖域」とせず関税撤廃に踏み出すようけしかけました。
みんなの党も「TPPこそコメ輸出の切り札になる。これを聖域や関税化の例外にしてどうするのか」(柿沢未途議員、同日)と迫りました。
3党の議員は「TPP交渉促進議員連盟」を結成し、自民党とも組んでTPP参加をねらっています。
日米両国が各国と締結ずみの2国間協定の「自由化率」の分布
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