2013年3月4日(月)
NHK日曜討論 市田書記局長の発言
日本共産党の市田忠義書記局長は3日、NHK番組「日曜討論」に出演し、2013年度予算案や環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題などについて、与野党の幹事長らと議論しました。
補正予算成立の受け止め
デフレ不況打開の要、賃上げ対策が何もない
番組ではまず、参院で1票差で可決された2012年度補正予算や、民主党などが提出し否決された修正案が議論になりました。
市田 (私たちは)補正予算そのものに反対しましたし、野党の共同の修正案にも反対しました。理由は、ムダな公共事業で借金の山をつくった公共事業頼みだという点が一つです。それから、景気対策と何も関係ないミサイル購入が含まれています。修正案も、この点にはまったく触れないものだったので賛成しませんでした。
補正予算には、デフレ不況の一番の原因である、働く人の収入が減り続けている問題への具体的な対策が何もない。わが党の追及などで、(安倍首相が)産業界に報酬引き上げを要請に行かれましたが、事実上のゼロ回答(です)。もっと本腰をいれて、例えば内部留保の一部、1%回すだけで大企業の8割は1万円の賃上げ可能なので、そういうところにもっと力いれる。政府自身が、賃金が減り続けている大きな原因は、雇用破壊―正社員が非正社員におきかえられたことが大きな原因とおっしゃっているわけで、やっぱり派遣や請負とか非正規雇用を規制して、正社員が当たり前の雇用ルールにきりかえていく。世界でも最低水準の最低賃金を引き上げる。こういうやり方で今の不況を打開していく。そういう内容で、補正予算と本予算も含めて一体のものとしてきちんとやっていく必要があります。
日銀総裁人事
聴聞会で金融緩和・2%物価目標への態度をただす
政府が日本銀行総裁に黒田東彦氏を起用するなどの人事案を示したことについて、市田氏は次のように発言しました。
市田 この問題を考える上での基本的な立場は、日銀の人事を政治のかけひきに使ったり、財務省出身か民間かという中身ぬきの形式論でなく、日銀の任務を担うのにふさわしい人物かどうかということで判断すべきだと考えています。その上に立って、聴聞会で、日銀総裁や副総裁にふさわしい人物かどうかを徹底してただしていきたいと思います。特に無制限な金融緩和、2%の物価上昇目標、この問題についての基本的な態度をただしていきたいと思います。今でも借り手がなくてお金がだぶついている時に、金融緩和をやれば投機資金に回り、すでに輸入食料品やガソリン、灯油は値上がりしているわけです。そのうえ消費税増税になれば、物価はまた上がるわけで、そういう問題にどういう態度をとるかをきちんとただしたうえで、判断していきたいと思っています。
他の野党の多くも、十分な聴聞時間の確保を求めました。
TPP交渉参加問題
農業・食の安全、医療、国の形を変えてしまう
安倍晋三首相がTPP交渉参加に踏み出そうとしていることについて、自民党の石破茂幹事長は、「総理とオバマ大統領との会談で、一方的に関税の撤廃を約束させられるものではないと、きちんと文書にしている」と正当化。みんなの党の江田憲司幹事長は、「決断された以上は(早く)表明され、早期に参加していただきたい」と後押ししました。
市田 「聖域なき関税撤廃が前提ではない」と確認されたからということで交渉参加に前のめりになっておられるわけですが、共同声明をよく読みますと、全ての物品を対象にするということが確認されたということと、すでに交渉参加している9カ国の首脳が2011年に発表した共同声明では、関税だけではなく貿易や投資のじゃまになる非関税障壁の撤廃も大原則とすると(書いてある)。この大原則をふまえ、包括的に高い水準の協定を締結するということを日米合意したわけです。しかも、予算委員会などの質疑で、総理自身が、例外は何かという担保はない、重要品目を例外扱いするということを認めたわけではないと答えています。わが党も、自由貿易一般を反対しているわけではない。しかし、経済主権とか、自国の食料は自国でまかなっていくという食料主権(の原則)は国連でも決議されている世界の流れになっているわけで、(農業とともに)食の安全や医療など、そういう問題も含めて、国の形を変えてしまう。こういうやり方には反対です。
選挙制度改革
国民の意思を反映する制度に 比例削減もってのほか
選挙制度改革が議論となり、民主党の細野豪志幹事長や維新の松野頼久国会議員団幹事長らが“消費税増税で負担を国民にお願いするから、国会議員が身を切るべきだ。定数削減は当然だ”と主張。自民党の石破氏は今月半ばに自公案を提示すると述べ、細野氏は「お待ちしている」と応じました。公明党の井上義久幹事長は「これまで小選挙区(制)をずっとやってきたが、もう少し民意が的確に反映する制度にすべきじゃないかという世論がある」「(民自公の3党合意は)3党で案を作って各党に押しつける合意ではない」と述べました。
市田 消費税の増税で国民に負担をお願いするのだから国会議員がまず身を切るべきだ、そのため定数削減を、という議論はおかしい。定数削減、とりわけ比例定数削減は、身を切るのではなくて民意を切り捨てることになる。身を切るというのなら政党助成金こそ返上すべきだ。これは法律を決めなくても(その気になれば)すぐにでもできる。各党にぜひこの点について態度表明をしてもらいたい。総選挙で多くの有権者が一致しているのは、小選挙区制の下で4割の得票率で8割の議席を自民党が独占した問題だ。公明党の井上さんも小選挙区制は問題があるとおっしゃった。多くの政治評論家も同じことを言っている。もっと国民の意思が反映される選挙制度にしていくことを土台に各党が協議をすることが大事だ。そのときに民意を切り捨てる比例定数削減など、もってのほかだ。
13年度予算案審議
対決軸と対案を示し堂々と論戦
最後に2013年度予算案の審議に各党がどう臨むかが議論となりました。自民党の石破氏は「できれば連休前に成立を」と求めました。
市田 東日本大震災から2年を迎えるが、いまだに仮設住宅にさえ入れない人がいる。被災者に寄り添った生活と生業(なりわい)の再建、そのために力をつくす。暮らしと平和を壊す安倍内閣のさまざまな諸政策、原発再稼働、憲法改悪、(沖縄県)辺野古への新基地建設、消費税増税などに真正面から立ち向かっていきたい。TPPや消費税などで野党といいながら自公の補完勢力になっている党もある。その中で対決軸を示しながら、対案も示して堂々と論戦に挑んでいきたい。