2013年3月4日(月)
国を滅ぼすTPP
韓米FTAに見る主権制約
安倍晋三首相は、日米首脳会談を受け、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に踏み出そうとしていますが、TPPの「先取り」となっているのが韓国とアメリカの自由貿易協定(韓米FTA)です。その実態を知る韓国の弁護士、宋基昊(ソン・ギホ)氏を招き、TPP阻止の運動に役立てようという学習会が1日、東京都千代田区のJAビル内で開かれました。
韓国の弁護士招き学習会
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宋氏は、昨年3月に発効した韓米FTAについて韓国政府の資料をもとに、アメリカ企業に有利に働いていることを紹介しました。「米国への輸出が増えるとのふれこみだったが、関税が下げられ、米国産自動車の韓国への輸入が増えた。代表的なのはトヨタの米国産自動車だ」
排ガス規制圧力
農業分野については「韓米FTAで一番被害が大きい分野だ」と語りました。15年間で撤廃する牛肉を含め、コメを除いてすべての関税が撤廃されます。コメは「除外」の代償として、消費の一定割合を輸入する量を増やす、再協議をいつでもできるとの2条件が付けられ、「除外といっても永遠に守られるということではない」とのべました。
宋氏は、韓国の経済主権が米国により制約を受けていると具体例をあげて告発しました。
▽環境を守るため、排ガスが少ない車に補助金を出し、排ガスが多い車から負担金を徴収する制度は、米国側から「FTA違反だ」と圧力があり、昨年11月に制度を廃止した。
▽郵便保険の加入限度額を引き上げようとしたが、米国側が「FTA違反だ」。韓国政府は引き上げを放棄した。
▽国民皆保険制度があるが、薬の保険適用基準や薬価について米国と論争中。安いジェネリック医薬品も特許権延長で出回り量が少なくなる心配がある。
▽韓国には、指定した業種は大企業が参入できない「中小企業適合業種制度」というものがあるが、米国側からクレームがあり運営面で支障がある。
ISD萎縮効果
宋氏は、TPPにもあるISD(投資家対国家の紛争解決)条項が韓国側に政策遂行の“萎縮効果”として働いていると強調しました。
主催したのは、JA全中など農林水産団体と生協などでつくる「TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク」。
新潟県農協中央会の担当者が「TPP反対運動へのアドバイスを」と質問すると、宋氏は「TPPは、農業だけの問題ではないことを知らせることが重要だ」とのべました。