2013年4月21日(日)
主張
TPP交渉
「国益」いうなら参加撤回せよ
環太平洋連携協定(TPP)交渉に日本が参加する危険な局面に入りました。交渉参加を急ぐ安倍晋三政権がこれまでの交渉の中身も不明なまま、参加国からの賛同をしゃにむにとりつけたためです。参加決定までの事前協議は、TPPの危険性をあらためて浮き彫りにしています。国民を置き去りにした安倍政権の暴走にストップをかけなければなりません。
事前協議で譲歩重ね
事前協議で最後まで残ったのがカナダや豪州、ニュージーランドなど、日本への農産物輸出の拡大に強い期待を抱く国々でした。「例外なき関税撤廃」を原則とするTPPは、日本にとって「国のかたちを変える」というほどに徹底した市場原理主義に立つものです。交渉に参加すれば、食と農や国民皆保険など「国益」が守れる保証などありません。
それを浮き彫りにしたのが、TPPを主導する米国との事前協議です。日米合意は自動車や保険など多分野で米国の要求を丸のみしたものでした。「米国と日本は、米国にとって雇用創出の経済恩恵が最大限になるよう、TPP交渉の早期妥結に努力しなければならない」(米下院外交委員会のロイス委員長)。TPPでは日本は米経済の“踏み台”になります。
1週間前に発表された日米合意は、日本製自動車に対する米国の輸入関税は引き下げを「最大限に後ろ倒しされる」などと、米国奉仕に終始しています。それは安倍政権が、7月に開かれる次回TPP交渉国会議になんとしても参加したいとして、事前協議の合意を急いだからにほかなりません。
安倍首相は2月の日米共同声明で、米国にとっては自動車、日本にとっては農業が「重要品目」だと認めさせたと胸を張りました。その後は、自動車などで譲歩を重ねながら、農業では共同声明を一歩も出ませんでした。「重要品目」というだけではなんの保証にもならないことは、米国が同国にとっての「重要品目」である自動車で、具体的で詳細な措置を日本にのませたことでも明らかです。
この合意には自民党からさえ不満が噴き出す始末です。不満を抑えるため、「自動車で譲って日本の農業を守る」との見方が一部メディアから宣伝されています。しかし、自動車などでの譲歩は文字通りTPPへの「入場料」にすぎないのです。
日米共同声明も日米合意も、TPP交渉に参加すれば、日本は関税・非関税措置の撤廃という「包括的で高い水準の協定を達成していくことになる」としています。TPP交渉の場で、日本がこの約束に反して「国益」を追求できるかのようにいうのは、国民を欺くものといわねばなりません。
全品目をテーブルに
米国以外の国々との協議内容は不明ですが、見過ごせないのは、農業を「重要品目」としたのは日米両国間だけで、他の交渉国に通用しないことです。農業国であるニュージーランドやオーストラリアは、日本に農産物市場を全面開放させる要求を取り下げていません。日本の参加を認めたのも「全品目を交渉のテーブルに乗せる」ことで合意したからこそです。本交渉では事前協議に増して義務を背負うことになります。「国益」を守るなら、TPP交渉に参加すべきではありません。