2013年4月24日(水)
宮城県水産特区を認定
復興庁 漁協の声を無視
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復興庁は23日、宮城県が申請していた、漁業権を民間企業に開放する「水産業復興特区」の計画を全国で初めて認定しました。
今回の特区認定は、県漁協や周辺漁業者の合意を得ないまま、宮城県が10日に復興庁に申請を強行。「(国は)現場の実情を確認のうえ、慎重な審査を」と求めていた、県漁協や全漁連の声を完全に無視したものです。
特区の適用を受けるのは、石巻市桃浦(もものうら)地区のカキ養殖業者15人でつくった合同会社「桃浦かき生産者合同会社」です。
復興庁は、(1)地区養殖業者だけでは再開が困難(2)地元漁業者のなりわい維持などに効果が見込める(3)周辺漁業者やカキ養殖以外の水面利用に支障がない―との要件を満たすことを確認し「復興特区基本方針に適合する」と判断したとしています。
でっち上げの認定に怒り
日本共産党宮城県議団の横田有史団長の話 県は、特区の必要性をでっち上げた事実と異なる“作文”のような申請書と、現状と異なる海区図面で認定を求めてきた。認定を強行した県と水産庁、復興庁の“創作劇”に心から怒りを覚える。浜の復興に頑張る漁師のみなさんと、全国の漁業関係者に敵対する挑戦状というほかない。今後も漁業権の免許更新が行われる9月までに、浜の混乱が予想される。漁師のみなさんとたたかい続けたい。
解説
浜を分断 復興の妨げ
漁業権とは、沿岸の一定の海域で、特定の漁業を一定期間、排他的に営むことができる権利のことです。地元の漁協に法律で優先的に認められています。これを復興特区法にもとづき規制緩和し、民間企業にも漁協と同等の権利を県が直接与えるのが「水産業復興特区」です。
「水産業復興特区」は、村井嘉浩宮城県知事が、大震災直後の2011年5月、政府の復興構想会議で提案したもの。“大震災で甚大な打撃を受けた沿岸漁業を再生するには、民間企業の力を借りる必要がある”との理由でした。
この構想の原型は、日本経団連系のシンクタンク日本経済調査協議会(日経調)が07年7月に出した提言にあり、養殖業や定置網漁など沿岸漁業への「参入障壁」を撤廃し、法人が漁協と「同等の条件」で漁業を営めるようにせよと迫っていました。日経調は、震災後の11年6月にも「緊急提言」を発表し、漁業権の法人への開放を求めています。
県漁協など地元漁民たちは、「特区」構想が持ち上がった直後から、「企業は目先の利益第一で、資源をとりつくし、もうからなくなれば撤退する。浜は荒れてしまう」と猛反対。11年6月には県漁協が漁業者1万4000人の署名を提出して「特区」の撤回を迫りました。その後も、県漁協や周辺漁業者は「特区を導入すれば浜が分断され、コミュニティーが壊れ、復興の妨げになる」と一貫して反対。特区の適用を受ける合同会社についても、「すでに漁協に加盟して生産・出荷を行っており、特区導入の必要性はない」(菊地伸悦県漁協会長)とのべ、特区の導入に合意していません。 (原田浩一朗)