2013年4月28日(日)
「核拡散」は米国の脅威
60〜90年代 政府解禁文書を公表
【ワシントン=山崎伸治】米民間研究団体「国家安全保障公文書館」は23日、米国が1960〜90年代に、他国の核兵器開発に神経をとがらせ、米国に対する「脅威」と位置づけていたことを示す米政府解禁文書を公表しました。そのうち米中央情報局(CIA)による83年1月20日付の秘密報告書は、中国が「第三世界」に核物質を輸出しており、兵器設計情報をパキスタンに提供した可能性があると分析しています。
一連の文書は情報公開法に基づいて入手されたもの。核保有国となったインド、パキスタンのほか、核開発に着手しながら放棄したブラジルやアルゼンチン、リビア、南アフリカ共和国について、米政府が当時、詳しく状況を把握していたことが分かります。ただイスラエルの核開発に関わるとみられる部分は白ぬりにされ、公表されていません。
秘密扱いだった82年7月のCIAによる「国家安全保障評価」は、87年までの5年間の「核拡散」について予測。「核兵器の広がりを遅らせる努力はますます困難になるだろう」として、「核拡散」が米国の利益にとって大きな脅威になると強調しています。
パキスタンの核開発を中国が支援していたことは以前から指摘されていましたが、解禁文書によると、米国は中国によるパキスタン支援を「緊密な戦略的関係の副産物」だと分析。米国が当時、中国に対してパキスタンの核開発支援をやめるよう求めていたことも文書に示されています。
このほか、アルゼンチンの核兵器開発について、82年のフォークランド紛争後、「感情的」には関心が強まったが、「政治的・経済的」には後退したと分析。85年には、リビアが10年以内に核兵器を保有する可能性は低いとみなしていました。両国ともその後、核兵器開発断念を表明しました。