「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2013年5月10日(金)

TPP交渉への参加は日本をアメリカに丸ごと売り渡すことになる

――安倍内閣に交渉参加の撤回を強く求めます

2013年5月9日 日本共産党

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 日本共産党の志位和夫委員長が9日の会見で発表した環太平洋連携協定(TPP)についての党の見解「TPP交渉への参加は日本をアメリカに丸ごと売り渡すことになる――安倍内閣に交渉参加の撤回を強く求めます」は次のとおりです。


 安倍首相は3月のTPP(環太平洋連携協定)交渉への参加表明に続き、4月12日のアメリカとの事前協議「合意」を経て、4月下旬には交渉参加11カ国すべての同意をとりつけるなど、交渉参加への道をしゃにむに突き進んでいます。

 その過程で明白になったのは、関税をすべて撤廃し、国民の暮らしに関わるルールを「非関税障壁」として撤廃・削減するTPP交渉の危険性とともに、アメリカのいうままに譲歩を重ね、日本を丸ごと売り渡しかねない安倍内閣の「亡国」的な姿勢です。

 2010年秋以来、「国のかたち」を一変させるとして国政を揺るがしてきたTPP問題は、いま、新たな重大な局面を迎えています。日本共産党は、安倍内閣に、TPPへの暴走を中止するとともに交渉参加の即時撤回を強く求めるものです。

対米事前協議「合意」=アメリカの一方的な要求を丸のみ

 TPP交渉への参加を認めてもらうために昨年来続けてきたアメリカとの事前協議では、どんな「合意」に達し、何があきらかになったのでしょうか。

重要農産物の「聖域」確保の保証は何もなし

 第一に、安倍首相が「守るべきものは守る」といい、全力をつくすと約束してきた米、乳製品、砂糖など重要農産物の関税撤廃の「聖域」確保について、その可能性のほとんどないことがあらためて明確になったことです。

 「合意」文書に明記されたのは、日本がTPPに参加する場合、「包括的で高い水準の協定の達成」をめざすということだけです。これは、「すべての品目」について「関税および非関税障壁」を撤廃・削減する原則を、2月の日米首脳会談に続いて確認したことにほかなりません。「合意」文書には、日米両政府が「日本に一定の農産品で貿易上のセンシティビティ(重要品目)が存在することを確認」とありますが、これも2月の共同声明の域を一歩もでていません。しかも、アメリカ政府の発表文書では日本の重要農産物についての言及は一切なく、4月24日に日本の交渉参加を認める意向を米議会に通知した文書でも、「日本が全品目を交渉の対象とし、高水準で包括的な協定を年内に完成させると約束した」としているだけです。オバマ政権が日本の農産物に「聖域」確保を認めたなどとはとうてい言えません。

 アメリカに続いて日本の交渉参加に同意したオーストラリアやニュージーランドも、全品目の「高い自由化の実現」を参加の条件として念押ししています。これらからも、TPP交渉に参加すれば、当初から指摘されてきたように、農林水産物の関税全廃が迫られ、わが国の農林漁業など「守るべきものが守れない」のはいよいよあきらかです。

アメリカ業界が満足するTPP「入場料」を受け入れ

 第二に、日本の交渉参加の条件とされた「入場料」をほとんど丸のみしたことです。

 オバマ政権は、TPP交渉に新たに参加するには、現交渉国すべての同意を得る必要があるという一方的な“ルール”を最大限に利用して、昨年来、日米「事前協議」の場で牛肉・自動車・保険の3分野の「解決」を迫ってきました。この分野でアメリカの業界が満足する「入場料」を払わなければ、日本の参加には同意しない、という姿勢です。今年2月の首脳会談では、「その他の非関税措置」を追加して「作業完了」を安倍首相に約束させ、それ以降も、「入場料」請求を次々にエスカレートさせてきました。

 安倍政権はTPP参加を最優先してそれらを次々に受け入れたのです。米国産牛肉のBSE(牛海綿状脳症)輸入規制は国民の強い懸念を無視して2月から緩和し、さらに緩めようとしています。米保険会社の営業利益に配慮したかんぽ生命の新規商品の販売中止や、米国車の簡易輸入手続き台数の大幅増なども日本側から一方的に持ち出した形にして認めてしまいました。

 さらに今回の「合意」では、アメリカが日本製自動車にかける関税を長期にわたって維持することも受け入れました。日本政府や財界は、米韓FTA(自由貿易協定)で関税が撤廃される韓国車に対抗するためにも日本車にかかる関税を撤廃する必要があるとしてTPP参加を訴えてきましたが、その最大のメリットと宣伝してきたことさえ投げ捨てたのです。

 この結果に、「日本は譲ってばかりだ。勝ち取ったといえるものがないじゃないか」と自民党国会議員からさえ厳しい批判がでています。

アメリカの「積年の関心事」を“解決”するための2国間協議も約束

 第三に重大なのは、4月の日米「合意」で、TPP交渉と並行して、自動車分野をはじめ保険、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、衛生植物検疫などの非関税措置について日米2国間協議を行い、TPP交渉の妥結までにまとめると約束したことです。そして、その成果は法的拘束力ある協定や書簡の交換などの手段を通じてTPP協定が発効する時点で実施されることも確認しているのです。

 アメリカ側が公表した文書では、この2国間協議をアメリカが機会あるたびに日本に迫ってきた「積年の関心事」を解決する場と位置づけ、その内容をより詳細かつ具体的に記述しています。この協議を通じて、食の安全や医療、公共事業、雇用など広範な分野で一方的にアメリカの要求が突き付けられ、日本社会全体に弱肉強食の「アメリカ型ルール」が押しつけられるのは必至です。

 このような一方的な2国間協議を受け入れること自体、きわめて屈辱的なことです。しかも安倍政権が公表した「合意」文書では、アメリカ側文書にある詳細で重大な内容にはふれずに検討項目を列記しているだけです。国民に事実を知らせないままアメリカの要求を丸のみしようとする安倍政権に「国益」など守れないことは、あきらかではないでしょうか。

TPP交渉=多国籍企業に都合のいいアメリカ主導のルールづくり

 安倍首相がそのようにしてまで参加しようとするTPP交渉とは一体なんでしょうか。

 首相は「アジア太平洋地域の活力を取り込む」といい、「この地域の貿易や投資のルールづくりに参加する」とTPP参加の意義をさかんに強調します。しかしそれは、TPP交渉の現実からかけ離れた、国民をあざむく議論といわなければなりません。

アメリカの戦略に一方的に取り込まれるだけ

 TPP交渉には、アジアの主要国で、近年、日本と貿易・経済関係が大きく発展している中国、韓国、タイ、インドネシア、フィリピン、インドなどは参加していません。日本が参加しなかったからといって、“アジアや世界から取り残される”という話ではありません。

 日本がTPPに参加すれば、交渉国全体のGDPで日米が80%を占めるようになり、実質的には、日本がアメリカとのEPA(経済連携協定)を結ぶことと同じです。それは、日米対等の「ルールづくりへの参加」どころか、事前協議の経過が示すように、「アメリカに一方的に取り込まれる」だけになるのは必至です。

オバマ政権のねらいは対日輸出や投資の拡大

 TPP交渉の実態は、経済力で群を抜くアメリカが主導し、アメリカの多国籍企業や業界の利潤追求に都合のいいルールを持ち込む場になっています。オバマ政権がTPP交渉に力を入れるのは、経済危機からの脱出策を輸出拡大に求め、成長するアジア市場に足場を築くためです。そのために、参加各国の経済主権を奪い、アメリカの経済覇権主義を押しつけようとしているのです。その戦略に欠かせないのが、GDP世界3位の日本の参加であり、日本にたいする米大企業の輸出や投資の拡大です。日本のTPPへの参加は、オバマ政権のこの戦略に全面的に呼応しようとするものにほかなりません。

多国籍企業に特権を与え、国の主権を脅かす

 TPP交渉でめざされているのは、国境を越えた貿易や投資、経済活動の拡大を最大の基準にして、その障害となる関税や「非関税障壁」を撤廃・削減することです。それは、アメリカなどの多国籍企業に特権を与え、横暴をいっそう野放しにし、貧困の解消、環境の保全、社会の持続可能性など今日の世界政治に切実に求められる課題にも逆行することになります。

 その最たるものが、アメリカ政府が導入を強く迫っているISD(投資家対国家紛争処理)条項です。この制度は、進出企業が相手国政府の政策によって損害を被ったと判断すれば国際機関に訴えて損害賠償を請求でき、その国の法律や制度の効力を失わせることを可能にする仕組みです。アメリカ企業は北米自由貿易協定などに含まれるこの条項を利用して他国の政策をしばしばゆがめてきました。TPPに参加すれば、わが国の法律や行政、司法判断までが外国企業から「損害を被った」と訴えられ、その執行中止に追い込まれるなど、国の主権の著しく侵害される事態がひんぱんに起きかねません。

国民や国会議員にも情報を秘匿する

 アメリカの名だたる大企業や業界団体が「利害関係者」として交渉に公然と参加し、各国政府の交渉官と情報を共有し、交渉に口をはさんでいることも、TPP交渉が誰のためのものかを雄弁に物語っています。しかも交渉内容は4年間、参加国の国民や国会議員にも秘匿するという取り決めさえあります。一握りの多国籍企業に牛耳られ、大多数の国民は蚊帳の外という異常な秘密交渉に国の命運を託すわけにはいきません。

国民にとって「メリットはなく、失うものはあまりに大きい」

 財界などは、海外での投資や経済活動がしやすくなる、参加国の公共事業の受注機会も増えるなどと主張します。しかし、それで利益を得られるのは一部の多国籍化した大企業だけです。農林漁業や地場産業、大多数の中小業者や国民は、安い製品の流入で営業や雇用が脅かされ、工場の海外移転なども進み、地域経済のいっそうの衰退は避けられません。

 わが国の財界がTPP参加を声高に叫ぶのは、医療分野での混合診療の解禁などTPPがもたらす各分野の規制緩和・構造改革が、アメリカだけでなく、日本の大企業にとってもビジネスチャンスの拡大につながるからです。こんな身勝手な財界の主張にひきずられてしまっていいのでしょうか。

 「メリットはなく、失うものはあまりに大きい」――これがTPP参加のもたらす大多数の国民にとっての結果といわなければなりません。

「日米同盟の強化」を最優先

 安倍首相が、あれこれの詭弁(きべん)を重ねながらTPPに暴走するのは、「安全保障上、大きな意義がある」(4月12日)と述べたように、国民の利益よりも「日米同盟の強化」を最優先しているからです。JA関係者などからも「アメリカ言いなりをいつまで続けるのか」という批判が出るのは当然です。TPP交渉への参加は「対等平等のアジアや世界のルールづくり」とは無縁であり、首相の暴走の行き着く先はアメリカの「属国」化です。

際限のない「譲歩」に引きずり込まれる危険性が

 TPP参加の危険性は、「事前協議」の段階ですでに明らかですが、それは第一歩にすぎません。交渉への本格的な参加、そして交渉の妥結までに至るさまざまな段階で次々に新たな譲歩が迫られ、国民の利益と相いれない事態がさらに広がることになるでしょう。

 まず日本の交渉参加についてアメリカ政府が「合意」したといっても、米議会の90日間にわたる審議を経たうえで、その承認が必要になります。米自動車業界は「入場料」がまだ足りないと日本の参加承認に反対しています。農業や畜産業界も日本に「関税ゼロ」を迫っています。この過程でさらなる譲歩を迫られることになりかねません。

 本交渉に参加する際にも、先行する交渉国がすでに合意した内容は無条件に受け入れ、議論を蒸し返さない、現交渉国による交渉打ち切りも拒否できない、といった極めて不利な条件を丸のみすることが求められます。しかも、交渉内容はそれまで一切知ることができないというのです。これでは、「交渉でわが国の主張を反映させる」どころか、できあがった文書にサインさせられるだけになりかねません。

 さらに本交渉への参加とともに日米「合意」で確認された「非関税障壁」分野の2国間協議がスタートします。ここでも「国益」を損なう数々の譲歩が迫られるのはあきらかです。

 TPPへの参加が、経済主権も食料主権も放棄し、日本社会が後戻りのできない「亡国」への道を進むことになるのはあきらかです。農林漁業を守り、国民皆保険制度を守り、日本の「国益」を守るというのであれば、TPP交渉から撤退する以外にありません。

国民の圧倒的な世論でTPP参加を撤回させよう

 昨年の総選挙では、自民党は、関税撤廃など六つの懸念事項が解消しない限りTPPには参加しないと公約しました。当選した自民党議員の6割はTPP反対を訴えました。「TPP断固反対! ウソつかない自民党」というポスターまで張り出しました。

 安倍首相はその舌の根も乾かぬうちに、国民をあざむいて参加に踏み切ったのです。どう言い繕っても公約違反は明白です。国民主権の原則からいって、自民党・安倍内閣にはTPP交渉をすすめる資格などないことは、あきらかではないでしょうか。

 この2年半、TPP参加反対のたたかいが地域や国の存亡をかけてかつてない規模で発展しました。9割の都道府県、8割の市町村議会で「反対」「慎重」の意見書・決議が採択され、民主党政権の度重なる参加表明の画策を押しとどめてきました。そしていま、安倍首相の暴走に新たな怒り、たたかいが全国で急速に広がっています。

 極端な秘密主義や多国籍企業の利益優先のTPP交渉に、アメリカを含めた市民社会からも抗議の声が高まり、国際的な連帯行動が広がっています。

 TPP参加を撤回させることは、一握りの多国籍企業を除く圧倒的多数の国民の利益と合致し、国の食料主権、経済主権を守る大義あるたたかいです。美しい田園や伝統文化を守り、持続可能な地域や社会、大多数の国民の暮らしや営業を守るたたかいでもあります。

 TPP反対一点での共同を地域でも全国でもさらに発展させようではありませんか。TPP参加の危険性や推進論のごまかしをしっかり見抜き、政府に徹底した情報公開と国民的討論の機会を提供させ、世界の市民社会との連帯も広げようではありませんか。

 日本共産党は国の命運をかけたこの大義あるたたかいの一翼をにない、全力をつくすものです。 


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって