2013年6月21日(金)
オバマ米大統領 核兵器削減の新提案
【パリ=浅田信幸】ドイツの首都ベルリンを訪問したオバマ米大統領は19日、かつて東西ドイツ分割の象徴でもあったブランデンブルク門広場で6000人の招待者を前に演説し、ロシアとの新たな核兵器削減交渉に入る意向を表明しました。
オバマ氏は「正義を伴った平和とは、その夢がいかに遠くても、核兵器のない世界の安全を追求することを意味する」と強調。2011年に発効した米ロ戦略兵器削減条約(新START)により、両国の核弾頭数は1950年代以来、最低のレベルに向かいつつあると、この間の成果を誇りつつ、「さらになすべき仕事がある」として、新たな核兵器削減を提案しました。
オバマ氏は「われわれの戦略兵器を3分の1減らしても、米国と同盟国の安全を確保し、強力な抑止手段を維持できる」とし、「冷戦時の核態勢を乗り越えるためにロシアとの交渉を通じた削減をめざす」と述べました。
新STARTは戦略核の配備上限を2018年までに1550発に減らすとしており、提案は1000発程度にまで上限を引き下げようというものです。
新STARTの対象になかった戦術核兵器についても「北大西洋条約機構(NATO)の同盟諸国とともに、欧州にある米ロの戦術核兵器の思い切った削減に達するよう努力する」と表明しました。
核兵器禁止条約交渉の開始を
オバマ氏は第1期の大統領就任直後の09年4月に「核兵器のない世界」を提唱。核兵器廃絶をめざす国際機運を高めるうえで大きな役割を果たしました。
今回の演説は米ロの戦略核弾頭数の削減の可能性を生み出すかもしれません。しかし、世界各国はすでに10年のNPT(核不拡散条約)再検討会議で、さらにその先の「核兵器のない世界」に進む方向を確認しています。それは、「核兵器のない世界を達成するために必要な枠組みを確立するための特別な取り組み」、すなわち核兵器禁止条約のための国際交渉の開始です。このことこそ、米ロを含む核保有国をはじめ各国の政府に求められています。