2013年7月1日(月)
アベノミクスそれホント?
安倍晋三首相は、日本経済の活動が“好転”したなどと「アベノミクス」の「成果」を誇っています。その内容は本当でしょうか?(清水渡)
首相の言い分―その1
「暗く重い空気は一変した」
“空気一変”は金持ちと大企業だけ
見かけ上の「景気回復」をもって安倍首相は「世の中を覆っていた暗く重い空気は一変した」と胸を張ります。しかし、「空気が一変した」と感じているのは、金融緩和でぼろもうけした投機家と、株価の上昇と円安で、大もうけした一部の輸出大企業だけです。
安倍政権のもとで経済政策は投機家と大企業を喜ばせる方向に動き出しましたが、庶民生活を向上させる方向には動いていません。
大企業が大もうけしても庶民のふところはあたたまらず、取り巻く暗く重い空気は一向に晴れません。
庶民にとって「重く暗い空気」を一変させるには所得を増やし、雇用を安定させることです。大企業にため込んだ内部留保を吐き出させ、労働者の賃金と中小企業の下請単価を引き上げさせることが必要です。低賃金にあえぐ非正規雇用労働者の労働条件を改善し、「正規雇用が当たり前」の社会をつくることが求められています。
首相の言い分―その2
「経済指標はことごとく改善」
庶民に実感なし 不都合な数触れず
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安倍首相は「経済を表す指標はことごとく改善をしています」と繰り返します。しかし、「改善」を実感している人がどれだけいるでしょうか。世論調査でも景気回復の実感は「ない」が78%(「朝日」6月11日付)と圧倒的です。
一時期と比べれば生産や消費は増えたといっても、今までが悪すぎただけの話です。大企業のコスト削減・賃金引き下げによる内需減少が日本経済低迷の最大の原因です。
いま消費が増えているのは、主に株価の上昇を背景に富裕層が高級品を購入しているにすぎません。
一方、安倍首相が口にしない数字があります。経済活動の重要な指標である設備投資は5期連続で減少しています。
企業の設備投資が増えないのは、消費が伸びず、需要のないことを見越しているからです。実際、庶民のふところはあたたまっていません。労働者の平均賃金はリーマン・ショック前となる08年4月の28万1700円から、27万2406円(13年4月)へと1万円近く低下したままです。では安倍首相の経済政策が賃金や雇用の増加に結びつくのでしょうか。世論調査でも「そうは思わない」が45%と「結びつく」の36%を上回っています(「朝日」6月11日付)。所得が伸びない以上、本格的な消費の増加はありません。
首相の言い分―その3
「日本の経済政策に世界の関心が集まった」
消費税増税・社会保障切り捨て約束
安倍首相は「G8サミットでは、日本の経済政策に世界の関心が集まりました」と述べて、“アベノミクスが国際的に信認された”としています。
6月17〜18日に英国で開かれた主要8カ国(G8)首脳会議の宣言は、「日本は、信頼できる中期的な財政計画を定めるという課題に応える必要がある」とくぎを刺しました。
安倍首相はG8で「財政健全化」を達成する目標をつくるよう約束させられたのです。これは、消費税率を10%に引き上げ、同時に社会保障の削減を強行することにほかなりません。
ただでさえ「異次元の金融緩和」で円安が進行し、輸入原材料の高騰で日常品が軒並み値上がりしています。その上、消費税増税と社会保障削減が強行されれば、国民生活も日本経済も奈落の底に落ちることは確実です。
首相の言い分―その4
「実感はこれから」「とことんやり抜く覚悟」
痛みはこれから 日本経済は破たん
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安倍首相は「(景気回復を)まだまだ実感できていないという方々がおられるのも事実」「私はとことんやり抜く覚悟です」といっています。しかし、アベノミクスをとことんやり抜かれれば日本経済は破たんします。
アベノミクスの「3本の矢」は、(1)「異次元の金融緩和」で投機とバブルをあおる(2)ゼネコンだけがよろこぶ不要不急の大型公共事業(3)原発などのインフラ輸出や正規雇用破壊、設備投資減税など大企業向けの成長戦略―を実行するものです。そのために生じた巨額の財政負担は消費税増税と社会保障削減で埋め合わせしようというのです。
「解雇規制の緩和」や「限定正社員の導入」は正規雇用を破壊し、労働者の賃金を奪います。その上、消費税増税は低迷している内需をさらに冷え込ませ、経済の土台を掘り崩します。社会保障削減は人間らしい生活を破壊します。安倍首相にとことんやらせては絶対にだめです。
とことんやるべきは、消費税増税のストップです。大企業に日本経済への責任を果たさせ、内部留保を社会に還元させ、賃上げを実現し国民の所得を増やすことです。そして社会保障を拡充して国民の暮らしを安定させる政策を実行することです。