2013年7月24日(水)
主張
G20
実効ある枠組みへの発展を
先週末にモスクワで開かれた主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は、世界経済の現状を「あまりに弱く、回復はなお脆弱(ぜいじゃく)でばらつきがある」と厳しい見方を示しました。その見方も、「雇用と成長」を強める必要を強調したことも当然です。問題は有効な対策を打ち出せたといえないことです。
リーマン・ショックから5年。この間、協調して世界経済に対処してきたG20には、実効ある枠組みへの発展が求められます。
新興国揺さぶる資金逆流
世界経済の懸念の一つが新興国からの資金の流出です。米国の異常な金融緩和のもとで新興国に向かった大量の資金が、米国の政策転換が視野に入ってきたことで、逆流しています。対応を迫られる国の一つがブラジルです、5年前、投機資金の流入を抑える必要から導入した金融取引税の税率を、先月は0%に引き下げました。
新興国の批判に、G20共同声明は「長期間の金融緩和から生じるリスクと意図せざる負の副作用に留意する」としました。しかし、対策は金融政策の変更にあたって「明確なコミュニケーション」を行うとしたにとどまり、有効な措置は打ち出せていません。新興国を揺さぶる先進国の一方的な政策判断に十分な検証が必要です。
G20は多国籍企業による課税逃れの問題も取り上げました。スターバックスやアマゾン、グーグル、アップルなどの名だたる多国籍企業が、法人税率の低い国に設置した企業に利益を移転させるなどの手段で、課税を逃れていることが明るみに出て大問題になっています。経済協力開発機構(OECD)は、2月に「税源侵食と利益移転への対応」報告を出したのに続き、今回のG20に「行動計画」を提案し、承認されました。
計画は電子商取引や知的財産権などをめぐって、外国子会社の合算制度や課税対象となる「恒久施設」の扱いの是正など15項目にわたり、「税の抜け穴」を防ぐよう求めています。多国籍企業の課税逃れには、緊縮財政で負担をしわ寄せされてきた欧州の市民に批判が渦巻いています。規制強化は重要で、前進させねばなりません。
ただ、OECDの提案にはG20以外の国々は参加しておらず、しかも実行は各国の判断に任されています。対象がハイテク分野などに限られている限界もあります。行動計画自体が問題の複雑さを示すものともなっています。
課税逃れは経済のグローバル化がもたらす問題の典型です。一部の国で、直接投資を求めて、法人税を引き下げる動きがあることも反映しています。「底辺への競争」とも呼ばれるこうした動きにメスを入れることが不可欠です。
あべこべ増税強行許さず
麻生太郎財務相はG20で、消費税増税を予定通り進めると表明しました。安倍晋三政権は、庶民には大増税をかぶせる一方で、財界向けには投資減税や法人税減税を進める構えです。
日本の法人実効税率が高すぎるという非難も、それだから産業が空洞化するという非難も的外れです。法人税減税は、260兆円にも積み上がっている内部留保をさらに増やすだけです。消費税増税と法人税減税という“あべこべコンビ”の強行を許さない運動を強める必要があります。