2013年8月19日(月)
「はだしのゲン」松江で閲覧制限
被爆者ら 市教委に憤り
被爆体験を描いた漫画「はだしのゲン」が過激・残虐な描写であるとして、松江市教育委員会が市内の小中学校に学校図書館での子どもへの閲覧や、貸し出しを中止するよう要請していることがわかり、関係者から怒りの声が上がっています。同教育委員会は、昨年12月の校長会で「はだしのゲン」を自由に閲覧できない閉架図書にするよう要請していました。
市の調査では市立小学校35校、中学校17校のうち、約8割の図書館で置いています。
昨年8月、市議会に「ありもしない日本軍の蛮行が描かれており、子どもたちに間違った歴史認識を植え付ける」として作品の撤去を求める陳情が提出されました。12月議会で、全会一致で不採択になりました。
広島で被爆した男性(83)=市内大庭町=は「漫画は原爆の悲惨な現実をよく伝えている本だ。語り継いでいく必要が大いにあるとき見せないことは正しい歴史認識を伝えないことになる」と声を荒らげます。
県教職員組合の舟木健治委員長は「『はだしのゲン』は、日本国内でも多くの人々に読み継がれ、世界にも広がっている。平和学習の教材にも使われている。閲覧や貸し出しに制限が求められるような作品ではない。市教委の良識ある判断を再度求めたい」と言います。
日本共産党の片寄直行市議団長は「自由に閲覧できるように制限を解除するべきだ」と市教委に再考を求めたいとしています。
「はだしのゲン」 昨年12月に73歳で亡くなった漫画家・中沢啓治さんが、自身の被爆体験をもとに描いた漫画。主人公の少年、中岡ゲンが、広島の被爆で家族を亡くしながら、激動の時代を必死に生き抜く姿を描いたものです。映画やアニメにもなり、英語やフランス語などに翻訳され、世界に広がっています。