2013年9月4日(水)
政府が「汚染水」で基本方針
地下水の海洋放出に「努力」
福島原発 従来の対策を踏襲
安倍政権は3日、閣僚らによる原子力災害対策本部と原子力防災会議の合同会議を首相官邸で開き、東京電力福島第1原発の汚染水漏れ問題に関する基本方針を決定しました。同方針は、「抜本的な対策」といいながら、従来の方針を踏襲した上、地下水の海洋放出について「関係者の理解を得るよう最大限努力する」と明記。漁業者ら地元の反発を招くことは必至です。
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470億円投入
同方針は、原子炉建屋への地下水の流入量を「抑制」するため冷却によって凍土遮水壁をつくり建屋の周りを取り囲むほか、より高性能な放射性物質の多核種除去設備を開発・設置することなどを、いずれも国費で推進することを盛り込んでいます。
同会議後、記者会見に応じた資源エネルギー庁の新川達也原子力発電所事故収束対応室長によると、凍土遮水壁に320億円、高性能多核種除去設備に150億円を見込んでおり、当面はこのうち210億円を今年度予算の予備費でまかなうと説明しています。
同時に新川氏は、凍土遮水壁による地下水位の管理がしっかりできるのかとの質問に「リスクはある」と答弁。より高性能な多核種除去設備開発の実現性についても「技術的説明は難しい」と答えるなど、いずれも実現の保障がないことが逆に裏づけられました。
同方針はまた、同原発の「近郊」に「廃炉・汚染水対策現地事務所」を設置し、「国としての体制強化を図る」としています。
安倍晋三首相は、同会議で「汚染水問題を含め、福島第1原発の廃炉を実現できるか否か、世界中が注目している。政府一丸となって解決に当たっていく」と強調。2020年五輪の東京招致実現のために自ら乗り込む国際オリンピック委員会(IOC)総会を強く意識した発言を展開しました。
英知総結集し対策立て直しを
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日本共産党原発・エネルギー問題対策委員会責任者・笠井亮衆院議員の話 今回の「基本方針」は、「東京電力まかせにするのではなく、国が前面に出て、…抜本的な対策を講じる」としていますが、実際には、東電が作成し破綻した従来の対策の延長にすぎず、態勢も東電の「対応の強化」を国が「確認」するだけにとどまっています。「国が前面」の抜本策とは到底いえません。
しかも、汚染水が漏れたタンクより海寄りの位置からの地下水を「海洋に放出する」として、政府の「漏らさない」という建前すらないがしろにしていることは重大です。
福島第1原発は、放射能汚染水が流出し続け、さらに汚染が拡大しかねない非常事態です。「収束宣言」を撤回し、文字通り国が主体となる態勢に転換すべきです。
政府の責任で汚染の実態や原因の全容を調査・把握して国民に明らかにし、内外の集団的英知を総結集した抜本的な対策を立て直すことこそ急務です。