2013年9月24日(火)
資金流用疑惑絶えず
選挙違反の徳洲会 父子関与が焦点
医療法人「徳洲会」グループが職員に報酬を支払い、自民党・徳田毅衆院議員(42)=鹿児島2区=の選挙運動をさせたとされる公選法違反事件。国内最大級の医療施設数を誇る同グループですが、父親で元衆院議員の徳田虎雄理事長(75)の時代から選挙違反の摘発や資金流用などの疑惑が絶えませんでした。強制捜査に乗り出した東京地検特捜部は徳田議員や虎雄氏らの関与を慎重に調べています。
人心を金で買う
1980年代に鹿児島県奄美地方で展開された虎雄氏と自民党の保岡興治衆院議員の選挙戦は「保徳戦争」と呼ばれ、選挙違反が続出しました。運動員だった男性は「札束が飛び交い、数千人が買収されていた」と振り返ります。「名刺の下に一万円札が折り畳まれているのを見た」と話す徳田陣営の関係者もおり、次男の徳田議員が地盤を引き継いだ後も「組織ぐるみの買収選挙」(徳洲会元幹部)が続いたといいます。
この関係者によると、選挙に動員された徳洲会職員のノルマは、2人1組で1日に100軒程度の戸別訪問。住宅地図を片手に選挙区を回り、反応が良い人は青色、見込みがないと判断した場合は赤色などで色分けします。選挙は徳洲会を挙げての一大イベントで、「選挙で貢献した人が出世した」といいます。虎雄氏の元側近は「奄美の人の心を金で買っていた」と話します。
内紛で容疑浮上
今年2月、徳洲会の「金庫番」と呼ばれた男性が虎雄氏の親族と対立し、解任されました。男性は親族ら幹部によるグループの私物化を告発。グループ会社で裏金を作り、虎雄氏が代表を務めていた「自由連合」の政治資金などに充てたと主張しました。
現在、自由連合はグループ会社から70億円以上を借りたまま返済しておらず、「虎雄氏の右ポケット(グループ会社)から左ポケット(自由連合)に移す」(徳洲会幹部)感覚で資金流用が行われているとの指摘がありました。男性は選挙違反も告発し、かねて徳洲会の資金の流れに注目していた特捜部の捜査の端緒となりました。
捜査の焦点は、徳田議員や親族らの関与の有無です。ただ、虎雄氏については筋萎縮性側索硬化症(ALS)で体が動かせないため聴取に消極的な意見も多い。ある検察幹部は「現役議員も絡む疑惑。こちらもそれなりの覚悟でやる。失敗は許されない」と話しました。