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2013年10月10日(木)

主張

TPP首脳会合

安倍政権の背信は許されない

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 インドネシアで開かれた環太平洋連携協定(TPP)交渉の首脳会合は、交渉を主導する米国などがめざした「大筋合意」の文言を声明に盛り込めませんでした。交渉が「年内妥結」する可能性は一段と薄れています。

 政府は交渉実態を国民にまったく知らせません。それでも、交渉の現状はTPPそれ自体に大きな問題があることを物語っています。国民生活を多国籍企業の支配のもとに置こうとするTPPは、推進派がいうように世界の流れでは決してありません。

「重要5項目」までも

 今回の首脳会合は、オバマ米大統領が参加各国に「年内妥結」を迫る場となるはずでした。米国の尻馬に乗って、新興諸国との対立を解消する「橋渡し役」を自任する安倍晋三首相は、オバマ大統領が欠席したもとで、「年内妥結」の旗振り役を買って出ました。

 交渉促進の立場を強める安倍政権にとって、交渉の“障害”になりつつある日本の方針を転換させることは計算ずくだったはずです。自民党が、関税を撤廃しない「聖域」だと国民に公約してきたコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物の「重要5項目」見直しに踏み出しました。それを表明した西川公也・自民党TPP対策委員長の発言を、石破茂幹事長と菅義偉官房長官がただちに追認する手際のよさです。

 TPPは食料自給率を激減させ、農業と地域経済を壊滅させるだけでなく、国民皆保険制度をはじめ国民生活の基盤を掘り崩すものです。なかでも「重要5項目」とは、米国との一体化を進める安倍政権でさえ「守るべきもの」としてきた最低限度の条件です。それをあっさり投げ捨てる安倍政権の背信は決して許されません。

 安倍首相はインドネシアで、日本の農業や医療分野にある「岩盤規制」を破る「ドリルの刃」になると公約しました。日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にすることが持論の首相にとって、TPPはうってつけの武器です。それを手に、国民生活破壊の暴走を全開させようとしています。

 TPPは“無敵”ではありません。アジア太平洋経済協力会議(APEC)参加国のうち、TPP交渉の参加国は半数を超えたばかりで、今回会合の開催地であるインドネシアも参加していません。

 交渉は多くの困難を抱えています。医薬品の特許期間を最大にしたい先進国とジェネリック医薬品が必要な新興諸国、進出企業の利益を確保したい先進国と国営企業を抱える新興諸国の対立は鋭いままです。マレーシアのナジブ首相は「年内妥結」に否定的です。同国のマハティール元首相は、TPPは同国を「ふたたび植民地に変える」と警告し、「主権を守るべきだ」と強調しています。

交渉から撤退すべきだ

 TPPはモノやサービスの貿易を自由化するとともに、各国の制度を共通化し、多国籍企業の利益を最大限に保障しようとするものです。各国の経済主権を侵害し、国民生活を破壊する危険は交渉のなかでさらに強まっています。

 安倍政権がTPPの「年内妥結」に力を入れ、「重要5項目」見直しにも踏み出したことで、TPPをめぐる情勢は緊迫しています。交渉からただちに撤退せよの要求を突きつける時です。


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